25話 奇襲の終了
熱戦が続くメイン会場。
一方、とあるパチンコ店では、「熱戦」が終わっていた。
水戸が笑顔で歩いている。
「さすがだな、高宮」
高宮が大騒ぎしている。
「はっはっは!大漁、大漁!神奈川メンバーにジュースでも買ってやるか」
野間が笑う。
「こんなところで勝ち運使ったら、神奈川負けちまうんじゃんねえか?」
大楠は真顔。
「おいおいヘンなこというなよ、チュウ」
ちょっと静かになった4人が会場に向かって歩いている。
「マジで買ってってやるか」
途中、コンビニに立ち寄り、ドリンクを買い込む。
メイン会場、洋平たちがコンビニ袋を両手にぶら下げて客席に向かう。
高宮が桜木を見つけて声をかける。
「おおーい!花道ぃ!ジュース買ってきたぞお、お前のはないけどな」
桜木は返事をしない。じっとコートを見ている。
「お~い、怒るなよお。冗談だよ。お前にもやるよ」
桜木はコートを見ている。
水戸が桜木の隣に立つ。
「おい、ジュース買ってきたぞ。飲めよ、俺達のおごりだ。
俺達っていうか、高宮だけどな」
桜木はやっと気づいた。
「おお、洋平か。サンキュー」
水戸は、やれやれといった感じ。
「全然気づかねんだもんな。さすがに、のめり込んじまったか。」
桜木が返す。
「ああ? 気づかなかっただけだよ。誰がこんな試合にのめり込むか。
俺がいねえ神奈川に用はねえんだよ」
「かわいくねえヤツだな」 水戸たちは自分の席に戻った。
安西が桜木に話しかける。
「流川君のプレーをずっと目で追っているようですね。感心、感心」
桜木、反発。
「おい、バカなこと言うなよオヤジ。この天才・桜木がなんで
キツネを気にしなきゃいけないんだ」
安西が笑う。
「ほっほっほ。まあ、いいでしょう。
おや、第1クォーターが終わりましたよ」
1stクォーター終了。
神奈川 26
秋田 20
かろうじて神奈川がリードを保っている。
神奈川ベンチ。
牧が流川に話しかける。
「絶好調だな、流川。あのダンク以降、お前しか点とってないぜ」
流川、うなづく。
「もっと点取れるとみた」
仙道、ニコリ。
「こりゃ頼もしいな。第2クォーターも頼むよ」
花形が秋田ベンチを見てつぶやく。
「まあ、あっちのエースも絶好調みたいだがな。流川のスティールが
火をつけちまったか。要注意だぞ」
清田が三井と宮城の前に立つ。
「ちょっと、どいてよ。オレ、“試合に出たから”疲れてんだよ。
ベンチに座らせてくれよ」
三井&宮城、憤慨。
「グッ、この1年坊主…」
そこに高頭の指令が出る。
「神、交代だ。清田と代われ」
清田が食いつく。
「な! なんでですか、監督! 第1クォーターの影のMVPと言われる
オレを外すなんて…」
三井&宮城、突っ込む。
「誰も言ってねえよ」
高頭、扇子。
「疲れてるんだろ? 清田」
清田、ガックシ。確かに先ほど三井たちに「疲れた」と言っていたが…。
「そ、そんな…」
高頭、大笑い。
「はっはっは! いちいち真に受けるな!
お前はよくやった。これは作戦上の交代だ。神、アップだ」
1stクォーターは、流川のダンク以降は点の取り合いとなった。
流川、沢北によるスーパープレイ集に、観客は酔いしれたのだった。
「すげえよ、この試合。山王は当然だが、神奈川もすげえ…」
「ここからどうなるんだ? 流川と沢北の打ち合いか?」
「終了間際までもつれるぜ、こりゃ」
神を入れてベストの布陣に戻った神奈川。
奇策は当たった。神奈川のリードで1stクォーターを終えた。
ここからはスタメンでがっぷり四つの戦いだ。地力を問われることになる。
まもなく試合再開。
つづく