初日終了。

大阪、福岡、京都といった上位候補チームは
下馬評どおり2回戦へコマを進めた。

神奈川も圧倒的な強さを見せて、優勝へ一歩前進した。


メイン体育館の前。大勢の選手でにぎわっている。
結果を確認すべく、トーナメント表の前に各チームが集まっているからだ。

神奈川のメンバーもここにいた。



「さすがの試合だったな。牧」


振り向く牧。


声の主は“愛知の星”諸星だった。


牧が聞く。
「見てたのか、諸星」

諸星が答える。
「ああ。俺たちはシードで今日は試合がなかったからな。
しかし派手な試合を見せてくれやがるぜ」


トーナメント表を確認する牧。
「お前らと当たるとしたら、決勝か…。そういや、夏は
準決がウチ(海南)と愛和で、決勝が名朋だったな。
愛知のチームとまた戦うってことか」

諸星もトーナメント表を見る。
「あん時は負けたが、借りは返すぜ。今回はすげえ1年(名朋の森重)がいるからな。
まあ、コレが終われば敵になるから、正直微妙な気分だがよ」

フッ、と笑う牧。
「借りを返すのは、ウチだって一緒だ、夏の決勝でその1年にやられたんだからな」

笑い返す諸星。
「ウチもそっちの1年生に注意しなきゃな」



清田の目が光る。
「さすが愛知の星。俺の力をよく知っている…」

「いや、違うと思うぞ」 速攻で三井と宮城が突っ込む。



諸星が流川に話し掛ける。

「流川。夏にウチ(愛和学院)とやったときは、不完全燃焼だったか?
山王戦とは大違いだったぜ。今度はきっちり決着つけてやるよ」

流川、目がギラリと光る。
「フン。てめーも倒して日本一になってやる」



そこへ一つの野次。

「おいおいおい! そこまで行けるんかいな」

岸本(豊玉)ら大阪のメンバーだった。


神奈川が勝ち進んだ場合、順当に行けば3回戦で大阪と当たるのだ。
つまり、「俺たちに勝てるのか?」と岸本は言っているわけだ。


三井が煙たそうな顔をする。
「なんだ。またテメエらか。悪いがとっくに眼中にねえんだよ」



三井を無視して、岸本は流川にふっかける。
「おい、ナガレカワ。夏のカリは返させてもらうで」

流川の返事。
「…………だれ?」


「だーーはっはっはっは!!いいぞ流川!!」
涙を流す三井、宮城、清田。
「無愛想なくせに小技が利くじゃねえか!」


「やるな。流川…」 諸星ちょっとビックリ。

「どっかで見たシーンだな」 と思ったのは、牧。



仙道の後ろでヒソヒソしゃべる彦一。

「仙道さん。あの4番、土屋って言うんですが、あいつには要注意です。
ちょっと仙道さんに似たタイプの選手ですわ。」

ニコニコ顔の仙道。
「そうか。楽しみだな」


藤真は大阪の5番を見ている。
「南…」

花形も気づく。
「豊玉か…。またやることになるとはな。もっともあの時俺は出てないが。
藤真、ヘンなことは思い出さずにゲームに集中しろよ」

藤真が返す。
「ああ。わかってるよ花形」



「あ!」 



彦一が何かを思い出したようだ。

そしてまた仙道にヒソヒソ。
「仙道さん、あのチョンマゲ(岸本)だけはコテンパンにやったってください」

よく分からない仙道。
「ん? どうした彦一?」

続ける彦一。
「昔、『仙道さんに恥かかす』みたいなこと言うてたんですわ。
どっちが上か見せ付けてやってください」

ニコッとする仙道。
「わかったよ」




牧が解散をうながす。
「さあ、試合前にくだらん話はやめよう。そろそろ宿舎に帰るぞ」


その時、

「流川!」

諸星が呼んだ。



振り向く流川に、ひと言告げる。

「知ってるか? 山王の沢北、今回の国体のメンバーに入ってるぜ。
夏にお前らに負けたのが、よっぽど悔しかったんだろうな。
留学を延期したらしい」


流川、目の色が変わる。



仙道はちょっと何かを考えてるようだ。

「沢北………。北沢じゃなかったっけ?」





続く