『BEYOND BLOOD』シッチェスでのワールドプレミアから、2年 | Just for a Day: 小林真里ブログ

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映画監督/映画評論家 小林真里(Masato Kobayashi)です

ハロウィンが控える10月は

ホラーシーズンでもあります。

 

僕が監督したドキュメンタリー映画

『BEYOND BLOOD』のスペイン、

シッチェス・カタロニア国際映画祭での

ワールドプレミアから、2年の月日が流れました。

 

 

あれは、現地時間で2018年10月7日

土曜日の深夜のことでした。

 

今年はパンデミックの影響で時間の流れが

かなりおかしなことになっており、

もうかなり昔のことのように感じられます。

 

でも、今でもシッチェスでの日々は

鮮烈に記憶に残っています。

 

伝統的で権威ある、世界で最もメジャーな

ファンタスティック映画祭に初めて招待され、

評論家としてではなく、自分の初監督作品を携えて

参加できたことは今思い返しても、

大変嬉しく、光栄なことでした。

 

映画がシッチェスに選ばれる自信は

製作中からすでにあったのですが、それでも

正式出品が確定した時は、やはり歓喜しました。

 

自作の上映前に歴史的な劇場、Pradoの壇上に立って、

英語で初めて映画監督として舞台挨拶をしたこと、

初めて自分の映画を劇場のスクリーンで見たこと、

初めてお客さんと一緒に自分の映画を見たこと。

初めてづくしの、記念すべき夜でした。

 

ワールドプレミア当日。

『BEYOND BLOOD』の上映に立ち会うべく、

滞在先のアパートメントからPradoに

向かって歩いていき、

ドキドキしながら最後の角を曲がると、

劇場があるはずの場所には誰もおらず。

うへ、こりゃ最悪な状況じゃないですか?

と動揺していたら、

一本道を間違えていたことに気づき、

ようやく劇場に到着。

深夜にも関わらずお客さんの列が伸びていて、

多くのスタッフも待ち構えていて、

今思うと、あれが一番嬉しかった瞬間かもしれない。

 

その直後に、

この日『BEYOND BLOOD』の後に上映された、

『マーターズ』の監督パスカル・ロジェが到着し、

久々の再会をお互いに喜び、力強くハグをしたのでした。

 

上映前に壇上に立ったときは、さすがに少し緊張しました。

スペイン語も少し交え、英語でスピーチ。

話す内容はなんとなく頭の中に準備していたので、

問題なく言いたいことはすべて伝えることができました。

そして、ここで観客の皆さんのありがたい拍手を体験して、

拍手が持つパワーと偉大さに気づかれた僕は、

拍手に対する概念が大きく変わりました。

 

パスカルも僕の後に壇上に立ち、『BEYOND BLOOD』で

フレンチホラーを題材として取り上げたことに対し

感謝の言葉を述べてくれて、

近くに座っていた観客のスペイン人女性が僕の顔を見て

笑顔で拍手してくれて照れくさかったりも。

 

自分の映画のワールドプレミア以外にも、

数多くの熱狂的なジャンル映画ファンがつめかけた

映画祭の盛り上がりと同様に、味わい深い

カタルーニャの歴史的な街並み

海岸沿いの美しい閑静なリゾート地の風と空気、

オレンジ色の陽光も鮮明に覚えています。

あれは、フランスのカンヌよりも美しかった。

 

滞在期間中は、毎朝、海岸沿いを

ゆっくり歩きながら、朝陽と潮風を感じながら、

30分ほどかけてメイン会場まで歩いたのですが、

あれは今まで体験した中で一番美しい、

朝の散歩でした。

 

あと、一瞬ですが、シッチェスでは

女優のキーナン・シプカにも会いました。

「サブリナ:ダーク・アドベンチャー」の

プレミアがシッチェスで開催されたのでした。

 

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シッチェスでは一週間ほど過ごし、その後、

10月下旬には、ベルギーの美しい古都ブルージュで

行われた、こちらもヨーロッパでは有名な

レイザーリール映画祭で、

『BEYOND BLOOD』は上映されました。

 

上映前に、フランス語も少し交え英語で挨拶したのですが、

「ブルージュでは、ほとんどみんな英語が話せるんだよ」

と、後でプログラマーのパトリックに言われてしまいました。

最初に言ってよ。

 

ここでは、映画祭用にカメラの前で20分ほど

インタビューを受けました。

なかなかリラックスしながら、楽しく英語で受け答えできたかなと。

 

初めてのベルギーでしたが、

僕は滞在していたブリュッセルで、誕生日を迎えました。

ベルギーはワッフルが死ぬほど美味しいので毎日食べてました。

 

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その後翌年1月に、フランスの北東部ボージュの

雪山で開催された、

前身のアボリアッツ時代を含めると46年という

長い歴史を誇る、シッチェスと並ぶ権威である、

ジェラルメ国際ファンタスティック映画祭

フレンチプレミアとなりました。

 

