プロレス名勝負伝~藤波辰巳vs前田日明~ | 団塊Jrのプロレスファン列伝

プロレス名勝負伝~藤波辰巳vs前田日明~

さープロレス名勝負伝の時間だ!!

今回は昭和61年6月2日に大阪城ホールで行われた藤波辰巳vs前田日明です!!あの日行われた伝説の名勝負・・・知ってる人も知らない人も、ドラゴン探検隊に入りたい人も集まれぇー!!あー暴れん坊のゴリラのゴン太だ!みんな近づくな!!

いってみよー!!

それは86年のIWGPチャンピオン・シリーズだった。

この年のIWGPはA、Bのグループに別れ総当たり戦を行い、得点上位の者が決勝進出として優勝戦を行うという方式の下、行われた。

Aグループはアントニオ猪木、坂口征二、藤原喜明、キムケン、アンドレ先生にクラウス・ワラス、そして我が父マスクド・スーパースター。Bグループが藤波辰巳、前田日明、上田馬之助、マーおじさん、ワイルド・サモアン、キューバン・アサシン、そしてジミー・スヌーカというメンツ。

この大阪城決戦の時点でBグループのマードックはすでにトップの21点で公式戦を終了しており、藤波、前田は次点でこれを追う形となっていた。

まさに決勝進出を左右する大一番であったが・・・この日、この試合にIWGPという図式を見たファンは果たして何人いただろう?ファンが期待したもの、この試合の意味。IWGPなんてどうでもよかった。藤波と前田が戦う・・・ファンの期待はふたりの戦いから生まれる“新しい波”を感じることだったのだ。

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前田、藤波が対峙した。お互いにきれいな握手を交わす・・・この瞬間、もうファンの心中には新しい何かが見えたかもしれない。

ゴングが鳴った。

試合開始は静かな幕開け・・・お互い様子を見るように投げ、グランドで様子を窺う。そして立ち上がり藤波が前田に先制のローキック!攻撃というより心理を揺さぶった。これに前田もローを返す。このあと前田がテレフォン・アームロックを仕掛けるが、藤波は前田の頭に足をかけゴロリと体を翻すとなんと前田相手に見事なクロック・ヘッドシザースを決めた。それはなんてスムーズな入りだ!旧UWF時代に日の目を見た数々の関節技は、表に出ることのなかった道場での技が多いという話を聞いたことがあったが・・・もしかするとクロック・ヘッドシザース、若き日の藤波が新日本道場スパーで身につけたものだったのかもしれない。

そして試合開始5分の直前、静かな立ち上がりから試合は動き出す。

手四つから前田はドロップ・キック!しかし倒れない藤波はストンピングからヘッドロック!前田がロープに振ると藤波がショルダー・アタックで吹き飛ばす。さらに藤波がロープに走ると今度は前田が返す刀でニールキック!しかしこれをかわすと再びロープに飛んで藤波のラリアートが炸裂だ!!

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ここから藤波は片逆エビに入るが・・・片逆エビが解けた後、前田の総攻撃が始まる!まずは徹底した足殺し。

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アキレス腱固めで追い込むとローの連打から今度はヒザ十字固め!これをやっとロープに逃れたと思いきや再びスタンドの展開になれば

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今度は藤波の顔面に情け容赦ないキックの速射砲!一体何発のキックが藤波の顔面を襲ったのだろう・・・前田、まさに妥協なきエモーションだ!!

しかし藤波も転機をうかがう。前田の三角締めを弓矢固めで返すとこれは藤波としては珍しいドリル・ア・ホール・パイルドライバー!前田のUWFスタイルに真っ向プロレスで立ち向かう藤波に大歓声が巻き起こる!

しかし試合は再び前田ペースになる。

ロー、ハイと上下で蹴っていく前田。藤波は足を引きずりながらダウンを繰り返すが・・・寝れば関節、立てば蹴り・・・藤波は完全に防戦一方になってしまった。絶対的前田ペース。よもや藤波に勝機はないか?と思われたが、ここでハイキック狙いの前田の軸足を蹴り反撃開始!ここからロープに飛んで再び前田のカウンターのキックを食らいドラゴン・スープレックス・ホールドを仕掛けられるが、これを逆にバックに切り返しジャーマン・スープレックス・ホールドを狙う!だがこれをエルボーから脇固めで切り返されロープ。再び前田のハイキックだがこれをキャッチし振りほどき、今度こそはの藤波のジャーマン・スープレックス・ホールド炸裂!!

