『小説・読書生活』を読んでいる。この奇妙な小説をどのように伝えてよいのか解らない。読み始めると、まずはその作者の独特の世界観に戸惑う。これは小説なのかという疑問と、まだらな文章が脳味噌に流れ込んでくる。得体の知れないものを手探りでつかもうとするような感覚で、どうも不安定で落ち着きのないまま進んでいくことになるのだ。途切れ途切れに進む物語がそれぞれ短編小説のようでもあり、作者の欲求不満な独白のようでもあり、単なる夢日記にも思えてくる。めくるめく物語を消化不良のまま読み進めていくと、次第にこの作品の一端が垣間見えてくるのだ。後半、ある男がつぶやく。


「多分それは終わりのない小説だろうと思うんです。そして矛盾しますが、鮮烈で美しい結末も無ければいけないのです。それは普遍的でありながら個のモチーフを持ち、個でありながら全体に還元されるイメージなのです。ああ、そんなもの、有り得ないです」


そして結末。最後の文章を読み終える。するとそこが始まりであることに気づく。慌ただしく初めのページに戻り、物語のこれからの展開を期待して読み始めている自分が居る。いつ読み終えるともわからないまま、当分、読書生活が続きそうだ。


関戸 克己
小説・読書生活