フランスの芸術的マスターピース『燃ゆる女の肖像』、いよいよ12月に日本公開! | Just for a Day: 小林真里ブログ

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映画監督/映画評論家 小林真里(Masato Kobayashi)です

僕が2019年のベストムービーで1位に選出しました

セリーヌ・シアマ監督の『Portrait of a Lady on Fire』

(原題:Portrait de la jeune fille en feu)が

『燃ゆる女の肖像』なる邦題で12月4日に日本公開されます。

 

 

 

18世紀のフランスを舞台に、

結婚を間近に控えた貴族の女性と、彼女の母親から

肖像画を描くため雇われた女性画家の出会いを

軸にした繊細でエモーショナルな美しいドラマであり

ラヴストーリーです。

 

無駄を一切排したミニマムでストイックな構成で、

映像も構図も緻密で計算されており、

美しくアーティスティックなコスチュームも

デザインも、ライティングも

こだわり抜いていて、

ひたすら芸術的でエレガントで脱帽です。

 

固定カメラによる「静」と被写体の動きを

ダイナミックに見せる「動」のコントラストも

卓越しており、特にクローズアップで主演2人、

もしくは2人を交互に映すショットも

名画的な輝きを放っています。

しかも、音楽が全編ほぼ皆無なのが

サプライジングですが、これが実は映画の

世界の空気を浮き彫りにして、非常に効果的。

 

なにより、監督のビジョンを具現化した、

主演2人のケミストリーと相性、

演技のパワフルなぶつかり合い、コンビネーションが

この映画が成功した大きな要因の一つであります。

 

アデル・エネルは、フランスを代表する名女優

というだけでなく、世界レベルで見てもトップクラス。

美貌の長身でワイルドで自由奔放な印象ながら

(去年のトロント国際映画祭のQ&Aを見て)、

難易度の高い繊細で細やかな演技をスマートに

華麗に、切れ味鋭く魅せつけてくれます。

本当に器用な女優ですが、この人の目力は強力です。

この映画のラストの彼女の名演には鳥肌が立ちますよ。

 

僕は昨年9月にトロント国際映画祭で初鑑賞し、

その後11月にパリの映画館で観て、今年2月に

ハリウッドのアークライトシネマの伝説的なドームでも

鑑賞、さらに日本のマスコミ試写でも

拝見したばかりで、現時点で計4回スクリーンで観ました。

 

見るたびに発見があって、

まるで僕がこよなく愛するマーク・シャガールの

幻想的な名画「I and the Village」のような

ディープで多くを語りかける、愛すべき作品です。

 

https://gaga.ne.jp/portrait/