今使っている教科書だと、2次方程式の解の公式は、登場しません。解の公式を導き出す途中のプロセスが数学の苦手な生徒には理解しにくいことが大きな原因と思われます。
いまの指導要領だと、「2次方程式の解の公式」や「解と係数の関係」は、高校1年生になってようやく教わる内容になってしまいました。数楽者は、この両方とも中学で習いました。数学の先生からは、まるで天から降ってきたかのように解の公式を与えられ、具体的な2次方程式に対して公式をどう使っていけばよいかだけを訓練させられた記憶があります。
ところで、2次方程式の解の公式を導き出す考え方を正方形や長方形の面積をもとにして発見した数学者がいます。9世紀頃のアラビアの数学者アル・クワリズミという人です。このアル・クワリズミが書いた代数学の本に次のような問題があるそうです。
「ある数の平方(2乗)と,その数の10倍との和が39に等しいという。ある数はいくつか?」
ある数をχで表してこの問題文の中のある数χについて式をつくってみると、
χ×χ+10×χ=39・・・①
になります。
アル・クワリズミは、χを正方形や長方形の辺の長さに置き換えて、次のような図の助けを借りてこの問題を解決しています。
この図をもとにどのようにこの問題を解いたか説明します。
左辺のχ×χは1辺がχの正方形の面積だと考えます。また、10×χは縦横が10とχの長方形の面積だと考えます。すると①式は、
「正方形と長方形の面積の合計が39になる」
という意味だと考えることができます。
この面積が10×χである長方形の10の辺を半分(10/2=5)ずつに切り分けたあと、正方形の縦と横にχの辺を合わせてくっつけます。
長方形の方を半分に切って並べ直しただけなので、面積は先ほどと変わらず39のままです。
この図形の欠けた正方形の部分(1辺が10/2=5)をくっつけると、面積が5×5=25だけ増えることになり、全体は1辺が(χ+5)のひとまわり大きな正方形ができあがります。いまできた大きい方の正方形の面積の関係を等式で表すと、次の関係式になります。
(χ+5)×(χ+5)=39+25
(χ+5)^2=64 ※「^2」は「~の2乗」という意味です。
二乗して64になる正の数は8ですから、χ+5=8になります。ここからχ=3を導き出したわけです。(二乗して64になる数は-8もありますが、9世紀頃のアラビア人は負の数を解の仲間として認めなかったのかもしれません。)
解の公式を導き出す過程の指導では、「χの係数の半分の二乗を両辺に加える」操作がでてきます。なぜそのようにするかの変形の必然性や意味を納得することができない生徒が出てきます。解の公式を導き出す過程と面積図を対比させながらイメージ化して理解させていくのが分かりやすい説明だと思います。
アル・クワリズミが考えたように、式の関係を図形の面積に置き換えて考えるという発想をこの場面で生徒に十分鑑賞させ味わわせおくことは、難解な問題の解決法や新しい知識の発見法を教えることになるのではないかと思います。数学教師は、授業を通して知識だけではなく、ときに知識の生み出し方をも同時に教えていかなければならないのだと思うのです。
参考文献:「授業を楽しくする数学の話」 片野善一郎 明治図書1978
- 上垣 渉
- 算数・数学授業を楽しくする数学史の話
- 上垣 渉
- 続 算数・数学授業を楽しくする数学史の話
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