レムリアの女神
 

 

学芸員見習いの大学生リョウと、ヴィクトリア座のトップ女優ヴィーナのいるN.V.暦651年。
王室画家として雇われたナタルと、レムリア新王国の王女サラスのいるN.V.暦148年。
500年ほど離れた時代と時間を過ごす登場人物たちが、1冊の本によって次第に溶け合っていくような錯覚を覚えた作品でした。

 

ヴィクトリア座の女優で強気なヴィーナの発言に翻弄されてしまう心優しき大学生リョウ。
一国の王女様なのにお転婆気質なサラスのせいで、気苦労が絶えないナタル。
500年の時が流れても男性を簡単に動揺させてしまう女性の存在は凄いなぁと思わず笑ってしまいます。
それに意外と奔放な発言をするところなんかも、怖いもの知らずなんですかね。ヴィーナもサラスもとても可愛らしくて、どちらも生き生きした魅力を感じます。

 

この作品は「異世界冒険ファンタジー」という枠組みなのでしょうが、ミステリーとしても読めます。
N.V.暦651年の物語を読み、500年前に遡って148年を読む。
そういうふうに2つの時代を繰り返し行き来していくうちに、この不思議な世界観が徐々に理解できていく。
その瞬間がなんともいえない気持ちになります。
普通なら交わることのできない時代が、「骨董品」や「絵画」なんかを通してリンクする。
その不思議な感じがなんとも感動的な気持ちにさせられます。

 

リョウの仕事が博物館の学芸員見習いです。
だから作品の中にも絵画修復だとか、展示品だとか、所蔵品についての記述もあり、文章を翻訳して過去と触れ合うといった場面も出てきます。
現実の世界で歴史を探ったり、発掘作業をしたり、考古学なんかに携わっている人も、こういう気持ちになるのかなぁと勝手に想像したりして。

 

表紙はライトノベルな感じなのですが、本が単行本で重い分、内容も深いです。
全て読んだ後、改めて表紙を見返してみたら、感慨深くなりました。

 

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