彦一が絶句している。
「バ、バケモンや…。とんでもないセンターや…」

赤木と魚住も言葉を失っている。
「…………」

安西はニコニコしながら困っている。
「ホッホッホ。愛知にはスゴイ選手がいますね。
これは今後ウチの大きな壁となるでしょう」


1stクォーター終了。

愛知 36
沖縄 12


愛知センター・森重、23得点・6リバウンド・2ブロック。
たった10分で、通常の1試合分の数字を叩き出したのだ。


桜木は笑っている。
「なかなかやるじゃねえか、あのデカ坊主。
この天才の未来のライバルになりうるな、これは」

そのセリフを聞いて、赤木はしかめっ面。
「素人の特権か…。夏に山王のビデオをみたときといい、
そのすごさが分からないのは、ある意味幸せかもしれんな」

桜木、憤慨。
「なぬ? どういう意味だ! ゴリ!」




その頃、高頭が借りた体育館に神奈川のメンバーの姿が。
秋田戦を前に、最後の確認が終わったところだった。


高頭、拍手。
「よーーし!OKだ。今のパターンを覚えておけ」


選手たちは特に汗はかいていない。
動きのパターンを確認しただけのようだ。果たして何の確認だったのか…。


牧が藤真の顔を見る。
「なんとか上手くいきそうだな。藤真」

藤真が返す。
「これだけスムーズに実行できるとは正直思わなかった…。
たいしたモンだよ。神奈川のメンバーは」


高頭が全員に呼びかける。
「よーし。1時間後に出発するぞ。各自準備をしておけ。
あと、仙道! 寝るなよ」

仙道、ギクリ。
「はは。まいったな…」




国体会場。

試合がまもなく終わろうとしている。
森重、諸星ら主力選手はすでにベンチ。勝負は既に決している。


「強えええ!強すぎるぞ愛知!!」

「130対52って、8強のスコアじゃねええええ!」

「怪物センター!もう一度出て来ーーい!!暴れろーー!」


大歓声の体育館の中で、神奈川応援席は静まり返っている。

桜木は洋平たちと食事に出かけて不在。


赤木がつぶやく。
「間違いない。決勝の相手は愛知だ」



試合終了

愛知 138
沖縄 54

84点差。全国大会のベスト8でこのスコアである。

森重53得点、諸星31得点。
ちょうどこの2人で、両チームの得点差分の点数を稼いでいた。


そして

試合終了と時を同じくして、神奈川選抜のメンバーが会場入りした。



愛知のことなど、彼らの頭にはない。

来るべき決戦に備えて、12人は気持ちを高めていた。



続く