私がかよっていた専門学校はハードロックやヴィジュアル系が好きな人がとても多い専門学校だった。かくいう私も、入学当時はそういったものも好んで聴いていたゆえこの学校に惹かれたという点も、否めない。もっとも、いちばんの理由は学費がその手の専門学校の中では比較的安かったことと、1日2限しか授業がなかったのでアルバイトがいくらでもできると思ったところがでかい。

1年生の中盤から、私はフリーペーパーを作り始めた。
編集プロダクションで働き出すやつ、フェードアウトするやつ、
たかが授業で悔しくなるぐらいいい文章を書くやつ、
面倒くさいやつ、そもそもやる気がないやつ、
いろんなやつがいた。

音楽の専門学校は
授業に出てこない輩も多い(ま、私もだ)。
卒業する頃には半分程度は消えていなくなり、
就職となると音楽関係に就職するやつは
片手で足りるぐらいになる。
それでも、私の学年は豊作だった、とのちのち先生に言われたぐらい
いろんなやつが音楽系の職業についたり、
音楽に関わることを卒業後も続けていた。
同級生に仕事で再会することほど、嬉しいことはなかった。

そして、同じクラスにもうひとり、
私と同じようにミニコミを作っているやつがいた。

ヴィジュアル系のミニコミだった。
印刷の知識がない私に
印刷所を紹介してくれたのが彼女だった。
ミニコミの苦労がお互いわかるということで
卒業間近になって、仲良くなった友だちだった。
ジャンルがまったく違うので
意味ないかもしれないけど……
と言いながら、お互いのミニコミに交換広告を掲載したりした。

彼女の作るミニコミは本当に面白かった。
何がいいって彼女の文章がいいのだ。
おそろしく笑える、絶妙の語り口と企画が満載だった。


卒業してしばらくは連絡を取っていたが、
どちらからともなく連絡は途絶えた。
それがもう、7年も前のことである。

今日、暇に任せてインターネットで検索していたら
ある雑誌のサイトが引っかかった。
なぜか見覚えがあった。
しばらくの記憶回想を経て
思い当たった。
まさか、と思った。
でも、そうだった。

彼女のミニコミのサイトだった。

彼女、続けているんです。
あれからずうっと。
今も、そのミニコミを。

彼女が取材していたバンドのいくつかは
今は相当有名になっている。
おそらく、ミニコミの規模としては
相当でかいものになっているだろう。

すげー。すげーな。
サイト見てたら、
なんか感動で涙が出てきた。

続けるってすごいことだって
大変なことだって
続けられなかった私はよく知っている。

だけどきっと彼女は
あの当時のまま、飄々とした表情で
全然寝てなーい、と
まったく大変な素振りもなく
本を作ることが好きで、バンドが好きで
ただそれだけで作り続けているのだろう。
すげー。すげーな。

どう暮らしていくかを考えたとき、
無理はしないと決めた。
そのかわり嘘もつかないと決めた。
私の気もちは今どこにあるのだろう?

のんびりだけど
またどこかに向かって
1歩進んだ。