長谷川がウォームアップを始めた。

現在2ndクォーター、5分を過ぎたところ。
得点は、神奈川31点、大阪29点。
わずかに神奈川がリードしているが、流れは大阪に傾きつつある。

高頭は完全に大阪ペースになってしまう前に、手を打ったのだ。


守備力のある長谷川を投入。


福田がファールを犯したところでブザーが鳴った。

「メンバーチェンジ。神奈川」

背番号9がコートに立った。


「神奈川、交代だ!」

「9番? 今まであまり出てない選手だな」



岸本が自分のマーカーを確認した。
「お、代わったか。確かにあの13番じゃ心もとないわな。
まあ、誰がついても同じやけどな」


土川から岸本へ。 

「行くで。9番」
1ON1から抜きにかかる岸本。

しかし長谷川は抜かせない! 岸本、抜けない!
「チッ、こいつなかなかやりおる…」


藤真が声をかける。
「ナイスディフェンスだ、一志!」


その瞬間、横から流川が岸本のボールを奪った。


「おお!流川だ!!」

「ナイススティール流川! オフェンスだけじゃないぜ!」


大阪陣内には土川と南。


南、感じ取る。
「来る。1対2でもコイツは来る」


流川、ディフェンス2人が飛んだのを確認して、後方にパスを出した。

「なにぃ?パスやと?」


そこに走りこんできたのは長谷川。

ノーマークでダンクを叩き込む!


「おおお!!流川ナイスパスだ!!」

「あいつ、なんでもできるな!」

「そして、9番のダンク! 交代で入った選手もすげえ!」


南がつぶやく。
「あいつ、変わったな。パスも覚えよったか。今日もええのが何本か出とる」

横から藤真が来た。
「お前も変わったんじゃないか? エースキラーなんて
言われてたのが、嘘だったかのようなプレーだな」

南は藤真の顔を思い出した。
「お前、去年の翔陽の奴やな。どっかで見た思うたら」

藤真がまっすぐな目で南を見る。
「今度は負けない! 俺たちは日本一になるんだ」


長谷川が入って、神奈川のリズムがよくなった。

ディフェンスの穴がなくなったことにより、大阪の攻撃が単調になったからだ。
大阪は、土屋の個人技中心になったのだ。
しかし、仙道が簡単には抜かせない。土屋が力を発揮できない。

ペースは神奈川に戻った。


前半終了。


神奈川 51
大阪   42

最終的に9点の差をつけて試合を折り返すことになった。




大阪ベンチ。

土屋が困惑している。
「マズイな。攻撃がうまく行かない…。あの9番が入ってから
攻めづらくなってしもうた。仙道もええ守備をしとる」

南が案を出した。
「もうこうなったら、賭けに出るしかないんちゃうか。
残念ながら、総合力では向こうの方が上や。
土屋と1対1でやりあえる奴がおるというのは、完全な誤算や」

岸本が聞く。
「賭けって、どないするつもりや、南」

土屋が言う。
「言わんでも分かるで、南。おい板倉、交代や。お前2番(SG)に入れ」

岸本が笑う。
「土屋、やるやないけ。もう点の取り合いや。個人技で劣るなら
勢いで勝負っちゅうことやな。ノッたで」

土屋。
「よし!後半は走りまくるで。少々点取られても気にすんな。
勢いで押すんや! 最後に点が多かった方が勝ちや!」


「おう!!!!」



神奈川ベンチ。

高頭が選手を集めた。
「いい出来だぞ。ペースはこっちのものだ。第3クォーターで
叩いてしまうぞ。ここで勝負を付ける。神、三井! 長谷川、流川と交代だ」

藤真が聞く。
「外で勝負ってことですか?」

高頭が答える。
「そういうことだ。神と三井は、ノーマークは全部打っていい。
3点でとどめを刺すんだ。これが成功すれば大阪は終わりだ」


点の取り合いに勝負をかける大阪。

長距離砲でとどめを刺しにかかる神奈川。


3rdクォーター、試合は大きく動くことになる。



続く