楠本まき『赤白つるばみ』 | 秋田和徳ブログ『バラ・グラフィック』

楠本まき『赤白つるばみ』

Bonzo Dog Doo-Dah Bandで
「Music for the Head Ballet」。






『KISSxxxx』の世界観を継承する
17年振りの長編単行本。(帯コピーより)

2014年12月25日に上巻(写真右)が、
そして、先月25日に下巻(写真左)が刊行された、
楠本まき『赤白つるばみ』。



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鏡文字ならぬ鏡カヴァー。
(あの「楠本まき」のカヴァーに、よもやのアフロっ!!!!!!!)


楠本氏との仕事では、
――一度あるかどうかの――ミーティングで
もっとも時間をかけるのが(使用する)紙の選定。

上巻は銀、下巻は金(ゴールド)と、
その発色や風合い…、
できれば“手にとって”読んでいただきたく思います。
紙の本。



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インクがのった際の質感(へのこだわり)と、
コストの兼ね合いから、表紙はまたしても
紙の――印刷には適していない――“裏”を使用。
(紙の)需要が少ないがゆえの、よんどころない選択。



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“原寸主義”とでもいいましょうか、ボク個人は
誰もが同じ“しかるべきサイズ”で、
それをしかるべき厚みと手触りの紙に、
しかるべきインクと発色でもって定着させた状態を念頭に
デザインしています。



さて、
漫画作品にデザイナーの存在を意識するのは
ほとんどが同業者でしょうが、
案外、やることは少なくはないのです。



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購入するまでの短い命
(電子書籍読者にはハナから不要)、
それが帯!

そんな帯を
後生大事に保存してくださる、
ひっそりとマイナーな方々のため、
それに耐え得るデザインをと、いつも心がけています。



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帯には
作品をもっとも象徴するフレーズが
記されてることだってあるのですがね。



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すべてのはみだす者たちへ――

これまでもずっとそうだったような気もしますが、
今作はそれをより明確にした
ということでしょうか。



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変わらず
細く美しい線で描かれる、
はみ出した人たちのフツーの日々。

そこに流れる素敵な時間。

穏やかで美しい世界。

それでも、そこに耽ることは
しきりに避けようとするユーモア。

そして、絶望。

これぞ「楠本まき」!

美、ユーモア、絶望。
その絶妙なバランスに
ボクは深く共鳴します。









*
My all-time favorites
#191

読み手によって流れる音楽もいろいろでしょうが、
この漫画にサウンドトラックがあるとするならば、という
ボク個人の妄想による選曲。

グラム・ロック・サウンドを作った男、
ミック・ロンソンがプロデュース。
デヴィッド・ボウイ「ロックン・ロールの自殺者」の
コーダを流用したのは、そのコーダを作った
ロンソンのアイデア(だそうです)。
(そして、のちにこれをデヴィッド・ボウイがカヴァー)

Morrisseyで
「I Know It's Gonna Happen Someday」。





想像力喫茶室『バラ・グラフィック』にようこそ。


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