第二十二話 「才能と人格は別物である事」



「黒子、面白い企画があるのだけれど、乗らない?」


私は、黒子のようなタイプの人間を知っている


父は名家である西園寺家の当主であり


同時に西園寺グループの代表取締役社長でもあるため


いろんなタイプの来客があるのだけれど


その中に、何度かこのタイプの人間もいたから


黒子がまるの計画をぶち壊す立場に立ったとしても


今自分が一番したいことをするのは理解は出来た


それは一見自己中心のように見えるけれど


恐らく考え方や生き方の類のものではない


ある意味では病的な体質に起因すると思う


海猫深もまた黒子と同類のようで


彼女は甲板にペンキを見つけてから


一心不乱に、そのペンキでデッキブラシを使って絵を書いている


彼女は紛れも無く、天才と呼ばれる人種だろう


小学生になったばかりで、絵画の大きな賞をとってから


作品は次々に賞を取り、人の心を釘付けにし続けた


海外で学びながらプロとして


人々の心に響く作品を提供し続けているのだから


黒子と同様に、天才の称号に相応しい存在だと判断している


とても興味深かったので


この種類の人間を観察しつつ、調べてみたら


ある特徴に辿り着いた


それは、


刺激に対して異常に反応すること


そして、面白い事を何よりも優先してしまうこと


恐らくそれが悪い事であると解かっていても


今自分がしたいと思う衝動を押さえる事が出来ない


クラスメートが自分達のために命がけで戦っていて


もし彼女が倒されるような事があれば


間違いなく私達も消されてしまう


海猫深もこの状況を理解していない筈はない


けれど彼女の描きたい衝動は


こんな緊迫した状況であったとしてもブレーキにはならない


私は思う、もし戦時下で爆弾を投下されている時であったとしても


一度描き始めたら自分でも止められない


まるの言葉を借りるならば


「天才とか呼ばれている奴等はみんな、キレてやがる」のだと思う


今の海猫深を見ていれば


その見解の正当性が立証されたのではないだろうか


けれど、その事によって私の心が


深くてどす黒い闇の世界へと突き落とされたような


鈍い痛みが感じられた


まるは、私達のために死を覚悟して兵士に挑んでいるのだ


その事をどう感じるか、どう思うかは、その人の自由であるけれど


その事も忘れて一心不乱に絵を描いている海猫深の姿をみていると


悲しい気持になる事は止められない


いや、今回まるがこの選択をする事は予測がついたはずだ


私がまるをこの選択肢へと追い込んでしまったのだ


クラスメート全員助ける道を、私がまるに強要してしまった


もし、まるが兵士に倒される事があれば


私がまるを葬った張本人という事になる


そこまで考えて私は首を横に振った


そんな事はどうでも良い


自分のしてしまった事は、私が生きている限り背負って行く


西園寺家の末娘として私はそのように育てられた


例えどんな事になっても、自分が決断した事からは逃げてはならない


それはもう体と心に染み付いる


でも、それが子供じみた我が儘だったとしても


私はまるを失いたくない


きっと、まるは私にとって天敵と呼べる存在だといえるだろう


こんなに私の意見に反論し戦いを挑んでくる


忌々しい相手は他にはいなかった


考え方も生き方もまるで違うし


理解しあえる日は永遠に来ないかもしれない


いつか私の大切にしているもの全てを壊してしまうそんな気もする


それでも


私はまるを失いたくない


まるを最も危険な立場に追いやった張本人である私が


こんな事を願う事は本当に矛盾するけれど


そう思ってしまうのだからどうしようもない


まるの選択は納得の行くものではなかったけれど


この私でも、それ以外の方法を思いつく事は無かったから


反論する事も止めることも出来なかった


人の命は何ものにも代えられない


一人の命の犠牲で、百人の命が救われるならそれは良しとする


そんな教育を叩き込まれて来たけれど


私は今まで、その一人の犠牲をも出さない道を探してきた


百人助かる道より、百一人助かる道を探して生きてきたというのに


