昨日は、某ドラム音源に収録されるデモ演奏のマスタリングという、なかなか興味深いお仕事。
曲もかっこいいし、音も良いし。
FUSION・Jazz・Metalと全然違うジャンルの3曲。
担当さんから
「この曲はこれくらいの音圧で、これはこれくらいでハイは少しカットして…」
と細かく指示をいただき作業開始。
合いそうなプラグインを曲ごとに試したり。
アウトボードを通したり。
マスタークロックも、HD I/Oの内部を利用したり、外部クロックに切替えて良い方をチョイスしたり。
モニタリングしているスピーカーの上にはSlashとVenom。
こういうアメリカ臭のするフィギュア好きなんです 笑。
とりあえず一旦提出。
おそらく元のファイルのアレンジが大幅に修正されるなど無ければ、これで納品になるかなぁと。
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よく音楽の仕事をしていると、クライアントさんから
「ここは自由にやっていいよ」
とか
「ここはイメージが無いので何か考えて自由に埋めてください」
と言われる事があります。
なんか"信頼されているんだな感"が詰まったこの言葉ですが、
僕はこの言葉、結構危険な言葉だと思っていて 笑。
だいたい自由に演奏したりミックス・作曲したものを納品すると
「聞いてみたけど、イメージと違う」
とか
「やってもらってイメージが湧いたけど、これじゃなくてこうして欲しい」
と言われてリテイクになる事が結構多い。
最初から修正まで込みの制作費を貰っていたり、大きなバジェットの案件であれば僕も「はいそうですか」とリテイクもしますが、だいたいこういう話になるのは予算が限られている現場で多く、修正を行い始めると予算と作業のバランスが取れなくなる事も多いです。
仮に「弾いたギターのリズムがヨレていた」
とか
「ボーカルコーラスで完全にラインを間違えていた」
など、明確な瑕疵が自分にあれば別ですけどね。
「自由にやっていい」と言われた上で、それなりに知恵を絞って行った楽器の演奏も、ミックスも最新の注意を払って行った結果、納品したテイクに
「それは違う」
と言われると、
「だったら最初から指示を出してくれ」
と思うのが仕事を受けた側の心理です。
例えば、自分がオーダーメイドで服を作るとか家を建てるなんて時に、自分の好きなデザイナーさんに
「僕にはプランが無いので、あなたの完全に好きなように作ってください」
と言って完成したモノが、自分の好みに完全に合う確率なんて絶対に高くない。
だから自分がプロのデザイナーさん相手に要望を的確に伝えて打ち合わせをして作っていく訳です。
服や家などはモノが残るので
「自由に作ってとは言ったが出来た物が気に入らないので、もう一度作ってくれ」
とは言いづらいでしょうし、行う場合はまた材料費や人件費などもかかる事もわかりやすい。
だから追加で費用がかかるのも比較的分かってくれると思うのですが、音楽は形に見えないものなので、何故か直し(リテイク)は無料で行うような風潮もあるような気がします。
「イメージに合わないテイクを作ったのは100%作り手のせいだ」
みたいな。
音楽を作るのも修正するのも、服や家を作るのと同じように、時間も人手もかかりますが、何か分かっていない。
特に意見が無かったのに、何かした事についてクレームを言ってくる状態。
言ってしまえば「リアクションディレクション」については、ミュージシャンの友人はだいたい経験しているようです。
最近聞いた話だと、
「知合いだと思って安くアレンジを引き受けて、○○さんの自由にやってくださいよ、と言われたので自由に作った。
自由といっても、自分は手を抜いた事もないし、ちゃんと作品として成立するものを作ったつもり。
そしたらイメージ違うと言われて作り直しだよ。
結局かかった時間を時給で換算したら、コンビニバイトしていた方が高いくらいだった。
音楽を作る、アレンジするなんてのは謂わば専門職でもある筈なのに。」
なんて言ってた方もいます。
かと言ってイタズラに制作費を上げると
「安くやってくれる人がいるからそっちでやる」
と言われる事もあり。
特に最近はクラウドソーシングでの音楽制作募集も多く、安くやる事がスタンダードになっているような風潮もあります。
しかも応募者は
「クライアントさんの気が済むまで、この提示された予算でリテイクは行います」
みたいな事を書いている人も多い。
いやそれは凄い忠義心だなぁとは思うけれど、それが横行してくると業界自体がダンピングの嵐になってしまう。
まぁ、何が言いたいかというと、
「誰か(個人・法人問わず)と音楽を制作する際は打ち合わせが大事です」ということです。
・自分の持ち場、言った言葉の責任はちゃんと取る
「自由にやっていい」と言ったからには、出されたモノに文句を言わない
・おかしいと思った事はちゃんと伝える。
・ギャランティーが発生している場合は、そのギャランティーの金額と、出来る線引きを最初に決める。
そしてクライアントさんは音楽制作者側を安く叩かない。
受け手側は自分に無理が祟るような金額と日程では仕事を受けない。
音楽制作、レコーディングには時間も労力もかかるものです。
良い音、ちゃんとしたクオリティで納品出来る音楽を作るには、機材を揃えるにも資金がかかります。
安い制作費でやり続けると、業界全体が低コスト化に向かうので、新しい風が吹きませんし、機材をブラッシュアップとて良いモノに買い換えていく事も出来なくなるので先細りです。
これは物作りと一緒です。
今回のドラム音源に収録されるデモ演奏のマスタリングは、そういった懸念が全くない稀有な案件でした。
こういう案件が増えてくれるかどうかは、クライアントさんのモラルと受け手側の信頼度に依るものだと思います。
そういう関係を築いていけるような仕事をしていきたいですね。
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mamoru-y 2nd album.
2016.02.29 配信開始。
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