ここ最近、急に「発達障害」という題名のつく書籍が多くなった。
例えば「発達障害と向き合う・・・」「発達障害の・・・」「●●●な発達障害」。
このような書籍は良いと思うが、中には「予防」とか「治す」とか、または「新たな」などというものも多くなってきた。

これには憤りを感じる。
例えば、発達障害が後天性のものであったとしたら、それは親の不注意やシツケなどの関係も出てくる。
愛情不足とか・・・


先日、2歳の子どもを育児ネグレクトして虐待させた事件があった。
我が子よりネコが可愛いという理由で、子どもに食事を与えていなかった事件である。

亡くなった子どもだけでなく、長女も栄養不足により脳が萎縮していたらしい。
これはあくまで親の責任による後天性のものであり、これが起因して何か障害を負ったとしたら、これは決して発達障害でない。
ただ、虐待によって起きる発達障害もあると言っている方もいる。

ただし、これについてはボクも勉強不足なので、これ以上は割愛する。


さて、ここから本題・・・。

少し専門的に書くけど、そもそも自閉症を含む発達障害はアメリカ精神医学会が中心で、厚労省もICD-10に準じている。またDSM-IVの診断手引きが基になり日本の療育体制もできているんですよね?

なのに「新たな発達障害」というのはおかしい。


日本では一番正しい認識としては、長野県精神保健福祉センターが発刊した「発達障害支援ガイドライン2008」がとても分かりやすい。


発達障害支援ガイドライン2008
http://www.pref.nagano.jp/xeisei/withyou/hp_dd/hattatsu_2008.pdf


この資料は2007年厚生労働省資料をもとに作成され、 ICD-10研究用診断基準に基づき、アメリカ精神医学会の診断基準DSM-Ⅳに基づいている。現段階では、これ以外の「新たな発達障害」などは日本独自の個人が断定しているに過ぎない憶測である。


ただ、発達障害の分野も研究の初段階であり、具体的にコレ!と断定できるものは無い。だから悪く考えれば浅知恵で専門的意見を振りかざし、専門家のフリする輩も多い。要するに自分がリードマンになりたいからだろう。でも残念ながら、そのような意見に対しても「間違いである」と断定することもできない。


そして怖いことは、断定が無い事による既得権益の問題。発達障害という言葉だけ先行し、そこに巣くう発達障害ビジネス。中には「最高のビジネスチャンス」と考えている者もいる。

間違った知識が書籍となって万人に広まること。結果的に発達障害という言葉だけ先行してかなりの誤認識が広まってしまっていることは事実。当事者の親としてはこの正邪先見性の目を持つ知識が必要だと思う。


ちなみに発達障害が起因する、適用障害などは後天性の二次障害(精神障害)であり、これは予防できる。また大人であれば、通常の心療内科で診療も可能である。

しかし、これはあくまで発達障害そのものを予防したり、治したりすることとは全く違う。


これについては埼玉県自閉症協会の会長がホームページで「ごあいさつ」の中で書かれている。

http://as-saitama.com/


非常に重要な文面なので、代表的な部分だけ引用させて頂く。


脳機能障害である発達障害に完治・予防の方法は無く、二次障害(不登校、引きこもり、鬱、強度行動障害など)は防げても、障害そのものを消え去ることはできません。もちろん、昔ながらの子育てをすれば治るということなどあり得ないのです。
「障害を完治させなくては!」と考えてしまうと、障害を抱えている子どもと親は追いつめられてしまい、その結果、二次障害を抱えることにもなります。



これについては昨年7月に埼玉県知事が県議会で答弁した内容について、埼玉県知事に文書を提出している。

そして、その取り組みが評価され、今年度から発達障害に対する予算が1億9千万円増額された。

そして、その費用の中で、埼玉県自閉症協会は、埼玉県から正式に委託され、ペアレントメンター養成研修を行っている。


本当の障害者団体などはこのような取り組みを黙々と行って、理解と正しい認識を広めようと努力している。

故に、いま言われている「大人の発達障害」とは、この二次障害の事を指していることが殆ど。



ということでボクは広汎性発達障害の息子を抱える父として、この二次障害を防ぐ努力と取り組みをしている。だからアメリカ精神医学会の診断基準DSM-Ⅳを全く無視した考えによる「発達障害は治る」という考え方は理解できない。


最後に先週ボクのTwitterで40人程の方がリツイートしてくれた、ツイートを書いておきます。


『大人の発達障害に関する書籍を多く見かけるが、それを読んだ人たちは「自分にも当てはまる」と誤診が多い。心理的に考えれば、その類いの本を読もうと思った時点で「自分はそうかな?」と疑いを持ってるから。占い本のような感覚に近いかも。これは危険。キチンと公的機関で診療するべき。』



発達障害は根性論で治るものではない。