ここに来て、結局まるを犠牲にしてしまう道しか選択できないなんて


私は自分がどれだけ無力な人間であるかを思い知らされた


だけど、ただこのまま手をこまねいて見ているつもりはない


今のまるを救える程には至らないだろうけれど


この戦況を少しは有利に出来る道はある


その為には、黒子と海猫深の協力が不可欠なのだ


今の二人に


命の大切さを語ったところで


その心に届くことは期待できない


仮に届いたとしても、


今の彼女達のブレーキにはならないだろう


だから、それがどんなに卑怯な手口だったとしても


私は彼女達の体質を利用する事にした


まず黒子に、面白い企画として耳打ちしてみた


すると、話を聞くや黒子はそのままお腹を抱えて大笑いした


「それは面白いね」


黒子はやる気満々になってくれたようだ


ところが、海猫深は描き終わらない限り誰の言葉も耳には入らない


時間はそんなにないというのに


今こうしている間にも、まるの体力は消耗している


兵士として鍛え抜かれた相手に対して


女子中学生の体力なんて比べ物にはならないはずだから


急がなければならない


突然、黒子は周りの状況を従来より三倍は太くなったタブレットPCで録画して


その動画を編集し始めた


「まだ、海猫深の了解は得ていないわ」


「そんなの後で良いね」


「それは出来ない、例え有名人だとしても、肖像権も含めて彼女自身の許可も無く彼女の名前を使うなんて許される行為ではない」


「彼女の答えは決まっているね、面白い事に賛成しない筈はない」


「それは、あなたの思い込みではなくって?」


「この場合、私の思い込みは海猫深の感覚と一ミリの狂いもないね」


「一体何を根拠にそんな事が言えるの」


本人の承諾もなしにその人の事を表現する事は卑劣な行為なのだ


しかし、黒子の手は止まらない


「奴は私と同類だから」


黒子は編集の手を止める事無く、ボソっと言った


不思議な説得力を感じる


私はどんなにどす黒いやり方も否定はしないし


実際目的のためには綺麗ごとでは済まない局面を幾度も体験した


けれど、強いてそれをした事は一度も無い


少なくとも自分自身に申し開き出来る道しか選択して来なかった


見方を変えればそれもまた卑怯な生き方かもしれないし


自己満足だと言われれば、決して否定できないのだけれど


しかしこれは私の最低限のプライドだと思っている


そんな時突然、海猫深が両手を広げそれを大空に向けた


一体何の儀式なのだろうか


やはり天才のやる事は理解に苦しむ


すると黒子が船の屋根の上に登って私に手招きした


誘われるまま私も登ってみると


「やはり海猫深も私と同じ気持だったね」


彼女に促されるまま、海猫深のいる甲板を見おろしてみると


そこに描かれているのは、まるの似顔絵だった


よく見ると海猫深の頬からは次から次へと涙が零れ落ちていた


その瞬間私は彼女の気持を理解した


まるの事を彼女なりに思っての事なのだ


私の頬も彼女と同じようになって行くのを感じながら


私の天才に対する認識を少し修正する必要があると思った


天才とは自己中心な生き物だと思っていたけれど


それは今まで出会ってきた者達が、そういうタイプだったに過ぎなかったのだ


つまり、天才とか凡人とか、そんな尺度では


人間性まで判断は出来ないという事だ


人間性と才能は別物なのだ、それは天才でも同じ事が言える


少なくとも今甲板にまるの似顔絵を描いて、まるの無事を祈っている


天才と呼ばれた少女の心には暖かいものが溢れている


極めて非論理的で精神論としか分類できない考え方だけれど


私は人の思いや祈りが天に届いて


奇跡と呼ばれるものを起こすことが出来ると信じたくなった


だけれどその為には人事を尽くさなければならない


人事を尽くして天命を待つという格言の真意が何処にあるのか


この格言を実行するとはどういうことなのかを


私は子供の頃から叩き込まれてきた


創意工夫を駆使して、もうこれ以上何も出来ないというギリギリのところまで


努力し続けたものだけがその境地に辿り着けるのだ


余力を残しているうちは決して辿り着けない場所なのだと思う


だから、私も戦うと決めた、まると一緒に


