誰でもできるフリップキャスト 第1章 理論編 | 阪神シーバス釣査隊

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おそらく釣れない方が多いシーバス釣行記 主に西宮や尼崎に出没します!

ボートシーバスの醍醐味の一つ、「穴撃ち」。
そして、穴撃ちを手返し良く行うための鍵となるのが「フリップキャスト」。
でも、なかなかうまくできないという話も良く聞きます。
ネットなどで検索してみても、「難しすぎる!10年かかる!」など気の遠くなる話ばかりです。
また、色々やり方を解説しているサイトや動画もありますが、なかなかそれではキャストできるようにならないというのも事実。
そこで何とか誰でもフリップキャストができるようにならないものか?と考えてまとめてみようというのが今回の記事。
自分なりのコツというか視点ですので、合わない方もおられるかもしれませんが、皆さんのご意見も参考に少しずつブラシアップしていきたいと思います。


第1章 理論編

1.フリップキャストがうまくいかない理由

釣りをしない人でも、人間は小さいころから何かの目標に向かって物を投げるという習慣が身についています。野球のキャッチボール、ボウリングもそうですし、ごみ箱にごみを投げ捨てるというのもそうかもしれません。

ルアーキャスティングにおいても、オーバーヘッド、サイドその他の投げ方においては、ロッドを腕の延長線であるかのように扱い、目標に向かって腕を使って投げ入れるという感覚で投げていると思います。

しかし、そもそも、ここが勘違いのはじまりです。
一度棒みたいに硬いロッドに軽いルアーを付けて投げてみてください。
思うように飛ばないでしょう。
腕の力だけでは全然飛ばないということなのです。
たかだか20gのルアーを飛ばすためには、力よりも速度が必要。
しかし、人間の腕の筋肉は10kg以上の物を持ち上げる力はあっても、速く動かすことはできないのです。

硬いロッドに重い鉄板ルアーしか投げないという人は別にして、実はルアーのキャスティングはロッドの「曲がり/しなり/弾力」を利用してルアーを飛ばしています。
力を速さに変換している、という言い方もできます。

このグラフを見てください。

横軸がキャスト開始からの経過時間、縦軸が腕の動きとロッドの曲がりを示したものです。

Step1:腕を後ろに振ります。ロッドは前向きに軽く曲がっていき、ルアーは腕の動きに少し遅れて後ろに動いていきます。
Step2-1:後ろに振った腕を前に振ります。ルアーはバックスイングの勢いで後ろに行こうとするのに、ロッドは前に行こうとするので、前に曲がっていたロッドはまっすぐに戻っていきます。
Step2-2:さらにロッドは前に行こうとしつつ、ルアーは後ろに行こうとするので、ロッドは後ろ向きに急激に曲がっていきます。
Step3:スイングを止めると、後ろ向きに曲がったロッドに蓄積したエネルギーが一気に放出され、前方向にティップが振れます。その途中でルアーをリリースすることで前に飛びます。

これを正しく理解していると、オーバーヘッドキャストにおいて、それほどロッドを振り回さなくても飛距離の出るキャストができるようになります。
また、アキュラシーも格段に向上します。

フリップキャストに挑戦する前に、一度スピニングタックルによる「しなりを活かしたオーバーヘッドキャスト」の練習をしてみてください。

<正しい?オーバーヘッドキャスト>
① 目標物→ロッドティップ→手元→自分の体の中心が一直線になるようにロッドを構える。角度は30-45度、両腕をしっかり前に伸ばす。
② 腕を伸ばしたまま鋭くバックスイングして元の位置に素早く戻し、ガチッとストップ
③ 同時に糸をリリース

低い弾道で目標物に向かってルアーが鋭く飛んでいくでしょう。

フリップキャストなのにオーバーヘッドキャストの話かよ~ と思われるでしょうが、この感覚が重要です。
これを理解していなければ、実際は弾力で飛ばしているのにも関わらず、腕の力で前に振ることによって投げているという感覚が身についてしまいます。

実は、この「前に投げようとする感覚」がフリップキャストを難しくさせる一番の原因なのです。
前に投げようとすればするほど、タイミングがずれて思わぬ方向に行ったり、テンプラフライで大バックラッシュになったりします。
まずは、「ルアーキャスティングは、腕を前に振る力で投げるのではなく、ロッドを曲げ、その復元力で飛ばす」ということを頭に叩き込みましょう。


2.フリップキャストの原理

オーバーヘッドキャストの話をしてきましたが、フリップキャストはどういう原理なのでしょうか?
基本的には「ロッドを曲げた反発で飛ばす」ということには変わりありません。
しかし、オーバーヘッドキャストと比較して、方向が逆、かつワンステップ追加となります。
先ほどと同じようなグラフで表すとこのようになります。

