じつは、朝から不吉だった……。

ここに越してきて2度目の水漏れ。
またしても1階は水浸しらしく、直るまではトイレ・お風呂が使えないという事態。なかなか直らず、外ではいよいよ下水道の大工事がスタートした。よりによってなぜ今日なんだろう? とキリキリしながら、気もちを切り換えようと掃除機をかけ、チャチャチャと簡単にできるお惣菜をこしらえる。

本日はお隣、相模湖の花火大会。先日、花火大会があるよ、という話をしていたら、スタッフをやっているバンドのメンバーがふたり、はるばる千葉から遊びにきてくれた。千葉からとなるとちょっとした旅である。どーだー、千葉までライブを見に行くオレの旅気分がわかったかーと言いたくもなる。水漏れ事件のどんよりした気もちを多少ひきずりながら、待ち合わせ場所まで迎えに行く。

ところが、そこにいるふたりを見たら
この町に仲間が立っている不思議さと、
この町に仲間がきてくれた嬉しさが、
ぶわんと込み上げた。瞬く間に雲は消える。

偶然が必然だったり、不可能が可能だったり、小さな花が主役だったり、そういう些細なことで人の表情はコロコロと変わる。

だってね、藤野に越してきて、初めてのお客さんだったのです。
記念すべき第1号。それが、とても嬉しかったのです。

あちこち藤野巡りをして電車に乗ってお隣の相模湖駅まで行った。人ごみがすごい。ひとりだったら、絶対行かなかったな、と正直思う。だけど花火は、感動的にきれいだった。ああ、面倒くさがって見逃したりしないで本当に良かった。でかくてでかくて、アナウンスが面白くて(笑)、首のうしろが痛くなるぐらい空を見た。右側の空と左側の空を、交互に見る。見逃すまいと、黒目を光らせる。目はピリピリしているのに、ああいうとき、なんで口って自然にあいちゃうんだろう。そしてなぜかときどき、むしょうにおかしくなって笑ってしまう。おかしいのは、夢と現実の区別がつかなくなってくるからかもしれない。

花火のあとは、長々といろいろな話をした。藤野の夜は涼しい。冷房はつけず、窓を開ける。扇風機の音と、私たちの声と、かすかに流した音楽だけが響く。この部屋に、会話が存在している。

ふたりが帰ったあと、部屋はガランとした。
部屋の角に置いてあるパソコンの前から全体を見渡す。
いつもと同じ光景のはずなのに、
こんなに寂しかったっけ? と思う。