「ジジジジジィー。」
蝉が暑さを歓迎するかのように、元気良く鳴いている。
私は、母に頼まれ、田舎の親戚の家にお届け物を持っていった。
田舎といっても、自宅から車で10分ほど。
でも、少し車を走らせ、国道を横切るトンネルをくぐると、そこは別の町のよう。
町というよりも田舎という呼び名が似合う感じで、畑に田んぼ、そして家々は、懐かしい木造平屋が立ち並ぶ。
生垣の木々が生い茂り、細い車道の両脇には、家々への砂利道がはしる。
車を近くの公民館に止め、お届け物を持って、細い小道を暑い日差しを浴びながら、てくてくと歩いた。
2分ほどで、親戚のどこか懐かしい家に着く。
「こんにちはー。」
返事が倉庫から聞こえた。
倉庫では、おじいちゃんとおばあちゃんが美味しそうな採ってきたばかりのナスをビニール袋につめていた。
作業をやめて、元気かぁとか、暑い中ありがとうと、会話をしながら玄関へと向かう。
入ると石畳の上に小さなテーブル。
おじいちゃんが縁側に座布団を引いてくれ、おばあちゃんが冷たい麦茶を出してくれた。
そこは暑いはずなのだけど、すごく気持ちのよい空間。
私が来て、嬉しそうな、おじいちゃんとおばあちゃん。
帰りに、持ってきたお届け物よりも重たい、たくさんのナスを頂いた。
おわり