若干態勢が崩れてしまったこともあり、カウント2で跳ね返されてしまったが・・・その後、起き上がり様の前田の胸元に藤波がお株を奪う見事な左のミドル・キック2連発ッ!前田がダウン!この試合の象徴的シーンだ!!

フラフラッと起き上がった前田に駄目押しのミドルをもう一発か?突っ込む藤波。とそのとき、今度は前田が読んでいた。藤波の左足をキャッチするとついに必殺キャプチュード!!だがこれはカウント2!!そして再びイヤというほどヒザ十字固めの猛攻だ。

やがて立ち上がると前田の投げがもつれて双方場外に・・・けど乱闘などせずすぐさまふたりはリングインする!

ここで前田の蹴りをキャッチした藤波が

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渾身のサソリ!!藤波はあくまで真っ向プロレス勝負だ!!

しかし前田はロープへ。そして起き上がり、前田はあのアンドレ戦でアンドレをグラつかせた、踵でヒザの皿を蹴るキツイ一撃を放ち・・・

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ついに秘密兵器・タテ回転ニールキックという刀を前田は抜いた!!

現在、この映像をお持ちの方がいたら見て欲しい。前田のニールキック、いつもは完全に跳んでのものだが・・・このニールキックは跳び要素はあまりない。蹴りを出す前、両足がマットについている状態から前田は前傾になり左手を先にマットに付けてから、そこから回転、足が伸びてきている。似ているがけして浴びせ蹴りではない。ニールキックにして明らかにいつもと違う打ち方なのである。肉体のローマ式戦車・・・タテ回転ニールキックとはいったものだ!!

この一撃で藤波は右目じりを一瞬にして断ち大流血!後に7針を縫い翌日から欠場になってしまったというほどの裂傷は藤波の顔をあっという間に鮮血で染めた。そこに前田は駄目押しのドラゴン・スープレックス・ホールド!これを返すが、さらにブレーン・バスター!!

これもなんとかカウント2で返すが藤波はニールキックで大ダメージな上、自身の得意技をやられ・・・もはやその原動力は精神だけである。絶体絶命だ!!

そこへ前田が勝負に出た。自らロープに跳びニールキックを放つ!!しかし藤波も最後の力を振り絞ってジャンプしてのレッグ・ラリアート!!

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ああ!ふたりの技が交差した!!

藤波は起き上がれない。前田も打ち所が悪かったか起き上がることができない!!レフリーのカウントが続く・・・

ああついに・・・ダブル・ノックアウトのゴングが鳴った!!

それは22分5秒という大激戦であったが・・・会場のファンもテレビの前のファンも、それを誰一人、長いと感じたものはいなかった。

この年のIWGP・・・ファンの期待はなんといっても猪木と前田の決勝戦の実現だっただろう。

ファンはAグループのトップはもちろん猪木で間違いないと読んでいた。そこにBグループのトップに前田がくれば・・・前田とのシングルをずっと逃げていた猪木でも、戦うしかない。ファンはそれを待ち望んでいた。そんな日を・・・もう猪木の時代でないことを戦って証明して欲しかったのだ。

だがこのリーグ戦の藤波・前田の試合を見てファンは確信した。新しい時代を確信することができたのだ。猪木と戦う必要なんてなかった・・・前田がいて、藤波がいて、そして新しい扉が開かれたのである。

あのときボクは13歳だった・・・それから20数年の月日が流れた。

20数年の間に格闘技も経験した。暴露本でプロレスの裏を知って悲しい気持ちになってしまったこともあった。でもそんな経験も格闘技云々もない。この試合を振り返るとき、いつだって気持ちは13歳の当時に戻っていくのだ。ただひたすらプロレスを見ていたあの頃のように・・・

そうさ、純粋にプロレスの試合を振り返ればいつだって気持ちは当時のままなんだよ!

それはどうしてかというと・・・名勝負は色褪せないからさ!!