バベッジの解析機関が完全に機械的な構成だったという事実は、逆に一種の迷信から目を醒まさせてくれる | 気功師から見たバレエとヒーリングのコツ~「まといのば」ブログ

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脳にせよ、コンピュータにせよ、アルゴリズムにせよ、関数という現象にせよ、それを機械として考えるとうまくいきます。電子的な部品無しのゼンマイ時計のような機械です。
パスカルが10代のときにお父さんのために創ったというパスカリーヌにはICは含まれません。



ぜんまい仕掛けの時計(時計じかけのオレンジではなく)のようなイメージでコンピュータやアルゴリズムを捉えるといいです。

気功も同様です。気功におけるアルゴリズムをしばしば我々は無邪気にも魔法のように考えがちです。それが1つの形式(フレーム)になっていますが、これはもちろんアウトです。使えるものも使えなくなります。むしろ機械であり、マシンであると考えるべきです。
iPhoneのようなスマートフォンと呼ばれる小型のコンピュータはかなり普及しましたが、これもアルゴリズムの固まりであり、iPhoneを持っているだけで仕事ができるわけではありません。電源をいれて、パスワードロックを解除して、適切な命令(オーダー)を出してはじめて機能します。そこに魔法はなく、1つ1つはきわめて単純で単調な処理でしかありません。

糸電話での通話と同じです。コップの中に向かって何かを話すことで、コップが振動し、その振動が糸を伝わり、相手のコップに伝わり、そこに耳を当てると相手の発話が伝送されて聞こてきえます。
そこには機械的なカラクリしかなく(機械的というか即物的というか)、秘密も魔法もICも存在しません。

気功も同様です。

気功のオペレーションの1つ1つは当たり前のつまらないものでしかありません。それが組み合わさり、積み上がり集積されることで、糸電話がiPhoneになったということです。

しかし、iPhoneを魔法だと考えると、電源も入れずに相手に意志が伝えられると妄想します(そんな人はいないでしょうが、気功では同じ事をしてしまいます)。もしくはiPhoneなど信じないと言って使わないケースです(そのような人は使わなければいいだけのですが、iPhoneを使っている人をマイノリティとして排除することだけは勘弁と思います。iPhoneではそれは無いでしょうが、気功ではありふれたことです)。逆にまたiPhoneを持っている人が、それを魔法だと認識するのも厄介です(気功は単なるありふれた現象でしかないのに、特別な力だと誤解するということです)。なまじっか魔法のようなことができるだけになおさら厄介です(少数の人がiPhoneを持つので、そのような勘違いと無意味な権力の発生が起こるので、大多数がiPhoneを持てば、社会がより良くなると夢想します。人類のテクノロジーは人類全体で享受すべきでしょう)。

チューリングの有名な論文にこんな下りがあります。

デジタル計算機の歴史を振り返り、ケンブリッジのルーカス教授だった(ニュートンもディラックもホーキングも!!)バベッジが設計した「解析機関」という計算機について言及してこう言います。

(引用開始)

バベッジの解析機関が完全に機械的な構成だったという事実は、逆に一種の迷信から目を醒まさせてくれるかもしれない。現代のデジタル計算機は電気的であり、人間の神経系統も電気的であるという類似性が、しばしば重要視される。しかし、バベッジの機械は電気的ではなく、すべてのデジタル計算機が同等であることを考えれば、電気的であることが本質的に重要ではないことがわかるだろう。(略)したがって、電気を使用するという類似性は、一種の迷信と言える。むしろ、何らかの本質的な類似性を見出すためには、数学的な機能に目を向ける必要があるだろう。

(引用終了)(計算機械と知性 アラン・チューリング 高橋昌一郎訳 現代思想2012 vol.40-14 p.14)


*毒リンゴを食べて自殺したチューリングです。

原論文からの引用はこちらです。http://cogprints.org/499/1/turing.html
雑誌そのもののPDFはこちらです。http://mind.oxfordjournals.org/content/LIX/236/433

