もう少し聴き込んでから書くべきかと思いますが、そろそろ一週間後のイベントに向けて気分を切り替えたいので、区切りとしてレビューを書きます。

このアルバム「LEVEL3」、一曲ごとに切り離したときの曲の強さみたいなものは、「GAME」、「⊿」、「JPN」にはかなわないように思います。でも、全体を通して聴いたときの流れがとても良いと思います。アルバム全体の世界観みたいなものも前3作の方が上のようなのに不思議です。ときどきアルバム曲をリピートして聴きたくなることもありますが、全体を通して聴いたときの心地良さがこれまでのアルバムで一番のような気がします。

収録されている4枚のシングルタイトル曲のうち3曲をAlbum-mixにして曲の「濃さ」みたいなものを少し弱めてアルバム全体の流れの中に溶け込ませたのが大きいのかなと思います。勝手に「A面曲のB面化」と呼ぶことにします。

そしてアルバムのために書き下ろした新曲も良いですね。シングルカットして売れそうな曲はないのですが、アルバムのパーツとしての役割をきちっと果たしているように感じます。

セラミックおじさんさんのブログにThe Beatlesの「Sergeant Pepper's Lonely Hearts Club Band」みたいだと書き込みましたが、改めて「Sergeant Pepper's...」を聴き返してみると、同じ印象があります。一曲一曲で勝負するんじゃなくて、全体で一つの作品としてまとまっている感じがです。かといって一曲一曲が駄作という訳でもありません。

ということで曲ごとのレビューです。



01. Enter the Sphere

いきなり音がブツ切れで、不良品を掴んだかと焦ってしまいました。
「Global Site」の曲ですが、あまり不自然にならずに歌が追加になりました。聴きなれた曲がPerfumeのボーカルが加わってイメージがガラリと変わりました。Perfume Worldにぐいぐいと引き込まれます。

02. Spring of Life (Album-mix)

動画サイトで中田ヤスタカがクラブイベントで似たようなmixをかけているのを聴いたことがあります。曲としてのまとまりはシングル版の方がずっと良いと思うのですが、Enter the Sphereで作った流れに上手く乗ったAlbum-mixだと思います。

ダンス・ミュージックの響きを強調したことで、徳間ジャパン時代とは違う「ユニバーサル・ミュージックのPerfume」のイメージみたいなものを主張している感じします。

このまま次の曲にもノンストップでつながるのかな、と思わせておいてスンと終わってしまうのは意外でした。全体的に、最後は打楽器中心で終わる曲が多いのですが、ライブやイベントで他の曲とつなぎ替えがしやすくなるような気がします。

03. Magic of Love (Album-mix)

これもシングル版の曲のまとまりを故意に崩して、シングルとは全然違うイメージに仕上げています。一曲だけで聴くなら断然シングルです。でも、この流れも心地良いです。

04. Clockwork

新鮮な響き。時計仕掛けのリズム。「巻き巻き」と可愛い歌詞。コーラスワークであ~かしのボーカルをのっちが上手に引き立てている感じ。とにかく心地良い。ついつい禁断のリピートしたくなっちゃいます。

05. 1mm

この曲がリード曲と聞いて、何か物足りないものを感じていましたが、アルバム全体の流れの中で聴くと印象が全然ちがいます。そう言えばまだ特典DVDに収録されているMVまだ観てません。

06. 未来のミュージアム

シングルと同じか、いじっているとしてもホンのちょっとだと思うのですが、このアルバムの中で化けた感じがします。シングルで聞いたときの「子供向け」な感じが全体的に大人っぽさを感じさせるこのアルバムの中で良いアクセントになっています。サビの部分では音楽を聴くことの幸福感から何かこみ上げるものを感じます。「ドラえもん」のラストシーンの影響もあるのかもしれませんが。

07. Party Maker

アルバムの中で一番好きな曲です。ライブを活動の中心に据えているPerfumeらしいライブをテーマにした曲です。この曲を聴くとPerfumeのライブの高揚感が強く感じられて、涙が出てきます。思わず両手が上がります、体が動いてしまいます。

