第十七話 「絶体絶命」




ようやく島が見えてくると


島から二人の同胞の気配が感じられた


こんなに早く来ているのはおかしい


連絡をしてまだ三時間、


同胞がいる場所から船で辿り着くのに四時間以上かかる


瞬間移動の能力者でもしない限りありえない速さだ


そのとき私は感づいてしまった


大佐が私等の計画を見抜いて先手を打ってきたのではないか


だとすれば、島にいる二人は大佐の息がかかった兵士だ


計画は既に崩され、私等は逆に大佐の罠にはまっているということになる


同等の能力者同士が戦うのだ、三対二では分が悪すぎる


まして、大佐の念動力は特殊部隊1個小隊と同等の威力があるのだ


実際二人で戦っても勝ち目は薄い


この作戦は、


他の同胞が協力してもらって初めて成功する可能性が発生できる


可能性があるとすれば、二人の同胞が来るまでの一時間を


何とか凌ぐことによって三対四に持っていける


嫌待て、この場合能力特性に問題がある


能力者同士の戦いでは信念波を操るものは不利だ


頼りとなるのは瞬間移動のリースン少佐のみとなる


実は瞬間移動の能力は戦闘に用いる時


恐るべき殺人兵器となるからだ


大掛かりな技を繰り出す必要はない


一枚の紙があれば相手をパラバラに出来る


あの少女が見抜いた通り


相手の意思に関係なく一瞬にして相手の首を切り落とせば事足りる


ところが、瞬間移動能力者の殆どは、それを実行出来ない


それは兵士としての誇りの為ではなく


もっとメンタルな問題が絡んでいる


殺戮兵器として訓練されてきた我々ですら


人を殺す事にためらいも痛みも感じなくなった今でも


心の深い所には、決して人間には介入出来ない領域が存在していて


その領域が干渉してしまうようで


簡単に言ってしまえば本能的にそれを拒絶してしまうのだ


その領域については解明されていない為、


瞬間移動能力者には、その技を人に向けては仕えないのが現状だ


しかし、それでも相手に手傷を負わせる位は充分可能で


この場合、相手の能力が問題になってくる


つまり相手もリースン少佐と同じ能力者であれば最悪な戦いになる


「そろそろ気がついただろうビゼット少佐、お前の考えている事など手に取るように読み取れる、俺がターゲットを使って能力の実験をしている時お前は目を何度か背けた、だからお前について調べさせてもらった」


突然後ろから大佐が話しかけてきた


「お前は危険思想の持ち主で、危険人物として既に軍上層部からマークされているぞ」


計られたのは大佐ではなく、私の方だというのか


私はチラリとリースン少佐を見た


彼女は横を向いたままだ


なるほど、彼女もまた大佐の側に着いたと言うわけか


「大佐あなたは余程、能力者と戦いたいようですね、私に濡れ衣を着せた上で、反抗した私を処刑したという名目を作り上げる算段でしょう」


大佐の下に赴任された同胞の何人かは任務中に戦死している


もしもかすると、その何人かはこのような形で大佐に葬られているかもしれない


「流石だ、そこまで見抜かれたなら話が早い、島に居る俺の部下は瞬間移動能力者と心念波を操る者だが、心配するな、みんなには手を出させない、お前は俺の手で始末してやる」


大佐の目は怪しく輝いた


「非能力者を何人始末しても面白くないからな、しかしその前にお前に最後の任務を与えてやろう、島に居る仲間と共に特異体質者を確定させろ、何故能力を弾いてしまうのか実験体にする為に本国へ連れ帰る」


特異体質の特定は本当に難しいのだ


その理由の一つに特異体質の特性である能力を歪める力が存在していて


ただ単に能力を弾いてしまうだけではないからだ


もし能力を弾いてしまうだけなら、心が読めない相手がそうなので


私一人でも充分に特定できてしまう


ところが、意識的にコントロールしてか無意識でしているのか


未だ確認されていないが


特異体質者は自分にとって不都合なもの意外、


相手に心を読ませることも出来るようなのだ


実際あの子供達の中で心が読めない相手は一人もいなかった


ここが特異体質者の恐ろしいところなのだ


情報操作を無意識にしてしまうことが出来る


私のような心念波を感じ取る力を持つ者にとっては天敵となる


それでも、二人以上の能力者がタッグを組んで


情報の誤差を検証すれば


消去法で相手を絞り込めるようになる


心念波は読み取る者の個性によって


感じ取れる所が違う為、二人以上の心念波使いが話し合いにより


歪みを修正する事によって相手を割り出せる


つまり、心念波を操る能力者の不確実要素が返って


特異体質の存在を見つけ出せる要因になっているのだから皮肉な事だ


それにしても、


果たして二人で見つけられるかは微妙だが


なんとしても特異体質者を見つけ出す必要がある


この絶対的不利な状況を乗り切るためには、


その特異体質者が切り札となる可能性が高い


軍人としては情けない話だ子供に期待するなんて


しかしこのままでは、私もあの子供達も確実に消されてしまう


そのときふと私は日本国人の同胞の少女の顔が脳裏を掠めた


彼女の能力は既に正規の軍人と同等


身体能力はやや劣るものの知性と直観力は


彼女の波動を読み取る限り我々を凌ぐものを感じる


(聞こえるか)


(なんだ)


心念波で語り合うのは、恐らく初めてのはずなのに


まるで彼女は慣れているように返してきた


(最悪の事態になった)


(詳しく聞かせろ)


どうやら彼女は私を信用しているようだ


私も彼女を信頼して、事の顛末を全て話してみた


(判った、お前はその特異体質の特定に専念しろ、恐らくその大佐は特異体質が見つかるまで私達の誰も始末できない、お前もそれまでは消されないだろうからな)


私の睨んだとおりこの絶体絶命の状況を認識しても


彼女の心は少しも乱れた様子がない


死線を何度も乗り越えてきた人間の中には


どんな状況下でも決して絶望しない者も時々居るものだ


(それでお前はどうするつもりだ)


私は彼女の能力が我が軍の参謀を凌ぐ予感がする


(私に考えがある、お前が特異体質者を見つけ出すのが早いか、私が決行するのが早いか勝負だ)


時間との勝負という事は私にも理解できるが


この絶望的な状況下で一体どんな作戦を構築するのだろうか


私は不思議な高揚感に満ちてきた


不思議な話だが、彼女にはこの絶体絶命の状況を逆転させうる


何かを感じて仕方がないのだ



つづく


第十六話 「羅針盤は方向しか示さない」


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さてさてΣ(@@;)


一体どうするのでしょうね(^▽^;)汗


久々に書いてみたらこんな事に・・・


逃げる準備は出来ています((((((ノ゚⊿゚)ノあせる


いやいや、何とか続きを書いてみます(--。。



まる☆