AV女優と東大生という新結合 | 気功師から見たバレエとヒーリングのコツ~「まといのば」ブログ

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東大生がAV出演というのは、(それが事実かどうかはさておき)最近ではそれほど驚きをもって迎えられないのかもしれません。ただAV女優と東大生のコラボというのは、状況設定の見事さと多少の演出もあり、かなり面白い新結合が生まれたように思います。

枯れた技術の水平思考というのは、任天堂の黄金時代を築いた横井軍平の理念でした。
すでに十分に飽和したいわば枯れた技術を新しいアイデアで組み合わせて新しい価値を生み出すというものです。イノベーションというのが技術革新と誤訳されますが、当時の通産省の論理としては、「革新」と正しく訳すと、革新政党のような政治的な概念と誤解されるので、あえて経済や経営の概念であることを示すために、蛇足ながら「技術」をつけて技術革新と名付けたようです(池田信夫さんが言及されていました)。
イノベーションと最初に言ったのはオーストリアの経済学者であるシュンペーターですが、当初は「新結合」と呼んでいました。新結合とはまさに枯れた技術の水平思考であり、従来ある要素を全く新しい組み合わせで結合させて、新しいビジネスを創造するということです。まさにJobsが「電話を再発明した」というのがそれに当たります。iPhoneは新しいテクノロジーではなく、旧弊のテクノロジーを上手にラッピングしなおしたものです。しかしそこに驚くべき新結合があったから、世界に熱狂的に受け入れられました。

機能を高度化していくというのは、単なる部分最適化に陥りがちです。もちろん合理化や効率化というのはきわめて重要です。しかし、リーダーがそこにのみ着目すると、部分最適だけのお化けのようになります。ガラバゴス化が進むのです。技術としては世界最先端でも、それは孔雀の羽であり、マンモスの牙であり、オオツノジカの角です。アスリートが間違って筋トレで鍛えすぎてしまった筋肉のようなもので、全体から見ると非常に邪魔なものとなります。むしろ全体のパフォーマンスを落とします。
ありふれた言い方ですが、部分最適ではなく、全体のバランスが重要なのです。

気功師から見たバレエとヒーリングのコツ~まといのブログ-オオツノジカ(大きすぎるオオツノジカのツノ、部分最適化の悪い例として)
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ガラバゴス携帯が世界最先端で最高の技術であることは事実であったとしても、使う側からすれば、iPhoneの機能をしぼったシンプルな方が受け入れられます。
技術の最適化、スペックの向上ではなく(それも希求しつつも)、全体としては新結合を目指すべきです。

ちなみに新結合だけで良いというのも早計です。アイデア至上主義者のようになってしまいます。
アイデアさえあればとか、うまく行ったアイデアを真似すればOKという不思議な発想になります(産業界はその面はいまだに否めませんが、だからこそ特許権や商標権が幅を利かせ、オリジナルよりも二番煎じが評価されたりします)。しかしアイデアが価値という時代はそろそろ明確に終わると思います。

なぜでしょう。カラクリはシンプルです。

アイデアは情報です。情報は瞬時に拡散し、消費されます。コーヒーに落としたミルクがすぐに拡散するのと同じです。拡散するコストがインターネットの登場で限界費用が下がり、レバレッジがかかりやすいことも大きく影響しています。もちろんインターネットが無い時代も、「噂は千里を走る」で口コミの伝播力はあなどれません。インターネット時代でも同じです。レバレッジをかけ、増幅が容易になっただけで、本質的には口コミです。だからこそフェイスブックは受け入れられるのです。Google先生より友達の話のほうが気になるのです。

ですから、アイデア自体に価値はなく、アイデアを媒介として生じる現象に価値が生まれます。正確にはアイデアと商品と売り手と買い手の関係の中にぼんやりと生まれるのが価値です。グレゴリー・ベイトソンではないですが、価値は関係の中に生じるのです。機縁の中に生じるということです。
マルクスはモノは商品になるときに命がけの跳躍をすると言いましたが、その跳躍こそが新結合の本質であり、関係の構築であると考えます(これはあまりにザックリとした議論過ぎますが)。モノは黙っていて商品になるのではなく、毎回商品になるために、すなわち顧客が創造され(ドラッカー)、顧客が商品を手に取り、そこに価値を見出すためには、命がけの跳躍をするのです。毎回です。

ということは、アイデア自体もモノと同じということです。それ自体はPricelessというか、無価値です、まだ。商品が命がけの跳躍をしてはじめて価値を発生します。そして、その一部が対価となるということです。
で、話を戻しますと、新結合(イノベーション)というのは、全体のゲシュタルトを指します。アイデアだけでもなく、モノだけでもないのです。ということは全体を見ての最適化は不可欠です。その最適化を「体験の演出」と言ったりします。これがAppleは得意であり、忘れられがちですがWindowsも得意でした。価値あるとされるモノを、顧客の前にポンと出せば受け入れられる時代は、価値観が共有されているときだけです。価値観が多様化(というより細分化、個人化)しているときは、それでは足りません。新結合が必要であり、全体の最適化が必要です。モノが足りない時代は、供給が需要を創造していましたが、今はモノ余りの時代です。供給が需要を創造するはずもありません。

Jobsがパッケージに至るまでこだわり、広告やそのタイミング、情報統制にこだわったのは、この演出のためです。そして、その演出までもが商品であるという正しい認識があったのです。ちなみに演出を広告という文脈だけで考えるならば、それはまた部分最適の罠に陥ります。広告はその商品の一部なのです。全体ではなく。
Jobsはソフトウェアとハードウェアを分けてそれぞれが部分最適化することの弊害を見ていただけでなく、広告やパッケージ、AppleStoreに象徴される販売、アフターケア、そして顧客の体験(期待も含め)の総体が商品であると考えたということです。

