怖い | ママ、わたしは生きていくよ。

ママ、わたしは生きていくよ。

バリキャリ母と、平凡娘ひとり。
母子家庭を襲った母の癌。
闘病3年9か月で風になった母。

母の知らないわたしを徒然したためます。

入院した次の日

 

母の胸から管が伸びていた

 

その先にはシリンダーのような容器があって

 

大量の赤い水がメモリの中に溜まっていた

 

 

「それ、どうなってんの?」

 

「肺まで穴開けて通したあんねんやんか。聞かんといて」

 

聞いていたよりもずっと太いチューブが

 

時折血液のような液体を通す

 

怖かった

 

胸水が減ったことで幾分息が楽そうな母が救いだった

 

今まで想像もしなかった母の姿

 

絶対に見せたがらなかった弱気な母の姿

 

泣きそうになった

 

抗がん剤が始まるのも怖い

 

治療しないのも怖い

 

怖い怖い怖い

 

どんどん目の前に広がっていく現実

 

(なんでこんなことになったんや)

 

わたしより母の方が何万回も思っただろうけれど

 

考えずにいられなかった

 

泣きそうだったけど

 

いつもように誤魔化して笑った

 

「しゃないしゃない!すぐ治療始めへんかったのはママやし

 それは必要な時間やったんやから、今から始めるしかないねんし」

 

「せやな。もう始まってんねんから」

 

「食べたいもん、買うてきたるから。欲しいもんも!」

 

「ほな、漫画!」

 

そんな会話でお互いの気持ちを飲み込んだ

 

帰りの車の中で

 

(怖い。なんで?怖い。ママはどうなんの?)

 

そんなことばかり考えていた

 

帰ったら何もわからない子供たちが笑って待っている

 

車の中だけがわたしの弱気を出せる空間になった