現在タイムアウト。

10-2で神奈川の8点リードである。


「よーし、よしよし、上出来だ。完全にこっちの流れになってるぞ。
このまま手を緩めずに攻め続けろ!」

高頭監督が叱咤激励する。



大阪ベンチ。

岸本が騒いでいる。
「あの12番、調子コキやがって。あいつが仙道やな。
土屋、マーク代われ。ワイが仙道をマークしたる」

土屋が冷静に切り返す。
「まあ、落ち着け岸本。このままじゃマズイ。
やり方を変えたほうがエエみたいや」

南が聞く。
「どうするつもりや、土屋。まさか、速攻やめるとか言うつもりか?」

土屋が答える。
「いや、テンポはこのままでいい。ただ、もっと向こうの穴を突かなアカン。
12番(仙道)と15番(流川)のトコは捨てた方がエエと思う。
13番(福田)のトコから攻める方が得策や」

岸本がニヤリ。
「ワイを中心に攻めるいうことか。土屋、よう分わかっとるやないけ」

土屋が返す。
「いや違う。岸本、オレにスクリーンをかけろ。マークをスイッチさせて
オレに13番がつくようにするんや。オレが勝負する」

岸本が怒る。
「なんやと? ワイには任せられん言うんか、土屋」

土屋が諭す。
「話は最後まで聞け。オレのマークを緩くさせるだけや。あくまでも
フィニッシャーは、南、岸本、お前らや。オレのパスに合わせろ」

南、岸本、しぶしぶ納得する。
「ケッ。大物ぶりやがって。ええパス出さんとタダじゃおかんぞ。
しょうがない。お前の言うこと聞いたるわ。ただし仙道のマークはワイがするで」



タイムアウトが解けた。

両軍、コートに戻ってくる


高砂のフリースローから再開。 高砂、落ち着いて決める。


牧が拍手。
「よーし、ナイッシュ!高砂!」



大阪の攻撃。

土屋がボールを運ぶ。仙道がピッタリついている。

「土屋!」
岸本が仙道にスクリーンを仕掛けた。

「福田、スイッチ!」
仙道の合図で、土屋に対するディフェンスが福田に代わる。


瞬間、土屋がドライブを仕掛けた。


「よーし!行けえ、土屋!」

「おお!4番(土屋)鋭い!」


福田が抜かれた。

流川がヘルプに来る。


待ってましたとばかりに、土屋は外で待つ南にパスを出す。

南、スリーポイント。見事に沈める。


「よっしゃ!!さすがや南!!」

「おお!5番(南)スリー来た!」

「4番、すげえパスだぞ!! さっきの仙道みたいだ!!」


ベンチで感心する彦一。
「土屋…、さすがや。ノーマークの味方を見つけるんがウマい。
やっぱり仙道さんと同じタイプの選手や」

牧もうなずく。
「確かにいい選手だ。福田じゃぁ止められんな」



神奈川の攻撃。



「オラぁ!来てみいや、仙道!!」
岸本が仙道についている。無理矢理、土屋と代わったようだ。


「コイツか…。彦一が言ってたのは」
仙道、1ON1の構え。


その時!

後から土屋がボールを叩いた。


「おお!土屋!ナイスや!!」

「仙道がボールを取られたぞ!!ナイスだ、あの4番!」



ボールを取った岸本が走る。

福田がマークに入った。


「お前は相手にならん!!どけえ!!」

岸本、単純なフェイントから福田を抜く。


「2度も簡単に抜かせんな、どあほう!」 流川がカバーに入る。


「読み通りや!」
岸本は南にパスを出した。


しかし、南へのパスを読んでいた仙道が、チェックに入った。


南、今度は土屋にパス。 土屋、ゴール下へ切れ込む。
高砂にチェックされながらもボールをゴールにねじ込む。

ザシュ!


「よーーーしゃあああ!ええぞ土屋!!」

「おいおいおい!ファウルちゃうんか? エンドワンやで今の!」



大阪が点差を一気に5点縮めた。スコアは11-7。

神奈川のリードは4点となった。


大阪は落ち着きを取り戻し、速い展開と、土屋を中心としたセットオフェンスを
織り交ぜた、バランスのいい攻撃が戻ってきた。

一方、神奈川のペースも落ちない。大阪は流川、仙道を止められず、
神奈川の攻撃をシャットアウトすることができない。


こうして、点の奪い合いが続いた。


だが、流れは徐々に大阪に傾いていた。



福田の場所から、神奈川のディフェンスが崩されているからである。


高頭が牧に話しかける。
「福田のところから徐々に崩されているな。このままのペースで行くと
大阪に持っていかれてしまう。今はまだ浮き彫りになっていないがな」

牧が答える。
「確かに。ディフェンスを強化した方がいいかもしれませんね」



高頭が立ち上がった。
「長谷川。行くぞ」


神奈川の守備のジョーカー、長谷川に声がかかった。


花形がニコッと笑う。
「一志。見せ場だぞ」


長谷川がシューズの紐を結び直した。



続く