度を越した財力や権力を有する連中にいくら尽くしてみたところで、得るものは結局悲嘆だけなのです。あなたの人生が覚束ない世界の底に沈んだままなのは、また、いくら頑張っても自由の出口が見いだせないのは、必ずしもあなたの才能や努力が著しく不足しているという理由によるものではありません。あなたのささやかな目標が到達しえないものに思えてしまうのは、国家や社会の理不尽極まりない非人間的なシステムにがっちりと組み込まれ、隷属させられているからなのです。しかも、そんな自分自身にどこかで満悦しているからでもあるのです。

 この世を生きることの名状し難い魅力は、他者から与えられた見せ掛けの安定のなかには絶対に存在しません。おのれの血のなかに感じる、ときめくような自由を味わうことこそが本物の人生であり、そしてそれは自ら首輪を外したときから始まるのです。

 生きていてつくづくよかったと、これが本物の人生なのだと、おのれの道をおのれの力で切り開いているのだと、そう感じて、心を燃え立たせたことが一度でもあったでしょうか。たった一度の、しかも誰のものではないはずの人生を生きるのに、どこの誰に遠慮が要ると言うのでしょうか。

 生者としてこの世に生まれながら、死者として生涯を終えてゆく自分に気がついてしまったとき、さて、どうしますか。