『バベル』『ボラット』その他最近観た映画10連発!! | Just for a Day: 小林真里ブログ

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映画監督/映画評論家 小林真里(Masato Kobayashi)です

気がつけばニューヨークに帰ってきて一週間が経過!
最近氷点下の寒さでいい加減手袋でも買おうかと
思っておるところです!軍手でもいいんだけどね!

さて、その後の僕のニューヨーク・ライフですが、
相変わらず生き急いでいる感じで突っ走って
おりました!
もうね、やけに忙しなくて、最近タイミングを逃して
一日一食しか食事してないですから!
そんな一週間の足跡をまとめてみよう!!

10日 『Inland Empire』鑑賞(前回の日記参照)

11日 『バベル』鑑賞。

『21グラム』イニャリトゥ新作ということで、
期待せずにはいられなかった一本。
これが、悪いわけがない。
しかし、モロッコ、メキシコ、東京と舞台が世界に
広がった分、スケール感は確かに大きくなったが、
群像劇としての意味合いや共時性の奇跡のような
ものは薄れてしまったのが残念。

「そんな偶然あるわけないじゃん」という疑問を
強引にねじ伏せる想像できないようなドラマやトリックが
群像劇の肝なわけだが、『バベル』には群像劇の必然性が
感じられないような三つのストーリーの交差の仕方だった。
ただ、一貫した「親と子の絆」というテーマは
ずしりと伝わってきた。

東京のパートがこの映画の一番の見せ場であり、
菊地凛子は評判以上に凄いことになっていたので
本当にびっくりした。鬼気迫るものがあった。
この映画で一番強烈なインパクトを残している。
ただ、女子高生役でブルマ姿でバレーボールやってるのは
かなり無理があったと思います!

ケイト・ブランシェットの見せ場は少ないのだが、
一瞬の演技で映画の空気を変える力、あの吸引力には
深く心を動かされないわけにはいかなかった。
今、最高峰の演技力と美貌を兼ね備えた女優だ。
ブラッド・ピットは、いつも同じなのはどうしてだろう。

生と死、そして愛と憎悪という相反するテーマで描いた
崇高で重層的なヘヴィな群像劇、『21グラム』の完成度が
異常に高すぎただけに、もはやあれを越える作品を
創ることは不可能だったのではないかと感じた。

それでも『バベル』は十分心に響く作品だったし、
余韻に浸ったが。

そして凛子は今ニューヨークに住んでるらしいよ。
いつ会えるのだろう?
(勝手に会う気満々)

夜。

デヴィッド・リンチのディスカッション&サイン会。
遂にリンチとご対面。
こちらのレポートは、ほぼ完成済み。
でも、長すぎてわけがわからないリンチ・ワールド
みたいなことになってるので、もう少し寝かせる。

12日 ノンストップで映画三本ハシゴ!!!

■『Pan's Labyrinth』。

傑作。最高。早くも今年のNO1かも。
残虐にして美しい大人のファンタジー映画。
今度、じっくり書きます。

■『アポカリプト』

マヤ文明末期の部族たちの血で血を塗る抗争。
ピラミッドの上で内臓がはじける!
首がもげる!
人体がばらばらに!
そして死体の山が!!
Maxマッドなメルギブの漢の蛮性が炸裂する
スケール感溢れる超残虐切株映画!!
野蛮血みどろの2時間!
場内は悲鳴と拍手の嵐!!
全篇セリフはマヤ語!役者たちの面構えも最高!
アクションだけでなくドラマも堅実で骨太!
こういう映画が初登場1位になるアメリカ、万歳!!

■『Black Christmas』

はい!『暗闇にベルが鳴る』リメイクです!
猟奇殺人あり!カニバリズムあり!近親相姦あり!
屋根裏に潜むあん畜生の好物は人の目玉なんですよ!

以前日記で書いたように、昨夏テストスクリーニングで
観ましたが、劇場完全版はオープニングからエンディング
から、随分シーンが追加されていてびっくり!!!
オチ、違ってたし!
話の交通整理がスムーズにいき、不可解な部分も
分かりやすくなっており、さらにスケート靴で
女子大生の頭が吹っ飛ぶナイスなシーンが追加されていた!
でも、説明過多な気もしたので、あと10分削れば
傑作だったのになあ!
それでも、去年の『ファイナル・デッドコースター』
なみの疾走感とスリルがあって最高!
満席の場内は絶叫と爆笑の渦でした!!!

そんな血まみれで切株な一日。

13日 映画二本ハシゴ

■『Little Chidren』

トッド・フィールズが描くドラマの強力な
インテンスは、『イン・ザ・ベッドルーム』に続き
今作でも健在。
最後の最後まで続く、あのスリルと緊張感は強烈である。
ただの不倫物語ではなく、そこにシリアスで扱い難い
(タブー)社会問題を直球で織り交ぜてくるあたりが流石。
主演はケイト・ウィンスレット。
共演に、ジェニファー・コネリー。

■『ボラット』

確かに、これはおもろい。
でも、騒がれる前に観てたら、もっと面白かったのだろう。
『オースティン・パワーズ』の一作目を観たときと
同じような後味。
これはやはり、字幕付きで観ると魅力が半減するし
無理があると思うので、日本公開が難航しているのも
理解できた気がした。
サシャ・バロン・コーエン演じるボラットの
その英語の妙な発音やリズム、そしてタイミング
といった、耳で楽しむ要素が強いコメディだからだ。

