桜の時期に、必ず思い出す文章がある。
確か中学の国語の教科書で読んだのだと思う。
鮮烈に、桜のイメージが脳裏に浮かびあがる文章だった。
桜の染物の色が、花びらではなく樹皮から生れるという話で、
桜は樹全体で桜色になろうとしているのだ、という内容だった。
その桜の話と、著者のことばに対する見方、感じ方といった
共通点が綴られていた。
毎年思い出す度、いつも、満開の桜が脳裏に浮かぶ。
このことは、なんとなく誰にも話していなかったのだが、今年初めて主人に話してみた。
記憶違いしていたら悪いと思い、確かめたかったが、教科書はもうない。
処分したことを初めて悔やんだ。
そこで、初めてネットで検索もしてみたのだが、
作品名、作者名とも記憶とあっていて、文章もほぼ覚えていた通りだった。
「ことばの力」 著者 大岡信
久しぶりに読んで、一切の無駄のない、美しい文章だと、
あらためて感動した。
と同時に、今も鮮やかに蘇るほど、中学生の自分にとってそれだけの衝撃があった、
訴えかけてくれた文章だったのだと思った。
中学時代の感受性の強さのようなものもあったのだろうか。
どちらにせよ、懐かしい文章との再会に、感激もひとしおであった。
いつになく強い文調だけれど、率直な気持ち。