野蛮な来訪者 RJRナビスコの陥落(上)(下) | MBAによるキャリアチェンジへの挑戦

野蛮な来訪者 RJRナビスコの陥落(上)(下)

「野蛮な来訪者 RJR ナビスコの陥落」の上下巻をやっと読み終えた。原書のタイトルは「Barbarian at the Gate」です。


アメリカで大ベストセラーになったビジネス書ですが、日本では誰にも知られていない名著です。確かにアメリカの空港の本屋や大きな書店のビジネスコーナーには必ず置いてありました。


私はDardenでM&Aのクラスを受講していたときに、講師のMichael Hoが自己紹介の後にこの本をオススメしていたことで知りました。


この本の感想を一言でいうと、「事実は小説より奇なり」でしょうか?


凄く読み応えがあった。投資銀行の世界はエゴと強欲のかたまりの世界だということが、つくづく分かりました。また、LBOやジャンク・ボンドなどのファイナンスのこと、アメリカのコーポレートガバナンスについて理解が深まったのも良かった。


本の内容は、ウォールストリートジャーナルのベテラン記者ブライアン・バローとジョン・ヘルヤーが、1989年に起きた世界最大の企業買収劇(買収金額は251億ドル、当時の円換算で約3兆円)、LBO(レバレッジ・バイアウト)を用いたRJRナビスコ社の買収にいたる経緯を小説形式で書いたものです。


関係者のほとんど全てに100回を超えるインタビューを行ったようで、日本語訳は上下巻で約850ページになる大作です。関係者の会話の一つ一つまでが詳細に表現されている事実の”積み上げの成果です。日本のジャーナリストでこのレベルで書くことができるライターは想像できません。


RJRナビスコ社の買収劇は、株価が低迷していた同社のロス・ジョンソン会長と経営陣がLBOにより自社を非公開企業とすることで、株主の意向に左右されることなく、長期的視野に立って経営を遂行しようとしたところから始まります。この企てに対して、KKR(コールバーク・クラビス・ロバーツ)をはじめとするウォール街最強の企業買収専門の投資銀行のスーパースター全員が群がり、あらんかぎりの知恵を尽くして熾烈な買収合戦を展開していきます。スーパースターたちの強欲な欲望、駆け引き、世論などが生々しくからみあってきます。


LBOとは、買収対象会社の資産や将来のキャッシュフローを担保に必要な資金の大半を外部からの融資などで調達する買収方法です。KKRは251億ドルの買収金額のうち、自己資本はたったの15億ドルで買収を成立させました。


RJRナビスコの経営陣がなぜLBOをして非公開化しようとしたのかについては、日本の企業の常識では全く理解できないと思いますが、文章を読んでいると株主主権を中心とするアメリカのコーポレートガバナンスの背景から生じたことが良く分かります。


買収に参加したグループを大まかに整理すると、以下の通り。
①経営陣グループ…RJRナビスコ経営陣、シェアソン、ソロモン・ブラザーズ
②KKRグループ…KKR、ドレクソル・バーナム・ランベール、モルガン・スタンレー、ワッサースタイン・ペレラ、メリルリンチ
③ファーストボストングループ
④フォーストマン・リトル、ゴールドマンサックスグループ


Dardenで教えてくれたMichael Hoの師匠である80年代のM&Aの巨人であるワッサースタインも登場してきました。また、ウォール街のメジャーなプレイヤーは全員知り合いで、とても狭い世界だと思いました。


経営陣グループとKKRグループが熾烈な勝負をしていくのですが、ファーストボストングループの突然のビッドへの滑り込みが物語の展開をエキサイティングにし、最終的な結果に大きな影響を与えてしまいます。


投資銀行の業界に興味がある人やMBAの学生にはオススメです。ファイナンスのバックグランドとしてRJRナビスコの買収劇の経緯やLBOやジャンク・ボンドの生まれた背景、M&A業界の変遷の知識を入れておいた方が良いと思うからです。


私のコメントだけではなく、Amazonの書評にも絶賛するコメントがありますので、見てみてはいかがですか?


野蛮な来訪者―RJRナビスコの陥落〈上〉/ブライアン バロー

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