テレビの放映で海外のダイエットとしてよく紹介されるものの一つに,胃バイパス手術(Gastric Bypass)がありますよね.
胃腸を手術して体重が激減!という成功結果のみが紹介されていますが,誰でも気軽に無制限にできるものではないし,好ましくない症状や危険を起こすこともあります.管理もけして楽ではないものです.


Gastric bypass


アメリカ医学図書館,アメリカ国立衛生研究所提供
医学情報サイト「MedlinePlus」の「医学百科事典」より


詳細は上記のリンク先を見てくださいませ.

ここでは内容を簡単に紹介する程度です.(^^;;;


胃バイパス手術はアメリカの医療機関で,超過体重の「治療」のためにもちいられるものです.
こういった体重減少のための手術は大きく分けて,


■胃を小さくする
■栄養を吸収しにくくする,
■前者2つの組み合わせ


と3種類に分類されますが,胃バイパス手術は胃を小さくすることと,栄養を吸収しにくくすることの2つを組み合わせた手術方法です.
テレビの放映でよく紹介されるのが Illustrations のいちばん左端画像,Roux-en-Y 胃バイパス手術.
(右端の画像は手術後のダンピング症候群をしめしたものですけれど...(^^;)
胃の上部を分けることで胃の容量を小さくし,その小さい部分と小腸を直接つないでいるようなかんじですね.
手術自体は(開腹手術ではなく)腹腔鏡にて行えるもの.
興味のある方は,手術映像がWeb上にて閲覧できますので,ご覧ください.


Videos of Surgical Procedures
http://www.nlm.nih.gov/medlineplus/surgeryvideos.html


の真ん中辺り...
Digestive System の Weight Loss Surgery にていくつか手術の映像が公開されています.
手術映像ではなく胃バイパス手術の解説だけのものもあります.
たとえば上から3番目 Gastric Bypass Surgery は手術中の風景?と腹腔鏡映像で,腸や胃が加工されるところがけっこう鮮明に閲覧できます.ちょっと長いですけど(55分).
血や臓物に弱い方,食事中の方は避けた方がいいかも.


さて,この方法によって体重が減る原理は2つ.


■食べる量が減る.すぐに満腹感を感じる
■カロリーの吸収が減る


前者は手術で胃の容量が小さくなるので,一度にたくさん胃の中にものが入れられないから.また,胃の容量が小さいので少ない量で満腹になるため.
後者は胃の小さい部分(上部)が直接小腸につながるので,胃の下部(残り部分)と十二指腸をものが通過せずカロリー吸収を少なくするというもの.もちろんこのせいでしっかりと栄養が吸収されないということも起こります.

もちろん「治療」ですので,痩せたいと思っているすべての人が対象となるわけではありません.
対象は,


■BMI40以上.(160cmならば102kg以上,175cmならば122kg以上)
■BMI35以上で,睡眠時無呼吸,2型糖尿病,心疾患などをもつ場合


となっていますが.
感染症,胆石,胃炎,食べ過ぎによる嘔吐,鉄分,ビタミンB12,カルシウムの欠乏,ダンピング症候群(吐気・嘔吐,下痢,膨満感,めまい,発汗)などといった副症状の危険も伴いますので,非外科的な方法で減量可能な場合は,そちらが優先されます.
食事療法や運動などに失敗し減量できなかった場合は手術が考慮されますが,
重要なのは手術をすれば(食事や運動などの)努力をしなくてもいい...というわけではないこと.

前述のような副症状の危険などがあるので,食事指導をしっかりと受け,副症状を抑えるようにコントロールしていくことが必要.また食事量が減るとはいえ高カロリーのものを少量ずつこまめに摂取すればカロリーオーバーとなりやすいですので,食事の注意は必要です.そして,より健康的に体重を落とすには,筋肉をつけるための適度な運動も必要になってきます.


手術さえ行えば,あとの苦労や努力は何もなく,簡単に痩せられる...


そういった印象もうけるダイエット方法ですが,そうそう甘いものではないですね.


しかし...手術映像が閲覧できるところが日本のサイトとは違うところかも.(^^;
アメリカの禁煙教育ビデオを高校の授業で見たことがありますが,肺がんの手術映像がとっても印象に残っています.胸を切って開いていくところから始まって,心臓バクバク動いているところまで見られるので,視覚効果は抜群でしたわ.
この記事で紹介した,胃バイパス手術の手術映像は,腹腔鏡によるものなので派手な流血はありませんが,胃,腸,肝臓がばっちり.心臓が動いているのは分りづらいかも.<をいをい
腸と腸の間をつなぐ膜に脂肪がたっぷりとついているのが印象的です.(黄~オレンジがかった物体です)
内臓脂肪というやつですが,これを撃退するのもダイエットのひとつの目標ですね.