12月号の『彷書月刊』の特集記事は、「途をいずれに 生誕百年竹中英太郎」なのだ。ページの半分ほどをこの特集で割いており、力の入れようが窺い知れる。巻頭が五木寛之氏、そして宇野亜喜良氏と喜国昌彦氏による対談、グレゴリ青山氏の超特大版のグレちゃん、そして竹中英太郎記念館の館長でもありご息女でもある金子紫(かねこゆかり)氏が父英太郎を語る。うーん、どこから手をつけても面白い内容なのだ。子息、労と父親の絆の強さも、執筆者たちの証言でよくわかる。挿絵画家として人気絶頂だった英太郎画伯が絵筆を折った理由の一端も垣間見えて興味深い。小松史生子氏が「乱歩、正史、久作---三人の作家と英太郎の世界」の中で画伯の述懐を載せている箇所がある。
「挿絵画家としての自分の後悔は、ただ一つ、『ドグラ・マグラ』の挿絵を担当できなかったことだ。」
まさしく小松氏も述べているように、実現していたならば鬼火以上の最高傑作になっていたやもしれない。叶わないことだけれども何だか想像するだけでゾクゾクしてしまう。いやー、英太郎版チャカポコは観てみたかったなあ。これを読むと、ますます甲府の記念館に足を運びたくなっちまった。 ふらっと行っちゃうよ。そんな思いを引きずりつつ目録へと移る。どれどれ、英太郎関連の書物はでているかしらんと字面を追っていくと、あるある、案の定『竹中英太郎作品譜 百怪、我ガ腸ニ入ル』(三一書房)が二点もでている。さて幾らかとみてみれば、さすがに特集だけあって強気な値付けである。それでも売れちゃうんだろうなぁ、などと溜息をついて、始めに戻って再読するのであった。