高頭が借りた、ホテルの会議室。

ドアには 「打倒・秋田!緊急対策本部 立ち入り禁止!」 という貼り紙がある。


その前を宮城と三井が通った。

三井が不思議そうに見る。
「なんだコリャ。誰が中にいるんだ?」

宮城が答える。
「たしか、監督と牧と藤真だったかと…」

三井がニヤリ。
「ついにオレのスタメン起用を真剣に考え出したか。
オレは別名“山王キラー”と呼ばれる男だからな」

宮城突っ込む。
「誰も呼んでねーよ」



今度は仙道と彦一が通る。

彦一は相当気になるらしい。
「何やコレ。緊急対策本部って、かなり要チェックな会議では。
仙道さんも出席した方がええんとちゃいますか?」

仙道がニコ。
「俺はいいよ。監督でもキャプテンでもないし。
オレの役目は試合で戦うことだ。明日結果を出すだけさ」

彦一、涙。
「仙道さん…。明日の活躍ぶりが目に浮かぶで」



次は流川だ。大げさな貼り紙を見て、ひと言。

「どあほう」

そのまま去っていった…。




部屋の中。

高頭の問題提起。
「問題は河田だ。あいつに誰をつけるのか…」

牧が言う。
「正直、高砂には荷が重いかもしれません。
赤木でも太刀打ちできなかった選手ですから」

藤真が入る。
「妥当な戦は花形でしょう。身長は河田を凌ぐ。
中でゴリゴリ攻めるタイプでもないので、パワーのハンデも
そこまで気にしなくていいはずです」



高頭が聞く。
「ならば野辺はどうする? あいつのリバウンドは山王の
大きな武器だ。ウチに桜木でも入れば、迷わず当てるところだが…」

藤真が考え込む。
「仙道、流川のどちらかを当てるか…。あるいは花形と高砂を
一緒にスタメンにするという手もありますね」

牧が入る。
「いや、センターの同時期用は難しい気がするな。
2人同時にファウルトラブルになったらウチは終わりだ。
センターは2人しかいないんだから」



高頭が切り出す。
「牧、どうだ。河田を止める自信はあるか?」

牧が驚く。
「オレが? 河田をマーク…ですか?」

藤真がニヤ。
「そういえば、夏の予選で赤木をマークしてたな。
河田のパワーに対抗できる唯一の男は牧なんじゃないか?」



牧が言う。
「それで、野辺には高砂か花形をぶつけるということか…」

高頭が入る。
「まあそうなるな。
ただその場合、いかに牧といえど、40分間河田を抑えるのは
難しいだろう。機会を見ながら交代を上手く使わないとな。
藤真、お前の出番は多いかもしれないぞ。宮城もだが」

藤真が聞く。
「しかし、現実的ですかね、その作戦。牧がディフェンスに
専念することになってしまいますよ。誰が攻撃をコントロールします?」

高頭、腕組み。
「ムムム…。確かに」



藤真が切り出す。
「ひとつ考えがあります」

牧、高頭、身を乗り出す。





場所は変わって、ホテルの大部屋。


神奈川のメンバーが秋田の試合のビデオを見ている。


花形が長谷川に話しかける。
「穴がないな…。ゲームメイカー、スコアラー、ビッグマンと
全てのポジションに最高レベルの選手を備えている」

長谷川が返す。
「チームワークは全チーム中ナンバーワンだろうな。
他のチームが各校からの選抜なのに対し、この秋田は山王単体のチームだ。
いつものメンバーで、いつものやり方で戦えるってのは有利だぜ」



仙道と流川が並んでいる。
「流川、沢北はどうだ。夏より伸びてる感じがあるか?」

流川が答える。
「夏より強力になってる感じはある。
ただ、こっちも伸びてんだ。そんなことは関係ねえ」

仙道、ニコリ。
「お前らしい考え方だな。明日は楽しみにしとくよ。
お前がつくのか、オレがマークするのかは分からんがな」



神奈川の宿舎の夜はまだまだ終わらない





続く