Into the Wild Racer | Just for a Day: 小林真里ブログ

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映画監督/映画評論家 小林真里(Masato Kobayashi)です

 昨日は久々に試写を三本観てきました。

まずは『イントゥ・ザ・ワイルド』


into


監督ショーン・ペンだし、話が話だけに

ヘヴィで悲痛な作品に仕上がっているのではあるまいか?

と、若干懸念があったのですが、原作の骨子を

うまく抽出して、すっきりとしたタイトで理路整然とした

映画に仕上がっているではないか!


全篇にかかるエディ・ヴェダーの歌は画面から溢れ出る

ほどに自己主張強すぎで、そこはちょっと濃かったですし、

章立てにしないほうが良かったとも思うのですが、

2時間半であのノンフィクションの原作をよくここまで

まとめきったなあと感服しました。

最初は2時間半は長尺だな、とやや及び腰だったのですが、

全然長さは感じなかったです。

ヴァラエティに富んだキャストも良かったですね。

特に、クリステン・スチュワート、ヴィンス・ボーン、

そしてハル・ホルブルック。


しかし主演のエミール・ハーシュは、無精ひげを生やしてると

ジャック・ブラックに似てるな、と思いました。


wild

wild

jack

(『オレンジカウンティー』のときのジャック)


今日の結論。

ジャック・ブラックは痩せたら男前。



二本目。ターセム(『ザ・セル』)の最新作、

『落下の王国』


fall


これはある意味衝撃の問題作ですね!
マシュー・バーニーもかくやのビザールでクレイジーな
映像マジックは、ショッキングですらありました!
狂ってます!(で、ちょっと笑った。いい意味で)


僕はターセムの色彩感覚と美的センスが
大好きなんですが、ここまで絵画的な美しいアートを
映像で具現化できる人もいないのでは?と思います。
シュールですが、それ以前にカラフルで力強く、美しいのです。
そういう意味でも、ゴージャスで贅沢な作品だなと思いました。
ストーリーがただ、映像に比較すると弱いというか、
もう少し意外性があったら完璧だったのに、
と思いました。

fall


もちろん、現実とお話の世界(パラレル)がリンクして、
『パンズ・ラビリンス』的なファンタジー要素を
構成していたのは興味深かったです。

最後はやはり子供のピュアな目線というフィルターを
通して美しく着地させたかったのでしょうし、手がたく
良心的な作品に仕上げたなと感じました。
サイレント映画(チャップリン)が映し出されるラストも、
『ニューシネマ・パラダイス』的な、監督の映画への

愛情が感じられました。


そういえば、劇中お猿さんが銃弾に倒れるシ-ンがありました。

どうしようかと思いました。


ラスト。今日のエミール・ハーシュ二本目、

『スピード・レーサー』


racer


オリジナルのアニメに可能な限り実写で近づけようとして

あのCGグラフィックが全面に押し出された、人間は

脇役的な作りになってしまったのでしょうが、そうすると

やはりどこまでもライトで、まるっきりゲームの世界

なんですよね。


レースのシーンとか、ルール無用なところもある

のですが、スリルないですからね・・・。

オリジナルの重要なテーマである家族愛という部分は、

キャストも適役でそれなりにドラマチックに仕上がっていた

とは思うのですが、どこか物足りないという。

『マトリックス』よりも『チャーリーとチョコレート工場』

寄りのファンタジーな世界観でありました。

でも、良質なファミリー・ピクチャーということでいいのでしょうが。

劇中、お猿さん(チムチム)がうんこを投げつけるシーンがありました。


この日はエミール・ハ-シュと猿の一日だったということで!