喫茶 ニワトコノミ
『先輩のお店』
※ 今回も“物語風”の紹介ですので、お店のメニュー&インフォメーション以外はフィクションになります。
高校の一年先輩が市内に店を開いたって噂を聞いた僕は、仕事の休みの都合をつけて訪れる事にした。
決してコテコテの体育会系と言う訳ではなかったし、県大会予選2回戦敗退の常連だった弱小部であるが、
毎日の練習だってそれなりに厳しかったし、大会前にはみっちりとしごかれた間柄、彼是10年になるが、
今振り返ってみれば・・・あの頃、僕も先輩も若くて・・・思いっきり“青春”していたなぁ~~~!!!
高校を卒業した後の先輩の事は、たしか進学か何かで上京したって事くらいしか知らなかったし、
あの約二年の間、毎日のように一緒ににつるんでいたのに、僕自身、自分の事で精一杯だった
せいもあって、いつの間にか先輩が記憶の片隅にどんどんと追いやられて・・・いつしか・・・
だから、そんな先輩が10年ぶりに地元に戻って店を開いたって風の噂で聞きつけた僕は・・・
あの当時の熱い記憶が瞼の裏に蘇ってきて、何はさて置き、先輩の顔を一目見ようと・・・
喫茶 ニワトコノミ
喫茶・・・ニワトコノミ・・・これって、“庭と木の実”って意味だよね・・・?
たしかに、店の名前にぴったりのロケーションだけれど・・・それにしても・・・
先輩も、よくこんなロケーションに建つ一軒家を見つけたもんだよなぁ・・・
このすぐ外には民家が立ち並ぶ、曲がりなりにも住宅街の只中の筈だけれど・・・
入り組んだ細い路地をくねくねと入って、手前の白いアパートの前に車を停めて歩くと、
ほんの数十歩先に進んだだけなのに、まるで田舎の雑木林にでも迷い込んだみたいで、
・・・ここが僕が住んでいる市内の、しかも周辺には学校も建ち並ぶ住宅街だなんて!!
・・・まるでこの建物だけ、忙しない外界の喧騒に逆らっているみたいじゃないか・・・
・・・どちらかと言うと物静かで硬派だった先輩のイメージにはぴったりだけど・・・
そうそう、さっきの看板でも気になっていたんだけれど、“喫茶”って・・・やっぱり喫茶店の事か!?
自然や動物に興味を持っていた先輩らしくないなぁ・・・まぁ、月日は人を変えるって言うし、
でも、縁側から入るなんて珍しいし、まるでおじいちゃんの家に来たみたいで落ち着けるなぁ・・・
ここでスリッパに履き替えて・・・わぁ、可愛らしいスリッパ(・・・って言うのかな?)!!
ここは本当に先輩の店なのかな? あっ、すみません・・・僕一人なのですがお邪魔します・・・
※ ご指摘がありましたので記載しますが、スリッパではなくバブーシュになります
これは・・・なんてノスタルジックな光景なのだろう!!!
板敷の一応“洋室”みたいだけれど、漆喰のような塗壁に所々に節が目立つ色褪せた柱が伸びて・・・
僕がまだ幼かった頃、街の彼方此方で見られた・・・まるで昭和のアパートか平屋建ての風景じゃないか!
ほらっ、こっちにはちゃんと畳の間だってあるし・・・縁側から差し込む陽射しが心地良さそうだ・・・
本当に・・・ここは田舎のおじいちゃんの家と瓜二つだよ・・・益子の方ならまだしも・・・
益子って言えば・・・この空間の至る所に飾られたカップや茶器の、何て優雅で美しい意匠なのだろう・・・
思い出した・・・以前、先輩の部屋に遊びに行った際も、本棚や机に陶器のカップが大事そうに飾られていて、
「先輩、そんな趣味があったんですか?」ってツッコんだ事があったっけ・・・あの時は無言で微笑んでいたれど・・・
そうか、あの時からきっと・・・こんな感じの喫茶店(カフェって言うのかな?)を開くのが夢だったんですね・・・
いやぁ、先輩・・・それにしても、すっかり大人びて落ち着いた雰囲気ですね・・・
えっ、僕なんて・・・あの頃から変わっていない“やんちゃなガキ”ですよ・・・ハハ・・・
はい、久しぶりに先輩の元気そうな顔を見る事ができて、安心しました!!
