悠里が自分の意思で行方を眩ませたのではない事は


最初の時点で思ったけれど


詩織の話によると


あながち自分の意思ではないとは言い難い


二人の男は詩織の念写を頼りに黒子が突き止めた


高谷小次郎と霧島太一


この二人も行方不明になっていた


これは何かがあったに違いない


詩織や比美加の話によれば、悠里は余程思慮深く頭が良い


そんな人が迂闊に人を信用して着いていくとは考えられない


だとすれば、悠里とこの二人は知り合いだという可能性が大きくなる


しかし悠里の事をどんなに調べても


二人の接触には辿り着かなかった


事実は二人と悠里はあの時が初対面だったという事を示している


結局今回の悠里の行動は不可解極まりない


詩織も二人の事は何も聞いていなかったと言っているし


このままでは折角の手がかりも生かす道を失う事になる


私は自分が今立っている場所から一旦移動する必要性を感じた


もっと違った視点でみれば、この謎は解けるかもしれない


こういう時私は徹頭徹尾理詰めの兄よりも


弟と話す事にしている


弟は何を考えているのか、この私でも読めない程、自由な発想をする


ただ弟に今までの事を話すのは躊躇ってしまう


アイツは私の弟でも決して味方になるとは限らないからだ


風の向くまま気の向くまま、面白い方に転がっていく


つまり、敵になれば厄介な相手となる


面白ければ自分の姉でも平気で敵に売り飛ばすだろう


まぁいいさ、その時は完膚なきまでに叩き潰してやる


私は弟に今までの経緯を話してみた


弟は何時になく神妙に話を聞いていたかと思うと


突然大笑いした


「まるは頭悪いな~」


弟はこのようにムカつく奴だ


「世の中は利害関係で成り立っているんだよ、つまりその二人にとって悠里に利用価値があるから彼を連れ出した、一方悠里もまた、この二人に何らかの利用価値を見出したから着いて行ったと考える方が自然だよ」


「その考えは理解できるが、悠里は聞けばお人好しらしい」


「それは不幸な事だ、だとすれば二人が悠里を利用するのは容易い」


そこまで聞くと、何か見えてきた


つまり、悠里は二人に何らかの脅迫めいた言葉で呪縛を受けた可能性だ


「君の大切な人達に迷惑が及ぶよとほのめかせばよいのさ」


弟は怪しく微笑んだ


「しかし、頭の良い悠里がそんな脅しに乗るとは思えない」


「頭の良し悪しなんて関係ないよ、もっと大きな事件に巻き込まれたカタチならね」


どうやら弟は、私には見えない何かを捕らえているようだ


「判らないようだね、その凝り固まった頭を少しは緩めてみればいい」


やはりムカツク奴だ


「会うのは初めてでも初対面ではない事だってありうるって事を考えてみればいい」


そういうと、奴はネットをし始めた


「しかし、ネットの痕跡も通話記録も残っていない」


「そんなものはいらないさ、まだ判らないのかい、悠里と詩織の共通点を考えてみるといい」


奴は深い真っ暗な闇の中に吸い込まれるような目を私に向けた


その時私はある可能性に気がついた


「テレパシーのような能力か」


「ご名答、やっと見えてきたね、世の中に詩織のような能力を持った者がいても不思議ではない、それに今回は・・・」


そこまで言うと言葉を止めた


「その能力絡みの事件に巻き込まれたと言う事か」


明らかに私に言わせようとした奴の演出に乗るのは癪に障るが


今回は奴の助言に敬意を表して乗ってやった


「面白いね、ボクは少し興味が沸いて来たよ、もしかするとこの闇に手を出すと、案外大きな組織を掴む事になるかもしれないからさ」


「お前が介入すると話がややこしくなる」


「当然だよ簡単に解決されたら面白くない、せいぜい引っ掻き回してやらないとね」


コイツには敵も味方という概念もない


ただ目の前に面白いおもちゃを見せられた子供と同じだ


ある意味、とんでもない怪物を引き込んでしまったかもしれない


「心配している?まる、大丈夫だよ、ボクはまだ小学生だからね、少なくとも世間的には、小学生の出来る事なんてたかが知れているから」


確かに今の縛りがある限り、そんなに動き回ることは難しい


「お前が大人にならない事を祈るよ、とんでもない事をしでかすのは目に見えているからな」


「それは身内に対する過小評価だよまる、ボクはそんな大それた事はしないさ、ただ大それた事をする人なら作くる事があるかもね」


私はその時、ゾクゾクと恐怖に近い感覚を味わった


コイツは今小学生という檻の中にいる獣だ


中学、高校と檻がある限り、迂闊な事はしないだろうけれど


一旦社会に出てしまうと何をしでかすか判らない


野に放たれた野獣は、今まで閉じ込めてきた奴らに復讐をするかもしれない


いや奴はもっと残忍だ、復讐などするはずも無い


ただ気が向くまま、人を不幸に陥れるだろう


「でもまる、小学生だから出来る事だってあるよ」


私はまたゾクゾクと恐怖を感じた


そうだ、コイツなら檻の中でも誰かを操ってかき乱す事だって出来る


私は驚いた顔で弟を見ると、奴はにっこりと微笑んだ


「これはご褒美だよ、ボクに面白い話を聞かせてくれたからね」


まったく油断ならない相手だが


コイツのお陰で道が開けてきた


詩織は嫌がるかもしれないが


今回の問題は、その能力に関わるものに違いない


しかもそんな能力者の大きな組織が存在していて


悠里はその組織に巻き込まれたというのが自然だろう


相手の一人が詩織と同じテレパシーを使えるなら


奴らを引きずり出す方法は幾らでもある


問題は詩織だ、アイツには辛い思いをさせる事になるだろう



つづく


第四話 「手がかり」



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少し話を進めてみました


超ブラックな弟登場ですΣ(@@;)


話がややこしくなりそうな予感ですが



まぁ~やっとSFファンタジーらしくなってきましたヾ(@^(∞)^@)ノ


果たしてどうなるのか


キャラ達によって少しずつ壊されていくプロットの残骸をまとめながら


何とかまとめられるか頑張ってみます(^▽^;)汗



まる☆