舞台「おくりびと」〜あれから7年後の物語〜 | Marc のぷーたろー日記

舞台「おくりびと」〜あれから7年後の物語〜

今年の6月に赤坂ACTシアターで上演された舞台「おくりびと」のWOWOWでの放送を観ました。主演は中村勘太郎さん、田中麗奈さん、共演は真野響子さん、柄本明さん他。映画「おくりびと」('08) の7年後を描いています。

舞台『おくりびと』公式サイト
Wikipedia「おくりびと」



映画版の脚本も担当した小山薫堂さんが、演出家やプロデューサーの反対を押し切ってまでこだわった「悲劇」に賛否が極端に割れそうな内容だなと感じました。


確かに「おくりびと」が「死」を扱っている物語であり、主人公が「遺された家族」の気持ちを真に「理解・共有」し、納棺師として「成長」するために、この悲劇が物語として不可欠なのは「理解」できます。

それでも、やはりこの展開は後味が悪すぎます。物語上は、主人公夫婦が新たな一歩を前向きに歩き出す姿を描くことで、「爽やかな感動」のように見せていますが、「もう一人の遺された少年」のことを考えると、とても単純に感動は出来ないのです。年端も行かない少年に死ぬまで拭えない罪悪感を植え付け、それを救うことなく、単なる物語上の「道具」として使っているだけの物語は、僕には受け入れがたいのです。


とは言うものの、オリジナルの映画と同様、コミカルなエピソードを適度に盛り込み、「死」を描くことで「生」の素晴らしさを分かりやすく描くあたりの手堅さは見事だと思います。また映画のキャストとはイメージの違う配役も、思ったよりは違和感がなく、特に中村勘太郎さんの納棺師としての所作の美しさは、それだけでも見応え充分。さすが歌舞伎で鍛えただけのことはあります。惜しむらくは、納棺のシーンがあまりに少なかったこと。もっと「仕事」のシーンがあっても良かったのではないでしょうか。


好みは極端に分かれるでしょうし、僕自身は少々納得のいかないものがありますので、積極的に他人に勧めようとは思いませんが、「観て損した」ということはありませんでした。


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