小さな修養論/藤尾秀昭 14044 | 年間365冊×今年20年目 合氣道場主 兼 投資会社・コンサル会社 オーナー社長 兼 グロービス経営大学院准教授による読書日記

小さな修養論/藤尾秀昭 14044

小さな修養論/藤尾秀昭
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先日
をアマゾンで購入した際にレコメンドされていたので
ついつい買ってしまう。

この「小さな・・・」シリーズは既に一回は読んでいるはずの文なのに、
何故これほど心を打つのだろうか。
如何に「ぼーっ」として致知の巻頭リードを読んでいるか、
を目の前に突き付けられたような氣がして、愕然とする。


 将の資格

 昨年十一月、ブータンのワンチュク国王が
 結婚したばかりの王妃とともに来日、
 被災地相馬市の小学校を訪れ、子供たちを激励した。

 その折の言葉がいまも胸に響いている。

 国王は、ブータンの国旗には竜が描かれているが、
 自分は竜を見たことがあると切り出した。
 驚く子供たちに、国王は続けた。

 「竜は私たち一人ひとりの中にいる。
  竜は自分の経験を食べて大きくなる。
  年を重ねれば強くなる。
  自分の竜を大事にしなければね」

 短い言葉。

 だが、子供たちの心に残したものは大きかったに違いない。

 国王はその前日に国会でも演説した。
 のちに内容を知り、感嘆した。
 その内容の深さに、である。

 「ブータン国民は日本に強い愛着を持っており、
  震災後の日本のために祈り続けています」

 「日本はアジアに自信と自覚と進むべき目標を示し、
  多くの国々に希望を与えてきました」

 「三月の自然災害への対応では、
  日本及び日本国民は素晴らしい資質を示されました。
  他国であれば国家を打ち砕き、無秩序、大混乱、
  そして悲嘆をもたらしたであろう事態に、
  日本国民の皆様は最悪の状況下でも、
  静かな尊厳、自信、規律、心の強さを持って対応されました。
  文化、伝統的価値にしっかり根ざした
  このような卓越した資質の組み合わせは、
  現代の世界では他に見出せないものです。
  すべての国々がこれを熱望しますが、
  これは日本人特有の不可分の資質です。
  これらは数年あるいは数十年で失われるものではありません。
  そのような力を備えた日本から、
  世界は大きな恩恵を受けるでしょう」

 当年三十二歳。
 将の将たる人の見識と品格が溢れている。

 ブータン王国は「国民総幸福量」(GNH)を
 重視する国だという。

 国のあるべき姿を高く掲げ、揺るがない。
 そこにも将の将たる見事な資質が現れている。

 将たる人に欠かせない三つの条件、
 資格がある、と思う。

 第一は修身。
 常に我が身を修めんとする姿勢の根本にない者に
 将の資格はない。
 
 第二は自分のいる場を高めること。
 自分の場を高めるには、まず、あるべき姿、
 ビジョンを掲げること。
 そのビジョンに全員の心を奮い立たせること。

 呂新吾に素晴らしい言葉がある。

 「聖人の天下を治るや、
  人心を鼓舞し士氣を振作し、
  務めて天下の人をして含露の朝葉が如からしめ、
  久早の午苗の如きを欲せず」
  (聖人が天下を治めるのをみると、
   人心を励まして勇ませ士氣を奮い起こし、
   天下の人びとを露を含む朝の葉のように生き生きとさせ、
   長い旱魃続きの午後の苗のようにぐったりさせることはない)

 第三は「君子、時中(じちゅう)す」。
 時中とは時に適うこと。
 人生は変化の連続である。
 変化に対応して適切な処置を講じていける人物でなければ、
 将の資格はない。

 最後に、敢えて二つを挙げる。
 危機感と人間的迫力である。

 どんな組織も放っておいたら潰れる。
 国も会社も、である。
 組織の長たる者は常に危機感を忘れてはならない。
 
 その危機感を救うため、さらには理想現実のために、
 一歩も退かぬ人間的迫力。
 これのない者に将の資格はない。


ここまで引用して、やっと以前にも引用したことを思い出した。
致知 2012年7月号 特集「将の資格」 12203

書は出会うべき時に出会う。
早すぎず、遅すぎず。
早すぎても遅すぎても、目の前を流れていくばかり。
自分に問題意識、危機意識があって初めて、
本当の意味で出会えるのだ。