今後、非任意加入を行っているPTAは「優良PTA」として表彰されるべきではない | まるおの雑記帳  - 加藤薫(日本語・日本文化論)のブログ -

今後、非任意加入を行っているPTAは「優良PTA」として表彰されるべきではない

以前に問題にさせていただいた仙台市の小学校は、非任意加入を行っているにもかかわらず、優良PTAとして表彰されている(日本PTA全国協議会会長表彰)。
拙記事:<「Pちゃん」の学校が、日本PTA全国協議会会長表彰(驚)!>
(現在、ホームページにあった問題発言はなくなっている。本年度より任意加入に切り替わったのなら、関係者のご努力に敬意を表します。)

同じく当ブログでその非任意的加入体制を問題にさせていただいている塩尻市の小学校も優良PTAとして表彰されている(文部科学大臣表彰優良PTA)。
拙記事:<長野県塩尻市立吉田小学校への申し入れ(入会と役務の強要およびプライバシーの侵害の問題)>
こちらの学校は、残念ながら、いまだに『PTAハンドブック』中にある
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吉田小学校に通う子どもの保護者と吉田小学校在籍の「学校職員」は、全員自動的に「PTA会員」になります。
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との記述を改めていないようである。


ところで、先日、神奈川県の南足柄中学でも非任意加入が行われていることが判明した。
<平成22年度PTA会費の集金について うぇぶ 南中PTA!(β版)> 

PTA会長名で、
「本校のPTAは自動加入方式で、一世帯一会員となっております。」
とした上で、会費の支払いが求められている。
その案内には、「集金日前日に『集金袋』を学級担任からお渡しいたします。」とも書かれている。

本年度、この南足柄中学PTAが、優良PTAとして、「ダブル受賞」(11月22日に「神奈川県教育委員会優良PTA表彰」、11月26日に「日本PTA全国協議会会長表彰」を受賞)したそうだ。
<タウンニュース 「南足柄市 南中PTAがダブル受賞」>


拙ブログで何度か紹介しているように、本年度(4.26)、「優良PTA文部科学大臣表彰要項」の一部改正の趣旨をめぐって、文部科学省から「事務連絡」が各都道府県教委に発出されている。
冒頭部分を以下に引用しておく。

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平成22年度優良PTA文部科学大臣表彰について

 優良PTA文部科学大臣表彰につきまして別添のとおりご連絡させていただきます。
 今年度は、優良PTA文部科学大臣表彰要項に基づき、各都道府県教育委員会から提出される調査表(別添1)の記載項目と記載例を一部変更しております。これは、PTAが任意加入の団体であることを前提に、できる限り多くの保護者と教師が主体的にPTA活動に参加できるよう組織運営や活動内容の工夫をしている団体を適切に評価できるようにするものです。優良PTAの推薦にあたっては、変更点をご確認いただくと同時に、以下の点に注意して審査、推薦いただけますようお願いいたします。
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<優良PTA文部科学大臣表彰新基準の周知状況>より

この事務連絡では、「これは、PTAが任意加入の団体であることを前提に」とあるように、選考基準の一部改正の趣旨として、任意加入の団体であることが優良PTAの前提であると述べられているわけである。

神奈川県教委のPTA担当者が言うように、「事務連絡」が発出された時点においては選考手続きがほぼ終わっていた点を考慮すると、本年度の選考に、この「事務連絡」が生かされていないとしても仕方がないことなのかもしれない。(もちろん、要はやる気の問題だとも思うが。)
拙記事:<神奈川県教委による、文科省発「事務連絡」の処理>

しかし、次年度以降においては、適切な選考を行うための時間的な余裕は十二分にあるわけで、非任意的加入方式(自動加入・強制的加入)をとっているPTAが、優良PTAとして表彰されることは、あってはならないはずである。

そもそも、優良PTA表彰は、「PTAの健全な育成と発展に資することを目的として」(文部科学省)なされているものなのだから。
※とまてさんの「とまて日記」にこの表彰の目的・趣旨に注目してのエントリがある。
<"PTAの健全な育成と発展に資することを目的として">2009.6.28


<重要で、そして長~い(汗)追伸>
なお、この記事を書き終えた時点で、「PTAの健全な育成と発展に資することを目的として」という文言の出典を確認するために検索をかけたところ、横浜市の「PTA活動について」というページがヒットした。見ると、「平成23年度優良PTA表彰候補団体推薦にかかる資料・様式」のページがあった。

で、その中の「調査表」を見ると、昨年度まではあった入会方式が「任意」か「自動」かを問う項目がなくなっている。
<平成23年度優良PTA表彰候補団体推薦にかかる資料・様式>参照

これでは、あるPTAが優良PTA表彰の趣旨に相応しくない非任意的加入を行っていたとしてもチェックできなくなってしまうことになる。

非任意加入のPTAをチェックすることなく優良PTAとして表彰してしまうことは、「PTAの健全な育成と発展に資することを目的とする」優良PTA表彰の根幹にかかわることであるし、文科省により示された表彰基準一部改正の趣旨をめぐる「事務連絡」も全く無視するものである。

これでは、県から国にあげる段階の選出に際して「自動加入」のPTAは一応減点してきた昨年度までの選考よりも後退したことになるではないか。

そう言えば、先日(2/14)横浜市教委のPTA担当の係長であるM氏と話し合ったのだが、その時、M氏は「文科省発出の事務連絡は市には降りてきておらず、自分は見ていない。」とのことだった。また、優良PTAの選出に際して任意かどうかを問うべきだと当方が述べたところ、「県から聞かれる調査項目に従うまでで、県が任意かどうかを問わなければ、市でも問いません。今まで、ずっとそうやってきましたから。ええ。」とのことだった。

横浜市教委としては、「市P協と校長会において、PTAの加入が任意であることを確認はした。自分たちのやるべきことはやった」ということのようだ。
任意であることを確認した後のフォローをするつもりはまったくないようだった。
そして、どうやら、次年度以降も、強制的加入を行うPTAも優良PTAとして、県や国に推薦するつもりのようだ(嘆息)。

横浜市教委、および県下の各市教委に今回の文科省発出の「事務連絡」をいまだに伝達しようとしない神奈川県教委の見識を疑わざるを得ない。