Prisoners | Just for a Day: 小林真里ブログ

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映画監督/映画評論家 小林真里(Masato Kobayashi)です

現在、全米1位のヒュー・ジャックマン&ジェイク・ギレンホール主演の

スリラー『Prisoners』鑑賞。


【100%】過剰なライター/翻訳家 小林真里の rock n' roll days


なんと上映時間は156分!

意外性のある、ヘヴィで緊迫感に満ちた骨太クライムムービーでした。

なかなかの傑作かと。


感謝祭の日に幼い娘を誘拐された父親と、同タイミングで娘が消えた

その隣人+知恵遅れの容疑者+復讐に燃え一線を大きく超える親父

+不可解なシリアルキラーの死体+謎のキーワード(迷路)+不良刑事

という多層的構造が出色な作品。


拷問シーンが壮絶で、場内からは悲鳴が上がっていたのですが、

このショック演出は『ソウ』『ホステル』の影響を受けているようで

ちょっと違うな、それよりも『ウィンターズ・ボーン』だなとか思っていたら、

カナダの衝撃作『灼熱の魂』の監督の新作でした!

なるほど、壮絶な皮肉を過剰までに痛烈な痛みを込めてドラマティックに

描く手法は確かに同じ。家族の物語という根底の主題も。

そこに、猟奇的事件とミステリアスなキーワードを要所で匂わす新機軸。


『96時間』や『ラブリーボーン』と物語の出発点は同じですが、

ただのリベンジともスーパーナチュラルとも違う、

入り組んだ硬質サスペンスとドラマが変化球で飛び込んできます。

オスカー俳優やオスカー・ノミニー俳優のアンサンブルが豪華極まりないのですが、

演技合戦も見事で、特にジェイク・ギレンホールが圧巻。

あと、容疑者役のポール・ダノが宮崎ツトムっぽかったです。


良質とはいえ、こういうダークな映画がしっかり1位になるアメリカは

まだまだ捨てたもんじゃないなと思いました。


夜は、待望のJulia Holterのライヴをブルックリンで初体験。

もはやジャンル分け不可能な唯一無二の世界を生でしっかり体現。

美しい静寂と混沌が支配するステージ、伸びのある魅惑的なヴォーカル、

ウィットに富んだ饒舌なMC、まるで異世界にいるようでうっとりしました。

しかも、12曲で90分もプレイしてくれたし。

グライムスもシンパする歌姫、余裕のパフォーマンスに恐れ入りました。