第二十三話 「呪詛というトラップ」



まったく、ちょこまかと動きやがって


十代の子供と思って油断するととんでもない事になるぜ


しかし、もうそろそろ電池切れをするに違いない


俺は一瞬奴の右のわき腹に隙を見つけたので攻撃してみると


これがトラップだったようで大振りした腕の下に潜り込まれて


わき腹を斬りつけられた


僅かに浅かったが、一歩間違えると致命傷になっていたかもしれない


ますます侮れないと受身の姿勢になると


途端に攻撃が鋭く速まって行く


「こいつは一体何ものだ?」


心の中で叫びながら


一向に電池切れをする様子がない事を肌で感じる事になった


もしかすると、奴が子供の姿をしているので見誤ったしまったのだろうか


目の前に居る相手は、十代の子供ではなく


理由は判らないけれど、軍事訓練を受けてきた本物の兵士かもしれない


力こそ劣っているが、攻撃技術は自分と遜色ないと思われる


もし体力でも変わらないとするなら


最も危険な状態に陥っているのは自分と言う事になる


途端に恐怖の心が生まれてきた


こんな子供に恐怖を感じるだと?


どんなに否定しても、それは間違いなく全身に広まって行く


少しずつ、疲労感を感じてきているのも事実で


足元をチラリとみると、びっくりする程真っ赤な水溜りがあちこちに出来ている


こんなに出血させられているのか


もしかすると、相手の体力が変わらないのではなく


自分が奴の体力を消耗していく前に弱ってきているのかもしれない


だから、奴の素早さが衰えを見せないような錯覚を起こしているのではないか


どちらにせよ、この危機的な状況は変わらない


このままこの状況を打開出来なければ


この大地に倒れるのは俺のほうかもしれない


戦って戦って戦い抜いてきて


日本と言う平和主義の旗を揚げている島国にきて


数日前は能力で駆逐され


今十代の子供に戦闘技術でも遅れを取ったとあらば


モンスターと恐れられた俺の今までの歩みは脆くも崩れてしまう


そんな事はあってはならない


しかし、能力を使えば奴に負けを認める事になる


それは俺のプライドが許さない


一体どうすれば良いのだ


((・・・大佐次は左から斬り込んできます))


一瞬ではあるがこれは同志であるピュッフェン少佐の信念波による直接メッセージだ


俺はその言葉の通りに交わすと


奴に斬りつけた、それは交わされたが


奴は後ろに飛んで、そのままピュッフェン少佐を睨んだ


まるで今信念波による助勢をしたのを理解したとでも言うのか?


目の前の子供に能力を感じない、非能力者にそんな事が出来るはずはない


ところが


「お前、それもアリだと言う事か?」


「何のことだ」


「私の目を節穴だと思うな、今アイツが私の心を読んでお前にテレパスで伝えただろう、お前にプライドがあるなら不要な隠し立てはしないよな」


いちいち俺のプライドを擽りやがるが


奴のいう事も筋が通っている


兵士をある程度長くしていると


自分のプライドをいい加減に扱う奴は間違いなく消えて行く


人間の意志には絶大な力が存在しているようで


仮にそんな輩は生き残ったとしても


兵士として大成した者を今まで一人も見た事がない


俺は違う、どんなに悪辣な事をしても己に対してだけは


恥無い生き方をしてきた


だから、奴の言葉を聞き流す事は出来ない


或いは今目の前にいる子供も


そんな生き方をしているのかもしれない


だからこそ、俺は引くわけには行かないのだ


「だったら、それがどうしたというのだ、俺は能力を使わず戦っている、部下の能力の助言はあるが、それはお前に対して一切の攻撃をしていないので、助勢には当たらない」


闘いに置いて、完全に平等の立場などありえない


それはスポーツや武道の試合のように


ルールに守られた世界でなら可能ではあるけれど


これは正真正銘の命を懸けた闘いであり


実際の戦いに置いて平等だと思えたものは今まで一度もなかった


「お前がアリだと判断したなら異論はないが、それなら私も本気で戦うぞ」


「面白い今までは本気ではなかったというのか?」


「いや、そうではない、テレバスだのというモノで人間の心の奥底まで読み取るなんなて不可能だという事を証明してやる」


奴はそういうと鋭い眼光を俺に向けた


((大佐、突然奴の心が読めなくなりました、今までこんな事は無かったのに・・・))