一見するとバラバラなものが見事に統合され、全く新しいゲシュタルトが構築されると人はそれを「面白い」と感じます。そしてバラバラなものが統合されているというのは1人の人間も同じです。人は多重人格であり、それがなぜか統合されているのが、人間です。

もちろん一人一人はだからこそユニークな存在です。
で、その全く相容れないような存在同士を共同生活させて、そこで起こるすれ違いや化学反応を楽しもうというテレビ番組があります。ネット界隈では話題になったそうですが、僕は本好きにはたまらないHonzというサイトで知りました(本好きの人にとっては、確実に書籍購入費がハイパーインフレするサイトです。ご利用は計画的に)http://honz.jp/
水と油というのは、相容れないモノ同士の象徴ですが、もちろん界面活性剤を入れれば混じります。強いて言えば、界面活性剤こそが新結合やイノベーションを媒介するものです。人は出会えば、ゲシュタルトを再構築せざるを得ません。結婚生活など最たるものでしょう。N極とS極のように違う者同士だから引き付け合い、意気投合して一緒に生活をすれば、否応なく水と油っぷりを互いに発揮し、そしてイノベーションが起きるか、もしくは離反するという結果になります。

で、これはテレビ番組というフィクションであることを差し引いても非常に面白いと言えます。
YouTubeだとサクっと削除されそうなので、こちらのサイトを紹介します。番組全編が見れます(中国版YouTubeなので削除されないかなと思います)。
水と油な3組のカップルが共同生活をします。

番組の司会は有吉弘行さん。猿岩石や「進め!電波少年」という過去が、きれいさっぱり忘れ去られるくらいに有吉さんは個人がブランドです。ちなみに彼の著書は面白いです。iPhoneの電子書籍で読みましたが、非常に面白かったです。お笑いとは抽象度を上げる、ずらす、外すの職人芸の集積なんだなと思います。大変なことです。番組終了後の有吉さんの総括も秀逸です。


以下、TBSのサイトから陰陽じゃなくて引用。

(引用開始)
有吉弘行による日本一過激なルームシェア

有吉弘行がオーナーを務めるマンション『ミズトアブラハイム』
そこには対極の個性を持つ、“水と油”な人々がルームシェアしています。

更に組み合わせは全て芸能人と一般人の【男女】!
超個性的な人々の不思議な生活を覗き見して下さい!

『超潔癖男×片付けられないゴミ女』
『東大童貞男×AV女優』
『熱狂的AKB48ファン×現役アイドル』

○美人読者モデルなのに片付けられないゴミ女
○21年間人を好きになったことのない東大童貞男
○推しメンは増田有華!でも前田敦子とも仲良し熱狂的AKBファン

風呂も寝室も一緒、マジで宿泊しちゃったガチルームシェア!

http://www.tbs.co.jp/program/mizutoabura_20120405.html

ちなみにすでに書きましたが、番組全編はこちらのサイトで(削除されないうちにお早めに)。(引用終了)

どのカップル(というか組み合わせ)も面白いのですが、2話目を見ていて、同じくカリスマ的なAV女優であった森下くるみさんを思い出しました。
森下くるみの自伝である「すべては『裸になる」からはじまって」です。

これは映画化され、AKB48の元メンバーである成田梨紗さんが森下さん役で主演して最近公開されていました。予告編をYouTubeで見ただけで判断してはいけないのでしょうが、本人に本人役をやらせれば良かったのではとも思いますけど。
その点(と比較するのもどうかと思いますが)メリル・ストリープ主演のサッチャーは見事でした。主演女優賞は当然と言えます。


*追記しました(2017/12/19)

で、その原作の自伝小説の一節です。東大生とAV女優の組み合わせに以下の一節を思い出しました。

(引用開始)
 19歳の頃、友だちの友だちくらいの希薄な縁の男子に言われたことがある。
 「AV女優なの? そんな風に見えないね! えー、いいなぁ。そしたらさ、楽してお金稼げているんでしょ。どんくらいもらえるの?」
 偏差値の高い大学に通っていたらしいが、真っ先にこんな頭の悪そうな文句が出てくるのだから、やはり偏差値というのはアテにならない。(p.153)

(引用終了)

本論とは関係ないのですが、この森下さんというのは文章が上手です。非常にうまい。全編この調子。冗長さがなく、場面転換が鮮やかです。
そして面白いです。3度目の正直でAV女優となったことや、女優志願の動機ははっきりと無かったことなどが普通に淡々と描かれていきます。

自伝と言えば、同じくAV女優を職業としていた穂花さんの自伝も面白いのですが、内容の衝撃度に対して、構成として文章を書いている人(本人ではなく)の臨場感の無さが浮き彫りになって、軽くなっていたように思いました。もったいない。

話は戻して、件の東大生はそこまで失礼な物言いはしないのですが、似たことを彼女に聞きます。
それに対して晶エリーは「私がやっていることだから、真面目に」と回答します。「情熱があるから」と(余談ですが、僕は彼女が25歳という若さであることに驚きました)。

同じ事を森下くるみも言います。
「 こだわりとは工夫すること。想像してみること。それとやはり、肝心なのは気持ちなのだ。イヤイヤ仕事をしていたら、適当に手を抜いてたら・・・・・・。自分に熱も何もなけりゃ、見ている人にはわかってしまう」(p.159)

イヤイヤにhave toで仕事をしている人々には耳が痛い話。「必要なのは強い情熱」と言うジョブズを思わせます。

見習うべき点は多くあります。

イノベーションを起こすのはいつも情熱と命がけの跳躍でしょう。それが価値あることを成し遂げるということだと思います。

我々ヒーラーも日陰に甘んじず、堂々と情熱を持って仕事をしましょう。

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