Step1:腕を上に振ります。ロッドは下向きに軽く曲がっていき、ルアーは腕の動きに少し遅れて上に動いていきます。
Step2-1:上に振った腕を下に振ります。ルアーは勢いで上に行こうとするのに、ロッドは下に行こうとするので、下に曲がっていたロッドはまっすぐに戻っていきます。
Step2-2:さらにロッドは下に行こうとしつつ、ルアーは上に行こうとするので、ロッドは上向きに急激に曲がっていきます。
Step3:スイングを止めると、上向きに曲がったロッドに蓄積したエネルギーが一気に放出され、下方向にティップが振れます。
Step4:下方向に曲がり切ったティップがロッドの弾力によって一気に上に戻ってきます。その途中でルアーをリリースすることで前に飛びます。


オーバーヘッドの時はロッドを止めた後にロッドが戻ってくるタイミングでリリースしていましたが、フリップキャストでは、ロッドを止めた後に下方向に曲がり切り、そこから戻ってくるタイミングでリリースするというところに特徴があります。

このように、フリップキャストはロッドを止めた後の「ビヨンビヨン」という2ステップで投げる投げ方ですので、とにかく「いかにきちんと下方向にロッドを曲げるか」が鍵となります。


3. 遠くに飛ばすキモ

フリップキャストの原理からすると、「ロッドをたくさん曲げると遠くに飛ぶのか」と思うようになります。
ここでもう一つの落とし穴が出てきます。
より遠くに投げようとして、下向きに強く振ろうとすることです。
某名人や、Youtube動画などでは、手首のスナップを効かせて下向きに強い入力を与えています。しかし、初心者がこれを真似をすると、ほとんどの場合うまくいきません。

何故か?

実験してみましょう。
ロッドにルアーなりシンカーをつけ、安全な場所で上下に振ってみます。
どういう振り方をすればロッドが一番曲がるのか探ってみましょう。
強く振ろうとして大きく手を上下させても、意外に曲がらないのではないでしょうか?
それよりも、小刻みに2-3センチぐらいに上下に速く振動させる方が大きく曲がりませんか?
その理由は、力を入れて振ると、「振りの軸がぶれてしまう」からです。
手元の数ミリのブレが、ロッドの先では数センチのブレとなって現れます。
上下運動の軸がぶれると、シンカーの運動ベクトルがずれて力が分散されてしまいます。
上級者は強く振ってもぶれない振り方ができるからあのようなキャストができますが、ぶれないように上達するのにはかなり時間がかかります。
それより、2-3センチの上下だけでロッドがぎゅんと曲がるように練習する方が早いと思います。

ところで、実際のキャストにおいては上下に小刻みに震わすことはできません。
1発勝負です。

では、1発勝負でどうやって沢山ロッドを曲げることができるのか?

鍵はロッドを急激に止めることにあります。

電車やバスに乗っていて、ゆっくりブレーキをかけながら止まる場合は立っていられますが、同じスピードでもいきなり急停止すると体がすっとんでいきます。
それと同じことをロッドワークでやるのです。

減速させずに急激にどうやって止めるのか?
人間の筋肉の動きを考えると、止めようとすると必ずその手前で減速してしまいます。

そこで、「一旦行き過ぎて逆方向に動かして止める」という動かし方をします。
先ほどのグラフで表すとこうなります。

 
点線で囲まれた円の中を見てください。ストップの手前でいったんマイナスに行き過ぎてから少し戻してゼロの位置に来ています。

「腕を急激に止めるために逆に動かす」
これが最大のキモです。


何か重いものを持って、腕を動かしてみてください。

・肘を水平にし、そこから上に持ち上げて元の位置におもいっきり強く振り下ろしてみてください。もとの位置にぴたっと止まりましたか? おそらく行き過ぎてしまったのではないでしょうか。
・次に、同じように肘を水平にし、そこから上に持ち上げて、元の位置にぴたっととまるように動かしてみてください。あまり鋭い動きはできないのではないでしょうか?
・では、鋭く振り下ろし、元の位置を3センチ通り過ぎてから元の位置に素早く戻すイメージで動かしてみてください。目に見えない板に手を打ちつけたような感覚、太鼓をトン!と叩いたような感覚、腕の中で何かが「グン」と引き締まったような感覚になると思います。
この感覚が非常に重要です。
この感覚を維持したまま、3センチを2センチに、1センチに短くしていってください。
これができれば、フリップキャストは7割方できるようになったと思ってください。

最後のステップで上方向に手を動かすことになりますが、あくまでこれは急激に止めるための動きであり、投げるための動きではないことに注意です。
実戦ではラインコントロール等の理由でキャスト後にロッドを上に振ることもありますが、上方向に振る動きでキャストしている訳ではありません。他人のキャストを見るとそのあたりが分かりづらく、勘違いしやすいので注意が必要です。

なお、手首を使う達人たちは、この「急激に止める動き」を、手首を使って肘から離れたグリップエンドを肘に打ち付けるというアクションで行っています。
確かにグリップエンドを離さないやり方に比べて軽いアクションで強い曲がりが得られますが、ロッドも肘も丸いので、毎回安定して同じところにぶつけるのが難しいのでブレやすいのです。だから初心者にはお勧めしないのです。

第1章のまとめ
・腕の力で前に飛ばそうと絶対に考えない
・ロッドをいかに曲げるかが重要である
・腕の振りはブレなく、小さい幅で
・一旦行き過ぎて小さく戻すことで腕の振りを止める


実践編につづく