会議室のドアが開いた。

藤真が挨拶をして部屋に戻る。
「お疲れ様でした。明日は頑張りましょう」

藤真の背中を見ながら牧が言う。
「翔陽の監督は恐ろしい男ですね、監督」

高頭、扇子。
「はっはっは。面白いことを考えるやつだな、藤真は。
明日の試合、ますます楽しみになってきたわ」




長かった神奈川宿舎の夜が、ようやく終わった。





そして、夜が明けた。




メイン体育館。大盛況だ。

準々決勝からはメインの体育館で全試合を行なうことになる。
つまり、今日は4試合全てが同じ会場で行なわれるということ。

1回戦の愛知の試合から会場は満員である。


彦一がビデオを調節しながら愛知の練習を見ている。
「愛知の全てをあばいたるで。諸星、森重を丸裸にするんや」

その後に大男2人。
「彦一、朝からご苦労だな」

振り向く彦一、大声で挨拶。
「魚住さん!!それに赤木さん! おはようございます!!
でも、なぜ第1試合から? 神奈川の試合は今日の最終戦ですよ」

魚住がドシっと腰を下ろす。
「観たいから来ただけだ。今日は全試合観るつもりだ」

赤木も腰を下ろす。
「そういうことだ。あと、今日は神奈川から大応援団が来るらしいぞ」



「もう来てるよ」 



振り向く赤木。

木暮だった。後ろには安田、角田、潮崎、石井、佐々岡、桑田の顔。
「今日でベスト8だからな。精一杯応援しよう。
他の学校の部員もさっき見たよ。今日からの神奈川の応援は強力だぜ」



体育館の入り口。

海南、陵南、翔陽の部員がゾロゾロと入ってくる。
海南の武藤、陵南の池上、翔陽の高野、長野らお馴染みの顔がズラリ。
「ついに秋田との試合だ。神奈川オールスターの力が試されるときだ」

彼らも赤木たちと同じブロックに座った。



少し遅れて洋平や晴子も入ってくる。手には空っぽのペットボトル。
堀田は「炎の男!三っちゃん 八強編」の旗を持っている。
「おお、あれはゴリ、そしてボス猿も! メガネ君もいるぞ!」
洋平たちはガンガン鳴らしながら席に走った。


そして、会場に神奈川大応援団の席ができた。


晴子が聞く。
「でも、洋平君たちが初日から来るとは思わなかったわ。
神奈川の応援にわざわざ来るなんて、バスケが好きになったんじゃない?」

洋平が笑う。
「ははは。んなわけないだろ。俺たちは応援に来たわけじゃないよ。
“友達”に会うために来たんだ」

晴子、キョトン。
「友達? もしかして…」

洋平が答える。
「そいうこと。今日ココで会う約束してるんだ。秋田との試合は観たいんだと。
まあ、初日から来てるのは、ちょっと試合を観たかったってのもあるけどな。
バスケが好きになっちまったのは確かだ」




「ほっほっほ、今日は満員のようですね。さすがベスト8だ」



その声にすぐに振り向き、挨拶をする湘北メンバー。

「安西先生!おはようございます!!」




安西、赤木の隣に座る。
「赤木君、神奈川選抜の調子はどうですか?」

赤木が答える。
「強いですよ。優勝も狙えると思います。三井、宮城、流川も頑張っています」

安西、ニッコリ。
「それは何より」



そこに晴子が来た。安西に尋ねる。
「先生、彩子さんは来てないんですか?」

安西が答える。
「もちろん来てますよ。ちょっと人を迎えに行ってたんで
遅れているだけです。まもなく来るでしょう」



数分後。




「神奈川ファイトーーーーー!!!!」




いっせいに振り向く神奈川応援団。

大声の主は彩子だった。「さあ、決戦のときよ!!」




そして


その後ろには、赤い頭が見えた。




続く


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