14日 

■アルモドバル新作『Volver』鑑賞。

終盤までは悲痛な事件が巻き起こりつつもコミカルに
描ききり、一風変わった家族ドラマだなあ。
もう一つの『オール・アバウト・マイ・マザー』かな?
なんて呑気にかまえていたら、最後にちゃんと
ヘヴィな爆弾を仕掛けてくるあたりが流石に世界の
アルモドバルだ。
『オープン・ユア・アイズ』から何年が経過したの
だろうか?ペネロペ・クルスは、存在感確かな
名女優に成長したものだ。

映画鑑賞前。

場所はLower Eastside。
1stアヴェニューと2ndストリートの角にあるカフェで、
コーヒーを飲まない僕は甘いホットチャイを飲みながら
読書をしていた。

一息ついて目の前を見ると、マット・ディロンがいた。
買ったばかりのコーヒーにミルクを入れていた。
あ、マットだ。
そほど驚くこともなく、目が合ったので軽く挨拶して、
でも声はかけなかった。
僕も一応ニューヨーカーなんで、セレブリティがいても
そう簡単に声はかけませんよ。えへん。

しかし、くたびれた格好をした、いいおっさんであった。
ちょっと太った??
随分と分厚い本を持ちながら、彼はHouston st.のほうに
消えていったのであった。

夜。

今年一発目のライヴ。Earl Grayhound。
venueは、ブルックリンはウィリアムスバーグに
最近出来た、Glasslands。
サザンロックを基調としたブルージーでヘヴィな
ロックンロールの塊。ツェッペリンなみのグルーヴ。
一昨年ぐらいに、来年の最大の新人だ!!
みたいなことを日記で書いたが、年末のTIME OUT誌
のBEST 10に選ばれるなど、ようやく人気が高まってきた。
この日のライヴも、日曜の深夜なのに300人以上の入り
で大盛況!!
ドラマーが交代して(バスドラのサイズが恐らく世界一)、
さらにサウンドに厚みが出て、バンド全体のサウンドが
さらにビルドアップされていて仰天。
これは、今後も目が離せない。
会場で、無事友人のマーセラス・ホールに会う。
元気そうだったなあ。

夜、3時半に帰宅。

15日 映画二本ハシゴ。

■『Primeval』。

「実話をベースにしたシリアルキラー映画」
というキャッチコピーとポスターのビジュアルに
乗せられて、即座に観ることを決めた作品。
しかし、観てみるとなんとキラーは人間じゃないことが
前半で発覚!

なんだよ殺人鬼が暴れ回る映画じゃないのかよ!
と、一瞬肩を落としたもんだが、
「アフリカを舞台にしたU.M.A.+切株映画」という、
実はナイスな組み合わせの残虐パニック・ムービー
だということが分かり、元気回復!
しかも参加型ムービー!観客が片っ端からスクリーンに
突っ込みまくりでみんなで大爆笑!!

アメリカのオーディエンスとこの環境は、たまに
シリアスな映画でも遠慮なく喋っていたりもするが、
妙な臨場感があって迫力満点でつくづく最高!!

■『Stomp the Yard』

ティーンのブラザー中心に初日から劇場が激しく
混雑していたが、予想通り初登場1位を記録した
スポ根感動ドラマ。
しかもちゃんとゲットー出身の主人公に降りかかる
ヘヴィな事件が縦糸になっていたりするわけで、
ちゃらちゃらした能天気な青春映画になっておらず、
彼らの葛藤やリアルな生活が反映されているのが憎い巧い。
トーナメント・ファイナルでのド迫力の熱い
ストンプ・シーンは圧巻。
カメラや映像に、金かけまくってます。
2時間、飽きず。ストーリーも、泣けた。

夜。

Wheatus live @ Norhsix

イギリスを中心にUKでは人気のひねくれロック・バンド。
しかし地元ニューヨークは勿論、アメリカではほぼ無名。
サウンドに神経質だったヴォーカル&ギターの
フロントマンは、アルバム以上にヴォーカルの幅が広くて
巧くてびっくり。

16日 『Smokin' Aces』test screening

テスト試写と言っても、これは完成版。
エンドクレジットもついてたし。

『ナーク』の監督、ジョー・カーナハンの
群像劇タッチのサスペンス・アクション!
今の時代の『トゥルーロマンス』と言うか。
そこまでのオリジナリティはないのだが、
『ラッキー・ナンバー7』よりはクオリティは高い。
キャストはベン・アフレック、ライアン・レイノルズ、
レイ・リオッタ、アリシア・キーズ、アンディ・ガルシア
と、豪華なんだか地味なんだか。

後半のアクション・シーンは豪快で結構無茶してます。
しかし、ライアン・レイノルズが最終的に主役に
なるのだが、彼はいい役者とはいえ顔が
ベイビーフェイスなので、いくら無精ひげを生やして
いても、ハード・ボイルドな映画の主役級には
そぐわないなあと思って、ちょっと勿体無かった。
ベン・アフレックと役柄が変わっていたら、また作品の
締まり具合も違ったのだろうに。


というわけで長くなってしまいましたが、
これからもこういう日々が続くわけです!
明日からは夜はほぼ毎晩ライヴだし!!
消化しなければいけない映画もまだあるし!
新作もどんどん封切られていくし!!
どうなってんだニューヨーク!!!