一体これは何のヴィジョンなのだ。ここでやっとミッションを思い出した私は南極ピラピッドのワークとはあまりにも違うことに我慢ならない、というより落胆していた。ここまで黙って見ていたのだが、これはいくらなんでもおかしいと思いはじめた私はガイドに尋ねた。ガイドはバシャールだった。
(続く)
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《170204南極ピラミッド探索に立春を見る…冬が終わり春がやって来るNO3》
私「これは何ですか」
バ「春のワークですよ」
「これがそうです」
「これがあなたの春の日です」
「冬の終わりですよ」
私「はぁ??」
「春のワーク?」
私は南極ピラミッド探索のワークをやっているつもりなのだ。春のワークとは!…バシャールは一体何を言っているのだろう? 今しがた話しているのは本当にバシャールなのだろうか?私にはわからなくなってきたが、取り敢えず彼は私の冬が終わり、これから春がやってくるというのだ。
その意味はわからないこともなかった。そんなふうに言われれば、この十年間は確かに冬の時代で、春がやってくるというのはもちろんありがたいことなのだ。私はガイドに感謝し、しかし何故いま急にそんな話になるのかということは取り敢えず脇においておき、南極ピラミッド探索も後回しにして、ガイドの話をもっと深く聞かなければならないと思った。そしてやはりこんなことを私に伝えるのはバシャール以外にはいないのだ。
私「それは全ての人々にとってという意味でしょうか」
「季節が変わり、単に春が来るというだけのことなのでしょうか」
バ「もっと深い意味があります」
「春から夏へと至るのです」
私「きっと暑くてたまらないでしょうネ」
バ「もちろん!!」
「すごい熱気ですよ」
「あなたはそれを心地よく感じるでしょう」
「全ての障害や制限や約束は反故にされるでしょう」
「あなた方は大いに暴れる時です」
「それには沢山の人々が参加し経験するでしょう」
「あなたもその中の一人です」
バリケードや、山に向かって飛んでいったハトや、王冠をかぶって倒れていた存在や、沈没する潜水艦は、あれは一体どんな意味があったのだろう。非言語交信だったのか、それとも冬から春へのプロセスの暗示だったのか、バシャールにそれを訊く余裕もなく、この時はもうすっかり忘れていた。
ここでヴィジョンが変わった。
白いキノコが女を抱いていた。真っ白で女のように美しいキノコだった。キノコは慈しむように背後から女に腕を回し優しく抱きしめ、女も体をキノコに預けていた。女は白い肌とふくよかな胸をしていた。
キノコは女を離し、そのときキノコは男の体と男の顔へと変容していた。男の体には植物的なリンパ腺とか、静脈とか、動脈とか、筋状の毒々しい色の有機的なラインが体全体を覆っていた。男とキノコは表裏一体の関係で同じ存在の二つの現れのようだった。
バ「それが、あなた方がこれから体験することです」
私「…皆目さっぱりわからないのですが」
バ「一年後には理解できているでしょう」
「しかし、あなたが理解したそのときには、何でもない普通のこととなっているでしょう」
…っということは、やはり今わかることに価値があるのだ。女のように白くて美しいキノコ男に抱かれる女?…全く理解できないのだが、キノコはマジックマッシュルームと何か関係があるのだろうか? だとしたらあまりいい意味ではなそうな気がし嫌な予感がするではないか。
私「それは変なことではないですよね」
「素晴らしいことなんでしょうね」
バ「もちろん、当然です」
「あなた方はいいことしか体験しないのです」
私「そうであってほしいですよ」
「私にはもうあ~したいとか、こうしたいとか、願い事とかないのです」
「考えてみると、ずーっと生まれたときからなかったような気がします」
そのために私は自分を見失い、力を無くして苦しんだのだ。そして自己存在などという柄にもない小難しい言葉に振り回され、生きる意味などを探した。意味など無いのだ。生きることに意味を見出したものにしかそれはない。それはプレアデスという虚栄の意識を反映させるだけで何も生み出すことはなく、しかしうまく行けば強い自己満足に至ることは出来る。それだけのことなのだ。
(続く)
マサト