眉間にシワ
列車を待つ間、中途半端に時間があったので駅舎にある喫茶店へ入った。店内は結構込み合っていて喫煙席しか空いていないという。
煙草を吸わなくなって数週間…。
他は満席。
しかたなくケムたい一角へ。
懐かしい空間。
この間までは喜んで座っていた場所。
「もう俺はこっち側の人間ではないんだ」
心の中で誇らしげに呟きながら珈琲を待っていた。
座るなり煙草に火をつける人。
座る前から煙草を咥え準備しながら席に向かってくる人。
「やっと煙草を吸える場所にたどり着いたんだね」
喫煙席で煙草も吸わず余裕の心持で眺めている自分。
珈琲がテーブルに運ばれてきた。
一口すする。
う、まずい。
思わず眉間にシワが寄った。
だけど、もうそんなことに文句は言わない。
煙草を我慢できる男になれたんだ…。
まずい珈琲を、眉間にシワを寄せながらグッとこらえて飲み干すのが男ってもんじゃないか。
中村信仁