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公演を中止するというリアル

4月末に予定していた公演が延期になった。これはもはや演劇業界の中では当然の措置であって、納得のいく決断だった。というか納得せざるを得ないと言った方が正しいかもしれない。3月始めくらいまでは「対策をきちんととって上演する」という方向で進んでいたが、状況が悪化するにつれ、自分の中でも色んな葛藤や疑念が生まれてきた。いわゆる「三密」という言葉がリリースされた時点で、主催者としてこれはもう公演するべきではないと思った。ただ、稽古を重ねてきた役者たちの思いや演出家の気持ち、また今回は「ナイーブスカンパニー」という他団体さんとの合同企画ということもあるので、劇団単体の公演よりも話し合いが必要で、発表までは時間を要することとなってしまった。正直、予約してくださっていたお客様の中でも「どうせ中止か延期になるんだろう」とほとんどの方が思っていたと思うが、なるべく早く発表するのが誠意だと考えていた。ただ、正直に言うと劇場のキャンセル料の絡みが大きかった。都が外出自粛を打ち出しても、国から非常事態宣言が出されても、劇場のキャンセル料は必要だと言われていたのだ。劇場の運営だってボランティアじゃないし、それで生活しているのだから理解はできるのだが「儲からない演劇」をやっている我々にとっては死活問題だ。また、振替公演を9月に予定することに対して情勢を読むことは不可能に近く、本来なら「落ち着いてから企画する」方がベターな選択であることは分かってる。でも9月に公演をやる。できるかどうかは分からないが、やる。これはある種の意地みたいなところもあるかもしれない。更に、まだ正式に発表はできないが強力なコンテンツを追加してやるつもりだ。ただ延期してたまるか。そんな理由でお知らせが遅くなってしまったことは本当に申し訳なく思っている。

 

演劇は儲からない、というのは通説でありリアルだと思う。もちろん世の中には儲かる演劇も存在していることは理解している。じゃあ儲かる演劇をやればいいじゃないか、という声があるかもしれないが、それは何と表現すればいいのか難しいのだがちょっと違う。劇団という組織はただ「儲かる」ためにはやっていないのだ。劇団員たちとは契約書さえ交わしていない。ほとんどの人間が稽古の合間にバイトをしながら家賃や生活費を稼ぎ「儲からない」演劇をやっている。お金が第一だったらそもそも劇団員なんてやっていない。続けていくことが何よりの才能、と耳にすることが時々あるが、それは本当のことかもしれない。

 

現在、組織としての収入は完全にゼロである状況である。そんな中でも稽古場の家賃や諸々のランニングコストは当然出ていくわけで、もしも劇団としてこのまま無収入の状態が続けば、確実に潰れるしかなくなる。これまでは自劇団専用の稽古場があるという、演劇人にとっては非常に恵まれた環境に感謝することはあれ、まさか稽古場を持っていることが負担に感じる日が来るなんて思ってもみなかった。

 

国からの補償や文化庁からの助成。当然組織の長として最大限の努力はするが、現状全く期待できない状況だ。そんな中でも、演劇界の救うため動いてくださっている方々がいる。本当に頭の下がる思いだし、自分も動きたい気持ちはあれど何が今の一番なのかという優先順位を決めることが難しく、悶々とした気持ちを常に携えながら必死で自宅で掃除や料理に勤しんでいる。

 

5月末には劇団の人気シリーズ『菜の花食堂』の上演も決まっていたが、情報公開前に無期限の延期が決まった。7月に予定している夏の本公演『広島に原爆を落とす日』もどうなるか分からない。芝居は当然のことながら稽古なくして本番を迎えることはできない。判断は早めにしなければとは思ってはいるがはてさて。本来ならこの時期にプレ稽古をして配役を決定。情報を公開してチラシを作成する予定だったが、劇団活動は目下全面的に自粛している。稽古ができない→配役も決めれない→情報公開もできない→チラシ作成やチケット発売日も決めれない、という後手後手に回ってしまっている。

 

四六時中、どうしたらいいかを考えていると所謂「コロナ鬱」に陥るんじゃないかとさえ思う時がある。オンライン演劇など、今できることをやろうとも思うのだが、どうにも食指が動かない。これまでの日常は完全に失われてしまっていて、このウイルスが終息したとしてもこれから先の未来に対応するための変化が必要なのだと漠然と思っている。自分自身、今後どのように演劇と関わっていくかを考えるいい機会ではあると割り切るより仕方ない。しかしながら、個人のことはともかく劇団の行く末だけが気がかりでならない。時間をかけて徐々に積み上げてきたものが一気に崩れ落ちていっているのを感じながらも何もできないもどかしさ。

 

覚悟を決めなければいけない時が来ていることを確実に感じています。

 

2020年4月12日 ★☆北区AKT STAGE 時津真人

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