10月7日。

いきなり余談から。

前日、タイムスリップランデヴーの事務所のかたに
“あれ? 今日は打ち上げ出られないんですか~?”
と聞かれ、
“あーすみません~今日はちょっと。
明日、朝からキノコ狩りなんで”
と断ったオレ。

飲みの誘い断る理由がキノコ狩り。
すてき。

……

空気は冷たさを帯び、秋の気配が漂い始めている。
たくさんあった藤野のお祭りも
そろそろクライマックスといったところだ。

今日、明日は藤野の篠原という地区で
“ぐるっとおさんぽ篠原展”というお祭りが開催されていた。
篠原のあちこちで展示や体験教室、食べ物屋さんやライブ、
オーラソーマなどなどいろいろな催しがあって、
私たちは篠原地区をのんびりお散歩しながらそれらを楽しめるのだ。
明日は友だちが遊びにくることになっていて、
一緒にゆっくり散歩する計画。
今日は、こもりくでこれまた人づてで紹介してもらった
(といっても一方的にはよく知っていたのだけど)
リズムサークルじゃねんずの集まりに混ぜていただいた。
じゃねんずは夕方から篠原の里のコンサートに出演予定。
で、その前になぜかキノコ狩り。


草をかきわけ山を登る。
手足にまとわりつく蚊や、
洋服にまとわりつく種子と格闘しながら
じじっと地面に目をやると、
いるわいるわ、あちこちにキノコが生えている。
見たこともないようなキノコ、
イラストで描かれがちなファンタジーなキノコが
本当に生えている。うわぁ、ギャグみたいだ……。
ひょこっと小人が現れそう。
見慣れた雑木林に、白い、漫画みたいなキノコ。
わりとリアルにその場面が思い浮かぶ。
小人はやっぱり何人かいたほうがよりリアルだよな~……。
リアルじゃない妄想が駆け巡る。

キノコキノコと、道の両脇、斜面に目を凝らしながら歩いていたら
時間はあっという間に過ぎていった。
新しいものを発見するたび、踏み出す土と自分の足が
この土地の気流に馴染んでいった。
山は静かで、そのくせ、静けさの奥深くで
ひっそりと生命を育む音がする。


まぁでも、残念ながら収穫したキノコは
ほとんどが毒キノコ(笑)。
見分け方がわからない初キノコ狩りな人たちは
明らかな毒キノコ以外はボンボン袋に入れていく。

その後、じゃねんずの長、飛龍さんちでキノコ会議。
キノコ図鑑を片手に、毒キノコと食べられるキノコを選別。
1度食べられると判断されたキノコでも
いや、待てよ、
ということになって調理寸前で再会議にかけられるという
かなり混乱を呈した会議になった(笑)。
なにせ下手したら命に関わりますから~!
みんな真剣そのものである。

昼ご飯は収穫したキノコとなすを炒めたものに
パスタとサラダ。
どかーんと大皿にのって出てくる。

大人数でテーブルを囲んでいたら
誰かとごはんを食べるのって楽しいな~って、
朝のみそ汁みたいにその楽しさがじんわり染みてきた。
ひとり暮らしが長いと
誰かと食べるごはんのおいしさを忘れがちになってしまう。
おいしさ倍増、するんだなー。
楽しくって、この時間が終わらなければいいのに、って思う。

洗い物をしていたら
おもむろにリズムセッションが始まる。
太鼓の音につられて
近所の子どもたちも遊びにきた。
オレもジャンべを借りて混ざる。
あー、なんで音楽ってこんなに楽しいんだろうなぁ。
オレはいつも見るばっかりだけど、
こうしてまがりなりにもセッションに参加していると
音楽やっている人たちの気持ちがわかる気がする。
エネルギーの渦の中にいるんだって、感じる気もちになる。

午後からは篠原展の拠点になっている篠原の里へ。
石釜で焼かれたピザをみんなでシェアしながらコンサートを見る。
その後、子どもからお年寄りまで
大勢参加しての30分のドラムサークル。
あ~楽しいなぁ~。音楽はホント楽しい!
けどそれ以上に、この楽しさを生んでいるのは
参加している人が、ニッコニッコニッコニッコ
ものすごい笑顔で太鼓を叩いているからだ。
大人になると若干わかりづらくなるけれど
人ってやっぱり嘘はつききれない。
音楽をとおして、言葉をとおして、絵をとおして
写真をとおして、表情をとおして。
楽しい、って全身から滲み出て、勝手に伝わる。

終わって、楽器の片付けをしていたら、自然に
“あー楽しかった!”
って言葉が口からついて出た。
呼応するように、隣にいた人も
“あー楽しかった!”
って言った。オレも負けずにもう1回
“あー楽しかった!”
って言う。
なんの張り合い? よくわからないけど(笑)。
楽しい時間は本当にあっという間だ。

夜は、再度キノコ会議しつつ
キノコを食す。
食べられるキノコの中に、
どうやら1本だけ食べられないキノコが混じっていたらしく、
どっちが当たるか、さながらロシアンキノコ状態。

初めて話した人ばかりだったのに
なんだかずっと昔から知っているような
気負わない空気が漂って、手足が伸びる。
いつもいつもガチガチに固まっている私の体が、溶ける。
居心地のいい、この空間の出どころはどこなんだろう。

帰ろうと外に出ると、
満天の星空だった。
こもりくのことを思い出して、
みんなではくちょう座を探した。
話していた人の右の肩越しに
ちょうど、流れ星が落ちる。
“あっ!”と言う間もなく、
そこには夜の闇だけが残る。

瞬間、自然に溶けつつある自分の身体を思う。
藤野に住んだ、必然と偶然を思う。

この瞬間を忘れないようにしよう、と思った。