「後見制度支援信託」って実際のところどうなんでしょう?
もし、あなたが親族の後見人になって、後見制度支援信託の利用を検討することになった場合、どういった点に注意すべきかについて、何回かに分けてシリーズで書いています。
前回までは、
①信託がいいの?それとも後見監督人がいいの?
というテーマで、信託と監督人のメリット・デメリットについて述べました。→コチラ
今回のテーマは
②どこの銀行に信託するといいの?
です。
あなたが信託の利用を選択すると、専門職の後見人が選任されます。
東京の場合は、あなた(親族後見人)と専門職後見人の複数後見になります。
専門職後見人があらためて信託の適否を検討し、信託に適すると判断した場合は、信託の手続を行います。
つまり、手続自体は専門職後見人がやってくれます。
ただ、信託するにあたり、次の3点については、あなたと専門職後見人との協議により決めます。
① どこの銀行に信託するか。
② いくら信託するか(信託金額)。
③ 定期交付金はいくらにするか(定期交付金額)。
今回からは、この協議をするときの注意点を述べたいと思います。
まず、どこの銀行に信託すればいいでしょうか?
現在、後見制度支援信託を扱っているのは、三井住友信託銀行、みずほ信託銀行、三菱UFJ信託銀行、りそな銀行、千葉銀行の5行です。
私が専門職後見人として信託手続を行う場合は、親族後見人に「この銀行にしたい」という希望があれば、その希望に従います。
特に希望がなければ、それぞれの銀行の違いを説明して、親族後見人に選んでもらいます。
ここでは、主要3行の三井住友、みずほ、三菱UFJの後見制度支援信託の違いについて述べたいと思います。
ポイントは次のとおりです。
① 信託金額1000万円以上か
信託金額が1000万円以上であれば、3行とも信託可能ですが
1000万円未満の場合はみずほのみ信託可能です。
② 定期交付金の交付により信託財産が5年以内に尽きてしまうか
信託金額が5年以内に尽きてしまうような形での定期交付金の設定はみずほのみ可能です。
③ 手続の簡便さ
信託する際に手続が簡便なのは圧倒的に三菱UFJです。三菱UFJは専用の窓口で郵送でのみ受付けますし、被後見人の本人確認書類(健康保険証等)が不要です。しかも専門の担当者が対応するので手続に慣れています。
他の2行は、原則として各支店・営業部店の店頭での受付ですし、被後見人の本人確認書類(健康保険証等)が必要になります。
もっとも簡便といってもあくまで専門職後見人にとって楽であるということです。
将来的に追加信託、一時金交付等の手続が予想される場合は、親族後見人が相談や手続をしやすいように、窓口で対応してくれる親族後見人の最寄りの三井住友又はみずほの支店・営業部店をおすすめしています。
④ 通帳か証書か
みずほのみ証書で他の2行は通帳が発行されます。
通帳は記帳ができますので、現在額を知るのに便利ですね。
ただ、みずほも年2回残高が記載された通知が来るそうなので、裁判所への報告には何ら問題ありません。
その他、信託報酬、予定配当率等については、裁判所が作成している「後見制度支援信託の仕組みに沿った信託商品を提供している金融機関一覧」を見れば各行の違いがわかります。
親族後見人としては、専門職後見人から各銀行の違いをしっかり説明してもらって、自分の希望を専門職後見人に伝えるのが大切ですね。
(東京ジェイ法律事務所 司法書士 野村真美)
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