歌の部分は短くて、長い間奏にMIKIKO先生振り付けによるPerfumeのダンスとか、関和亮監督の映像やライゾマによる演出など、Perfumeのライブの魅力を高めてくれる色々な仕掛けを追加する余白がたっぷり残っています。きっとPerfumeライブの目玉として使われることでしょう。

でも、個人的な意見としては、MIKIKO先生には映像や舞台装置がなくても演じることができるような演出にして欲しいと思います。この曲、凝った装置や演出を前に立ち尽くして眺めるよりも、一緒に体を動かしながら「ライブをしたい」曲です。だからスタジアムのように床の強度や近隣への配慮のためジャンプが規制されている会場ではなく、フェスの会場でも演って欲しい。何万人ものオーディエンスと一緒に地面を揺らさんばかりに暴れたい。

Perfumeの楽曲の中ではロックのテイストが強い「GAME」や「edge」は凝った演出がセットになっているが故にワンマンでしか披露されません。できればこの曲には同じ道を進んで欲しくありません。

こういう願望の裏に、舞台装置や演出よりも何よりも、演者と観客が作る化学反応を楽しみたいという、私個人の偏ったライブに対する価値観があることは間違いありません。

高揚感に興奮してこの曲だけ感想が長くなりました。次行きましょう。

08. ふりかえるといるよ

これも新鮮な響きの曲です。矢野顕子の曲みたいなふわふわとした心地良さがあります。Perfumeの曲の中で好きな部類ではないと思うのですが、心地良さが故についつい聴いてしまう、そんな不思議な魅力があります。

09. ポイント
10. だいじょばない
11. Handy Man

実は、ユニバーサル移籍後のシングルのカプリングって、「Hurly Burly」以外はあまり好きになれず、シングル買って3日目くらいからほとんど聴かなくなっていたのですが、このアルバムの中ではあまり早送りしたいという欲求が湧いてきません。ダンス・ミュージックぽさが強調されたこのアルバムの中で、いちばんしっくりきそうな「Hurly Burly」を外してこの3曲を持ってきた選曲には感心します。

「未来のミュージアム」ほどではありませんが、アルバムの流れの中で化けた感じがします。

12. Sleeping Beauty

タイトルから一番期待度が高くて、聴いて一番がっかりしたのがこの曲です。
界隈で「『Butterfly』の別バージョン」という感じの意見が多くて、私も全く同感なんです。もう少し「Butterfly」とは違うものが聴きたかったです。でも、ライブではこれに関監督の映像だとかライゾマの演出などが加わって、大化けしそうな可能性も秘めています。

13. Spending all my time

Cannes Lionsで使われたものに良く似たmixです。この曲はシングルよりもAlbum-mixの方が好きです。思い切り盛り上げて、次の曲につながります。

14. Dream Land

切ない曲です。ジブリ風のアレンジが郷愁を強く感じさせます。

歌詞の内容は虚構の世界というかダークサイドに行ってしまった恋人か友人を現実世界に引き戻そうとしているように思います。

でも、この曲がライブの最後の方で演じられることを想定して勝手に解釈を曲げると、こんなことを言っているようにも感じられます。

・夢のようなライブはもうすぐおしまい。
・でも、ここにずっと居っぱなしでは良くない。ここは偽りの世界だから。
・みんな、そろそろ現実世界に戻りましょう。
・でも、また一緒にここに来ようね。一緒につかの間の夢を見ようね。

深い余韻を残してアルバムが終わります。



すばらしいアルバムに仕上がったと思います。

商業的には、大衆受けしなさそうな気がしますが、音楽としてのレベルはそのタイトルにそぐわずとても高いような気がします。西暦2000年代初頭の日本の、いや世界のポップス史の中で革命的な一枚として歴史に名を残す作品の一つになるんじゃないかと思います。

これからのライブで使うことを前提に作られたという背景から、Team Perfumeがあれこれ付け加える余白も沢山残っています。年末のライブでどういう完成形を見せてくれるのか、楽しみです。私も12月24~25日には観客の一人としてこのアルバムを完成させることにホンの少しですが加わりたいと思います。