今日はゆっくりと寛がせていただきます・・・このカウンター、落ち着けますね・・・
天井から釣り下がった裸電球のランプから放たれる、揺らめくような明かりの下にいると・・・
時が経つのも忘れてしまいそうだよ・・・まるで10年前のあの頃にタイムスリップしたみたいだ。
すぐ隣には先輩がいて・・・懐かしいなぁ・・・あの頃は、後先考えずに何でもできたのに・・・
今の僕ときたら、後先の事ばっかり考えてしまって・・・何もできず仕舞いじゃないか・・・
わぁ、先輩にこんな綺麗な奥様がいらっしゃったのですか・・・あの頃からモテたから当然かぁ・・・
へぇ~・・・でもって、この店のお菓子は奥様が作られているのですね・・・じゃあ僕も・・・
うわぁ~~!! 美味しそうなバナナケーキ・・・えっ、これ・・・卵も乳製品も使っていないのですかっ!?
まん丸のチョコタルトも美味そうだけれど・・・こっちもですか!!!
じゃぁ、折角なのでさっきのチョコタルトにバナナケーキも・・・120円!?
今どきカフェのスイーツが120円だなんて・・・先輩、10年前じゃないんですよ!!
そうですか・・・チビッ子にもお腹いっぱい食べて欲しいから、こんな良心的な価格設定で・・・
しかも、小麦粉、卵、乳製品を使用しない、身体にもとっても優しいお菓子なのですね・・・
さすが先輩・・・後輩想いは高校時代から全然変わっていませんね!!
じゃぁ、僕もそろそろ・・・表の庭を一望できるこのテーブルに座らせてもらいますよ。
お菓子はさっきショーケースで確認したから、ドリンクをメニューで・・・あれっ!?
シャンパンパーティー by Y's tea
こりゃ、驚いた・・・まさか、先輩の店でY's teaの紅茶が飲めるなんて!!
あの忌々しい震災の直前、ミチルくんが姪っ子のミヤの心を開いたあの紅茶・・・
スタイリッシュな口広のティーカップの縁に顔を近づけると・・・
華やかな芳しい薫りがふわぁ~っと顔全体に広がってくるみたいで・・・
爛漫な春の花を感じさせる芳しさに加えて、フレッシュな柑橘系の薫りと・・・
まるでキラキラと輝きながら立ち上ってくるような華やかな薫りが一つになって・・・
飲んだ瞬間の薫りも然る事ながら、リッチな薫りそのままの仄かな甘みとフルーティーな味わい、
上品なダージリンの風合いが、時間差でグラデーションしていくように長い時間伝わっていくようだ。
さすがミチルさんが絶賛していた“紅茶の伝道師”、Y's tea傑作中の傑作・・・栃木県内のみならず、
日本全国に沢山のファンがいるのも十分に頷ける、Y's teaのフラッグシップ・ティーなのだから!
そんな、Y's teaさんの華麗なシャンパンパーティーに今回合わせるお菓子は・・・
もちろん、玄関先のショーケースでとっても気になっていた・・・この二品!!
バナナケーキ
さっきから、バナナの甘くてやさしい薫りがとっても気になっていたんだ・・・
しかも、もっちりふんわりの食感が、薫りにマッチして・・・何てやさしい口当たりだろう。
生地の甘さにバナナの仄かな甘さが加わって・・・これで小麦粉も卵も使ってないなんて!
チョコタルト
こっちはまるで・・・“大きなボタン”か、“UFOのおもちゃ”みたいな可愛いまん丸お菓子。
でもって、このザクザクした歯応えがまた堪らなく美味しくって・・・口の中でホロホロ崩れる!
しかも、中の生地は表面から想像できないくらいしっとりしてて・・・ダブルの食感がまたグッド!
ちょこっとほろ苦い濃厚チョコから、やさしい甘さが広がってきて・・・何故か懐かしくなる味なんだ・・・
先輩・・・ここにいると、何だか懐かしい気持ちになって・・・身体も心も癒されてくるみたいですよ・・・
先輩が付けたお店の名前の“庭と木の実”・・・本当に庭の中で木の実や自然に触れ合って・・・
えっ、“庭と木の実”じゃなくって“接骨木(ニワトコ)の実”が名前の由来だって!?!?
オマエは高校の時からいつだって早合点してばかりだったなぁ~って・・・ハハ・・・
でも、先輩だって・・・その突っ込み・・・10年前と全然変わっていないッスよ♪
~ おしまい ~
喫茶 ニワトコノミ
栃木県宇都宮市西一の沢 9-1
028-648-6454
10:00-16:00
定休日 土・日・祝日
次回のCindy日記は・・・
京甘味 祇園さんの『限定パフェシリーズ第5弾』!!
春と言えば・・・“いちご”の出番ですね~~~!!! d(≧∇≦)ノ