移植当日、ようやっと漕ぎ着けたという安心と、これからの期待と不安でいっぱいでした。でも、診察室で私を待っていたのは、悪夢のような時間でした。
移植するはずの胚を紛失したというのです。結局、急遽、最後の1個を融解し、移植しました。予定していたものよりグレードは低いもので、妊娠が期待できるとはいえません。
胚の紛失については、医師も培養士も謝りはしましたが、とても許す気持ちになれません。判定日まで、まだ数日ありますが、法的手段に訴えたいとも考えています。

 

*41歳

 

 

 

まだまだ気持ちは収まらないことと思いますが、一つひとつ整理をして考えていきましょう。
まず、胚の紛失、それはあってはならないことです。しかし、実際には、このような事例は少なからず起きています。これまでにも、胚の紛失や取り違えなど、ヒューマンエラーが起きていることは過去のニュースでも取り上げられてきました。病院側はこのようなミスが起こらないよう注意を払ってはいるのですが、人が行なっていることですから、絶対にミスは起こらないというわけではありません。たしかに謝って済む問題ではないと思います。
ただ、それが起きてしまった時の対応方法としては、治療費の弁償、または同等の治療を補償するなどが考えられるでしょう。それらを念頭に、病院側に責任を約束してもらうのがお互いにとって良い解決方法ではないでしょうか。これまでの診療、治療に信頼が置ける病院であれば、法的手段に訴えるよりも、治療で責任をとってもらう、それを強化してもらうのが良いと考えます。
その時にも、今回の紛失がどうして起きたのか、その詳しい経緯も含めて、しっかりと話を聞き、あなたが納得できるよう確認をし、今後の約束をしてもらいましょう。
また、病院では体外受精を受ける際、採卵手術を受ける際の承諾書にサインをしていると思いますが、その中身がどのような内容であったのか、どのようなことが契約として書かれていたのかを、一度、確認されておくとよいでしょう。
それでも、あなたが法的手段をということであれば、弁護士と相談をし、訴訟も良いと思いますが、それは、ご夫婦でご判断下さい。
それから、今、一番大事なのは、あなたの子宮には小さな胚ががんばっているということです。予定していたものよりも胚のグレードは低かったかもしれません。でも、移植できているわけですから、妊娠の可能性はあります。グレードは、見た目の判定であって、胚の質は図り知れません。妊娠判定日になって、はたと我にかえる…ではなく、今、子宮にある胚にも心を傾けてみて下さい。


*Answer Kobaレディースクリニック



小林 眞一郎 医師

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