(引用開始)
The fact that Babbage's Analytical Engine was to be entirely mechanical will help us to rid ourselves of a superstition. Importance is often attached to the fact that modern digital computers are electrical, and that the nervous system also is electrical. Since Babbage's machine was not electrical, and since all digital computers are in a sense equivalent, we see that this use of electricity cannot be of theoretical importance. Of course electricity usually comes in where fast signalling is concerned, so that it is not surprising that we find it in both these connections. In the nervous system chemical phenomena are at least as important as electrical. In certain computers the storage system is mainly acoustic. The feature of using electricity is thus seen to be only a very superficial similarity. If we wish to find such similarities we should took rather for mathematical analogies of function.

(色が変わっている部分は訳を飛ばしている部分です。高橋昌一郎さんの訳文では以下のようになっています。「もちろん、高速信号処理の要求される状況では電気が使用されることが多いため、そのような類似性が偶然生じたとしても驚くほどのことではない。ただし、少なくとも神経系統では、化学的な反応が電気的な現象と同程度に重要である。また、別の種類の計算機には、主として音声で与えられる記憶装置を備えたものがある。」)
(引用終了)

チューリングの上記のセンテンスは示唆に富んでいます。

我々は脳もイオンによる電気信号で動き、コンピュータも電気信号で動くという類似性を過大に評価してしまうけれど、コンピュータ自体が電気的であることは本質的ではないということです。高速信号処理を要求されるからこその電気の使用であり、それは副次的なものです。

むしろ純粋に完全に機械的であったバベッジの解析機関(計算機)から分かるように、コンピュータの本質は(コンピュータはすべてのデジタル計算機が同等であることから)機械的なメカニズムだということです。そしてその機械的なメカニズムとは、数学的な機能すなわち関数現象ということです。
関数というとブラックボックスという印象があります。ブラックボックスにある数をインプットすると、何かがアウトプットするものとして、変数と出力を考えがちですので、機械(マシン)と考えるほうが良いように思います。

この機械という考え方は古い古い偉大な数学者を思い起こさせます。ユークリッドは偉大な編纂者でしたが、アルキメデスは偉大な発明家であり数学者でした。
彼が懇意にしている友人に自分の数学的な才能の秘密を手紙でもらしたことがあります。
その手紙の引用です。

(引用開始)
数学におけるある種の問題を機械学によって、探求するというものであります。そしてこの方法は、定理の証明そのものとっても同様に有効であると信じております。この方法による探求は証明を与えるわけではありませんので、機械学的に最初に明らかにされたいくつかのことは、あとで幾何学的に証明しております。と申しますのは、追求されている問題について、この方法によっていくつかの知識をあらかじめ得ておきますと、何らの知識になしに追求するよりも、その証明を求めるのがはるかに容易になるからなのであります。 (pp.83-84『神は数学者か』)
(引用終了)

頭の中で機械的なものを動かして、そのふるまいを見るというのは、リンゴを丘から投げたニュートンもそうですし、落下するエレベーターの中にいて重力を消したアインシュタインも同様です。いわゆる思考実験と呼ばれているものです。この思考実験を妄想実験にしないコツは、明確に機械を脳内で動かすことです。
そしてきちんと機械を動かすためには、機械に精通しているほうが良いでしょう。特にすべての過程を視野にいれてコントロールできるような機械です。機械であればその動力からの力の伝わり方はきちんとステップを踏むべきであり、どこもおそろかにできません。この感覚が明確にあれば公理系の手触りも容易と言えます。

逆にこの感覚が無いと夢の国の魔法の世界に陥ってしまうのです。

気功もIQもコツは同じです。


【書籍紹介】
上記で引用したのはこちらから~。
現代思想2012年11月臨時増刊号 総特集=チューリング/青土社

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神は数学者か?: 万能な数学について/早川書房

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