一体何が起こったというのだ


その時一つの強烈な仮説が脳裏を掠めた


つまり、奴が特異体質ではないのか


奴の弾丸を弾き返す事が出来なかったのは


意表を突かれた事と、素早い射撃のせいではなく


自分の能力を特異体質によって歪められ、かろうじて急所を外せたとしたら


もしそうなら、奴を消すことは出来ない


生け捕りにしなければ、俺の野望は達成されない


ただでさえ少ない特異体質をやっと見つけ出せたというのに


いやそんな事を言っていられなる状況ではない


生け捕りどころか


もし奴が本当に特異体質だとしたら


絶体絶命なのは、むしろ俺の方だ


何故なら戦闘技術では拮抗している上に奴が有利に進んでいて


この上虎の巻である俺の念動力は使い物にならないのだから


今まで死地を何度も乗り越えてきた


諦めなければ何処かに切り抜ける道はあるはずだ


人間は窮地に立った時に真価が発揮される


俺はこのまま負けるわけにはいかない


理不尽に晒されているグバザルーン共和国の同胞達の為


クーデターを起こさなければならない


こんな子供に消されて堪るものか


しかし、奴の攻撃は鋭さを増したようにズシリ、またズシと骨身に響く


それほどまでに、自分が弱ってきているのか


右腕の腱が切られ力なくぶら下がり


遂に片足の膝を着いてしまった


俺はこのまま、見知らぬ島に倒れるというのか


無名の子供に倒されるなんて


目が霞んできやがった


不思議だが恐怖は消えて行く


お袋の顔が浮かんだ


この期に及んで、俺を見捨て忘れてしまった人間の顔だ


次に俺を消そうとした奴等の顔が次々に浮かんだ


そして初めて心を通わせた同胞達の顔が浮かんだ


理不尽に耐えながら消えていった仲間も居た


俺はこのまま消えてよいのか


嫌だっこのまま大業を旗す事も出来ず倒されてたまるかっっ


俺は懇親の力で能力を奴にぶつけた


無駄な抵抗かもしれない


だけど何もしないで諦めるほど俺は物分りの良い人間ではないんだ


歪められた力がどうなるか判らないけれど


このままやられるよりマシだっっ



ところが、目の前に展開している光景は


自分が想像したものとは違っていた


奴は俺の力で吹き飛ばされて大樹に叩きつけられそのまま座り込んだ


「ははっまんまと騙されたってわけか・・・お前は特異体質なんかじゃない」


俺は逆に目の前の子供が恐ろしい相手であると認識した


こいつは特異体質の存在を印象付ける演出をしたのだ


自分が特異体質ではないことはもちろん理解した上で


いや、思えば最初から奴の呪縛に俺は縛られていた


船に奴の仲間を乗せたままこの島で対等に戦う事も


俺の能力を封印したのも


全ては奴の術中に嵌っていたのだ


最初に銃で足を狙ったのも、大量に出血させる為の布石だったとしたら


こんなバケモノのような子供が日本にいたとは


こいつが特別なのか、それとも


こいつ以上のものが日本にはまだ居るのか


もっと調べなければならないだろう


いや、逆にこの状況を過大評価して報告する事で


国の上層部の意識を日本に釘付けにしてクーデターを起こすチャンスをつくるか


俺はバケモノの前にたった


いずれにせよ、こいつは危険だ


ここで消してしまうに越したことはない


「しかし、ただでは倒さない、俺が受けたダメージの分は痛めつけさせてもらうぞ、先ずその左腕から潰す」


俺は力を込めて奴の左腕を能力で攻撃した


ところが


俺の左腕が血しぶきをあげた


「なんだっ一体どうなっているんだ」


まるで自分の能力で自分を攻撃してしまったような感覚だ




つづく



第二十二話「才能と人格は別物である事」



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ちょこっと、急ぎ働きですがΣ(@@;)


続きを書いて見ました


このままだと、足踏みのまま横に話がどんどん広がっていきそうなので


とりあえず本編の話を進めることにしたのですが


なんか早いテンポになったかもです(--。。


途中で続くは不本意なのですが・・・


来週かければ書いて見ますΣ(@@。。


平日はネットも難しい状況なので・・・


勘の良い方はガザット大佐が何故あんな事になったか


解かったと思いますけれど・・・


もちろんこの謎は次回に解き明かしますねヾ(@^(∞)^@)ノ


謎と言うほどの事もありまぜんが


知れば、なぁ~んだと思いますよ(≧▽≦)


・・・・・・(--。。



まる☆