無限の大きさを比べるには? ~無限の棲むところ~ | 数学を通して優しさや愛を伝える松岡学のブログ

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アドラー心理学的な世界観のコラムやエッセイを書いています

無限というと果てしない世界で、
人間の感覚を超えたイメージがあります。


無限をとらえるにはどうすればいいのだろう?


数で考えてみます。

1,2,3,4,5,6,・・・

というような数を自然数といいます。

自然数は無限個ありますが、実際どれくらいなんだろう?


たとえば、


2,4,6,8,10,12,・・・
 

という偶数も無限個あります。


では、


自然数も、偶数も無限個ありますが、
どっちがたくさん存在するでしょうか?



感覚的には、自然数

1,2,3,4,5,6,7,8,・・・

のうち、2,4,6,・・・が偶数なので、
自然数の方が多いように感じます。

しかし、

果たしてそうでしょうか?


有限の場合を考えてみましょう。

次の図のように、レンゲの花にみつばちが飛んでいます。
どちらが多いでしょうか?

 

 

 

これくらいなら、数えればミツバチの方が多いことが分かります。

ただ、数える以外の方法はないでしょうか??


あります。


みちばちと花を対応させればよいのです。

次の図のようになります。

 

 

 

つまり、

数を数えなくても、対応させることで、
どちらが多いか判断することができます。


実は、無限をとらえるとき、数えることができないので、


1対1に対応させることが、とても有効になります。


自然数と偶数の場合、次のように対応させたらどうでしょうか?


1 ⇔ 2
2 ⇔ 4
3 ⇔ 6
4 ⇔ 8 
 ・・・・・
 ・・・・・


そうすることで、

「すべての自然数と偶数が1対1に対応する」

ことが分かります。


ということは、

自然数と偶数は同じ個数だけ存在する

と解釈できます。


数学では無限を扱う場合、「個数」 という言葉を使わずに
「濃度」 という言葉を使います。


ですから、

自然数と偶数は同じ濃度である

と数学では表現します。


同じように、自然数と奇数も1対1対応がつきます。

整数(自然数に0とマイナスを加えた数)や

有理数(整数と分数を合わせた数)にも

自然数からの1対1対応がつきます。



つまり、

偶数、奇数、自然数、整数、有理数は、みんな無限個ですが、
すべて同じ濃度であるといえるのです。

(すべて同じ程度の無限個という意味です)


では、

実数はどうでしょうか?

実数とは、整数に分数やルート2などの無理数を加えた数のことです。


実は、

自然数と実数を対応させようとしても、
1対1対応をつけることができないことを証明することができます。

実数の無限個があまりにも大きすぎて、
自然数と1対1に対応させられないのです。


実数の濃度 (無限個の程度) のことを 「アレフ」 といいます。

一方、

自然数の濃度(無限個の程度)のことを 「アレフゼロ」 といいます。


つまり、

1対1対応を考えることで、

自然数の無限個 (アレフゼロ) より実数の無限個 (アレフ) の方が、
大きいことが数学的に明らかになるのです。


このように、数学的な手法を駆使することで、
人間は少しずつ無限をとらえることができるようになってきました。

ただ、まだささやかな一歩かもしれません。

私たちの目の前には、壮大な 「無限」 の世界が、
未開拓のまま広がっているのです。