今兵士と戦っているのは、まるだけれど


決して一人ではないのだと言う事を彼女に伝えてあげたい


いや伝えなければならない


「黒子、いつまでも奴等の思うままさせてはつまらないわよね、精々子供らしく悪巧みをしてあげましょう」


私は涙を拭うと黒子に言ってみた


「そう来なくっちゃ面白くないね、これ以外に何か隠し玉持っているのか?」


「というより、今思いついた事があるわ」


まるの言い草ではないけれど


たとえ相手がモンスターと呼ばれた軍人であろうと


人間である以上万能ではないはず


私も相手をバケモノだと思わないことにした


相手を人間だと考える事で


今まで見えてこなかったものが見えてきたのだ


色眼鏡は偏見と言う差別を生み出すだけでなく


思考をも歪めてしまうのだと認識する事が出来た



つづく


第二十一話 「脅威は見えない所に潜んでいる」


初めから読む


もっと初めから読む


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いや~久々に平日休みがとれましたо(ж>▽<)y ☆


度重なる休日出勤の連続で先月から休みが少なかった(--。。


小説はまとまった時間が無いと流石に書けませんから


文才のある人は、さささっと書いてしまえるでしょうけれど


私なんかは時間がかかりますねΣ(@@。。


ブログネタみたいに


思ったまま描くのは直ぐですけれど


一応少しは考えて書きますから・・・


あっ今


考えて書いてこれかっっという突込みが聞こえたような気がしますが


空耳と思っておきます(≧▽≦)


今日はどうも比美香の気持が強く感じられたので


ついいつものような感じに書いてしまいました(--。。


天才について少し触れてみましたが


私はあまり天才を特別視していないのですΣ(@@;)


これはあくまで私の感覚、


イメージなので不快に思われる方はスルーして下さいね


人間のポテンシャルって誰も変わらないと思っているので


何が違うのかというと


ひとつの場所だけ突起しているイメージですね


一つの所だけ突起するという事は当然他のところが欠落してしまう(--。。


オールマイティーな人も確かにいますが


私はそのような人物を天才とは思っていません


才能タイプと呼ばれるタイプで努力すれば何でも出来てしまうのだと思います


向き不向きが少ない、丁度将棋の駒でいう所の王将タイプ


天才は飛車や角のようなタイプのイメージです


あくまで私のイメージですけどね


でもオールマイティである人は一つずつしか進めないように


一つの分野で凄い成果を挙げることは出来ても


天才と呼ばれたキレた人には及ばない


理由は簡単で天才は


他のものを全て犠牲にしても全然気にしないで本能的にやってしまうからです


火事場のバカ力を簡単に出してしまうかんじですかね


だから、あっ手の骨が折れちゃった∑ヾ( ̄0 ̄;ノ


って事も少なくない


普通の人は無意識に力のセーブをしてしまう事でも


それが出来ない人なのだと思います(--。。


きっと生きる事が大変な気がしますΣ(@@;)


天才に生まれなくて良かったε=(。・д・。)


読んでくださった方が


少しでも日常の嫌な事を忘れて


気晴らしが出来る事を心から願って


続きも書いて見ますね\(*´▽`*)/



まる☆


追伸


ありゃりゃタイトル書くの忘れてましたΣ(@@;)


タイトルから考える場合は良いのですが


今回のように


タイトルを後から考える場合は


スッカリ忘れてしまう場合があります(--。。


私の物語の作り方って


その時その時で全然違ってくるのですΣ(@@;)


理詰めで作るタイプではないので


突っ込みどころ満載の粗だらけですが


突っ込みながら読むことを楽しんでいただけたら幸いです


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それは最低ですって((((((ノ゚⊿゚)ノあせる


まるのまるはまる投げのまるあせるって言わないで~



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