チャーリー・ヘラーの復讐

ロバート・リテル 『チャーリー・ヘラーの復讐
北村太郎 / 訳、新潮文庫(1983年)
カバー / 野中昇

古いといえば古い。この文庫本の出た日付は25年前くらいだ。
けれど、それなりに楽しめた。結構のんびりした感じもあるけど、
それはそれで、いいじゃないか。

映画のシーンを見てるような感じがする部分もある。
あまりに調子よくうまく行き過ぎるところ。あっ、絶対絶命・・・
のはずなんだが、たとえばバスの奥の座席にカメラが移動していく。
そこにいるはずの主人公の姿がない。

危機一髪で逃れてしまっている。実際なら、そうはうまくいくまいに。
そういうのが何箇所かあって、しかし、これを映画のシーンだと思えば、
「ふーっ、危なかったなぁ」 と観客に思わせるしかけとみなせる。

主人公は、CIA の職員とはいっても、事務方の人間であって、
実戦タイプではない。それが何と、チェコの国境から潜入して、
言葉も分らない国で、愛人を殺したテロリストを探し出そうとするのだ。

その意図自体が非現実的だと思える。それでも目的を果たしてしまうんだから、
小説って便利である。ちゃんとロマンスも用意してあるし。

主人公の持つ拳銃は ワルサーP-38 で、これは日本でも有名である。
CIA の研修所でにわか特訓を受けた際に、素人にはこれでよかろうというので、
手にするようになった拳銃。ナチス・ドイツも用いた軍用拳銃。
この文庫本の表紙のイラストにも出ている。

Wikipedia(ワルサーP38)を見ると、ルパン3世もご使用なんだとか。


素人の主人公なんだし、都合良く危機を逃れるくらいで丁度いいかも。
また、訳者も書いているが、あちこちにユーモアも潜んでいる。
どうせ作り話なんだし、読むのを楽しんでもらおうという精神からか。

本人は大真面目に活躍しているつもりだろうが、実は、チェコの防諜機関の
大物(教授でもある)が、すべてを把握して見守っていたというのも面白い。
映画なら、あの役を誰にやってもらうか。ショーン・コネリー?