今回は、「ミクロ経済学の力」(神取道宏著 日本評論社)をご紹介します。


紀伊國屋書店で鳴り物入りで売られており、アマゾンレビューも星5つばかりだったので、興味本位に買ってしまいました。


ザッと読破した後の感想としては、次のようなものです。



確かに、太文字などが多く使われており、重要部分を示す工夫などがなされているし、文章が話し言葉のようになっているのでゆっくりと読んでいけばわかりやすい。


情報とゲーム理論の部分がやたらと多く、Ⅰ部とⅡ部で構成されている本書のⅡ部が情報とゲーム理論となっており、好きな人にとっては面白い。

(私もゲーム理論の本は何冊か読んでおり、けっこう好きな部類です)


最初のあたりから、突然、偏微分と立体図形が出てくるので、初心者は最初の部分で挫折する恐れがある。

もっとも、じっくり読んでいけば理解できるようになっているので、真面目にミクロ経済学をモノにしようという独学者にとっては親切だ。


数式が案外多いので、数式アレルギーの人には向かないかも。



比較するために、世界的に有名なミクロ経済学の教科書である「入門ミクロ経済学」(ハル・R・ヴァリアン著 勁草書房)を読んでみたところ、次のようなことがわかりました。


最初は2次元の世界で説明されており、初心者としては入りやすい。


各章末に「まとめ」があるので、それだけ読んでも全体像がわかる。


行動経済学、オークション理論などまで章が割かれておりバランスがいい。


太字やカラーがない白黒なので、イメージが残りにくい。


なんといっても、翻訳書なので前著のような巧みな言い回しができない分面白みがない。



このように比較して見ると、あくまで私見ですが、速く全体像をつかみたい人は、後者「入門ミクロ経済学」(おそらくマンキューの方が読みやすいと思いますが、そちらまで買う気力も余力もありませんでした)を読んだ後で、前者「ミクロ経済学の力」を読んだ方がいいでしょうが、じっくりしっとりと味わいながら学んでいきたいという人にとっては「ミクロ経済学の力」のほうがいいでしょう。


私は、カラオケ大親友であり経済学を教えれば右に出る者のいない石川秀樹先生のDVD講義を聴いたことがあるので、いずれの本も理解はできますが、「ミクロ経済学の力」は、短時間でマスターするには初心者にとってハードルが高いでしょう。

(そういえば、最近、石川先生とのカラオケバトルをやってません。頻繁にやっていたときは2人で4時間くらい歌ってたものでしたが・・・)


間違っても、ビジネス書感覚で買わない方がよろしかろうと思います。

じっくりしっとりとミクロ経済学を味わいながら勉強しようと考えている人にとっては、素晴らしい工夫がなされた本だと思いますが・・・。

(具体的には、毎日少しずつ読んで1ヶ月くらいの期間を考えているならお勧めです)


余談になりますが、昔、顧問先の若手社長や専務を集めて勉強会をやっていました。

経済学部卒業の人が何人かいたので、

「復習の意味で、サミュエルソンの経済学でも題材にしますか?」

と提案したら、どなたもサミュエルソンの名前を知りませんでした。

あまりに驚いたのでケインズの名前を出すのを止めましたが、卒業した学部の著名人の名前くらいは知っておかないといけないと感じました。

(本を読んだかどうかは別として)


ミクロ経済学の力/日本評論社
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