フレンチホラームーブメントを題材として

取り上げた『BEYOND BLOOD』を

一番届けなければいけない場所に、

持ってこれたのです。

 

ジェラルメでは計3回の上映が行われ、

僕は最初のスクリーニングの前に、

メインの出演者のザヴィエ・ジャン、

ジュリアン・モーリー、アレクサンドル・バスティロ

と一緒に登壇し、少しフランス語も交え

英語で挨拶をしました。

 

その前に、この日、映画祭の審査員やゲスト一行は

この街の大きな財源の一つである

スキー場の横の広々としたレストランで行われた

豪華なビュッフェランチに招待されました。

 

美味しい食事に舌鼓を打ったのですが、

僕は舞台挨拶も控えていたので、

食べ過ぎないように気をつけました。

フランスはデザートが美味で、この日も美しい

デザートの数々が待機しており、

死ぬほど食べたかったのですが、

泣く泣く我慢しましたね。

 

ランチの後は、プレス向けのフォトセッションが

行われたので、待ち時間の間にみんなで

雪合戦をしたのも良き思い出です。

 

フォトセッションは仕切りが大変適当で、

なんとなく呼ばれてなんとなく10人ぐらいの

カメラマンに写真を撮られました。

巨大な雪だるまを背景に。

あのルーズな感じもフランスならではで、

不思議な感じで面白かったです。

 

写真撮影が始まると、ザヴィエが大好きなニホンゴ

「カンチョー!」と叫びながら、

嬉々として両中指を立て、

ジュリアンとアレックスも後に続いたので、

僕はフランス語でカンチョーって言ってやろうかと

一瞬思ったのですが、そんなワードは知るわけもなく

(そもそもあるのだろうか?)、

結局普通に真顔と笑顔でポーズを取ったのでありました。

 

その後、車で会場に向かい、いよいよ上映前の舞台挨拶。

ヨーロッパは、例えばシッチェスやレイザーリール、

あとカンヌなどもそうでしたが、

北米やイングランドのように、

上映後のQ&Aという習慣がないのですよね。

 

この第一回目の上映には200人近いお客さんが

入ってくれて、上映後にはフランス人の観客から

素晴らしい反応の数々を耳にすることができて、

本当に感無量でありました。

その後の二回の上映も、ほぼ満席だったそうです。

 

ジェラルメでは、功労賞を受賞した

イーライ・ロスや怪優ウド・キアーに会い、

ゲストとして招待されていた

他の作品の監督たちともディナーを共にしたり、

有意義な時間を過ごし、

多くの新しい友人ができたのも大きな収穫でした。

 

ここでは初めて、地元メディアのインタビューを

何本か受けました。

これまでは取材をする側の人間だったので、

立場が逆転して、自分の映画について語るのは、

非常に刺激的で面白い体験でした。

 

ジェラルメは、映画祭の手厚いおもてなしも素晴らしく、

スタッフもみんなフレンドリーで、よくサポートしてくれて、

とても快適で美しい時間を過ごすことができました。

いく先々で、僕の映画への思いや、温かい言葉を

かけてくれた映画祭のお客さんたちも最高でした。

 

日本では昨年8月に限定公開され、今年DVDが発売された

『BEYOND BLOOD』ですが、今後は北米などさらに

多くの国でお披露目になり、リリースされることを祈ってます。

 

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最後に、『BEYOND BLOOD』に

出演してくれた監督たちの近況ですが、

アレクサンドル・アジャはメラニー・ロラン主演の

ホラー『O2』の撮影がフランスで終わり、

現在ポストプロダクション中。

 

パスカル・ロジェはクライムミステリー

TVシリーズ「They Were Ten」が完成、

7月にドイツで放映されました。

『REVENGE/リベンジ』の主演マチルダ・ルッツも

出演してます。

 

ジュリアン・モーリー&アレクサンドラ・バスティロは、

都市伝説ホラー『Kandasha』が完成し、

先週シッチェスでワールドプレミア上映されました。

さらに、湖の底に沈む廃屋を舞台にした幽霊ホラー

『The Deep House』は、現在

ポストプロダクション作業中。

 

ザヴィエ・ジャンは、現在Netflixの作品を撮影中。

 

『RAW 少女のめざめ』監督のジュリア・デュクルノーは、

待望の最新作『Titane』の撮影に間もなく入ります。

また、来年1月にプレミアとなる

シャマラン製作の「サーヴァント ターナー家の子守」

シーズン2の最初の3エピソードも監督してます。

 

そして僕は、昨年から準備を進めていた、

今年の春撮影予定だった約20分の

ショートムービー(劇映画)を来年には

カナダかフランスで撮影する予定ですが、

新たにもう一本別の短編の脚本を書き上げたので、

これも続けて撮るつもりです。

そして、長編の製作へとつなげていかねばです。