おみおくりの作法(ネタバレ) | 映画でもどうどす?

映画でもどうどす?

映画と読書の感想を気が向いたら書いてます。
どちらも、ホラーとミステリが多め。
ホラーなら悪魔よりゾンビや怨霊。
ミステリならイヤミス。

 

淡々と描かれる人生…号泣!

 

 

民生係のジョン・メイ。

孤独死した人を一人で逝かせず見送る心優しき真面目人間。

だが、効率の悪い彼は解雇される。

最後の案件は彼と同じアパートに住む男だった…。

 

 

 

ジョン・メイはケニントン地区で民生係をしてる。

孤独死した人の縁者を探し、

葬儀を手配する。

それが彼の仕事。

 

 

孤独死故誰も参列しない葬儀に、一人並び。

宗教が違うなら、その人の宗教に合った葬儀をし。

共同墓地に葬られる人たちを悼む。

 

 

一人で逝った人たちの歴史を探し、

言葉を紡ぎ。

 

 

「死」という人生の終幕を、たった一人荘厳に見送る。

 

 

でも上司は、そんな効率の悪いやり方をしているジョンが気に入らない。

「全部火葬にしてしまえばいい」

宗教によっては、火葬は屈辱なのに。

 

 

人は死ぬ。

見送る者がいなければその死はただの「死」。

遺品は廃棄されてしまう荷物。

だからジョンは、縁のあるものを探そうとする。

 

 

遺族が見つかっても、葬儀費用の心配や参列拒否など。

すべてが丸く収まるものではない。

否。

上手く行かないことのほうが多い。

 

 

親族が涙する「愛し愛された生涯を送った者の死」の横で、赤の他人と一緒に埋められる。

火葬にされ遺灰をまかれる。

 

 

孤独に生涯を暮らすというのは、そういうこと。

 

 

ある日、孤独死をした男の遺体が見つかったと連絡があり、

ジョンが駆けつけるとそこは、

自分の住むアパートの一室だった。

 

 

奇しくもジョンの部屋の向かいに住んでいた男。

彼の名はビリー・ストーク。

 

 

彼の家族や友人を探していたジョン。

ビリーと同じく、独身で家族もいない孤独なジョンは、

ビリーの死が他人事に思えない。

 

 

だが、効率優先の役所は、あまりにも丁寧に孤独死と向き合うジョンを解雇することに。

ジョンにとって、ビリー・ストークの一見が最後の案件。

 

 

ジョンは、ビリーの残した遺品(アルバム)を元にして、

彼の生涯を辿ってゆく。

 

 

アルバムに残っていた写真の少女を探して。

縁(えにし)を求めて。

生きた証を求めて。

 

 

残されていた遺品から、ビリーがパン工場で働いていたことを突き止め、

その工場に赴くが、

彼の評判は決して良いものではなかった。

 

 

友人だったという男にも会うが、

ビリーの無頼派な生活は、あちこちで軋轢を生んでいたらしい。

だがジョンは、アルバムの少女が彼の娘らしいという事実を突き止める。

 

 

ビリーは工場で働いていた時に知り合ったメアリー(フィッシュ・アンド・チップスの店員)と、ウィットビーという港町に出奔したらしい。

妻と子を残して。

 

 

メアリーが今住んでいるところを突き止めるも、

彼女は既に別の人生を歩んでいた。

 

 

 

メアリーの今の夫もビリーを知っていた。

 

 

彼にビリーの友人を知らないかと問うも、

彼に友人はいないという答が帰ってくる。

 

 

怒ると何をするかわからない、酔っぱらい。

 

 

ジョンはメアリーに葬儀に参列して欲しいと頼むが、素気無く断られてしまう。

だが、メアリーはビリーとの間に女の子を授かっており、

その女の子は赤ん坊の母親になっていた。

 

 

ジョンは、家族のいない自分は、何を残せるのかと少し考える。

 

 

ビリーは波乱に満ちた人生を追ったようで、刑務所にも入れられていた。

その刑務所に面会に来ていたケリー・ストーク。

彼女が娘?

 

 

彼女の住所に行くと、そこはドックシェルター。

聡明そうな女性がジョンの前に現れる。

 

 

ビリーが死んだことを伝えアルバムを渡すが、

ケリーは父親とは面会に行ったところで喧嘩別れをしたと言う。

18歳の誕生日、父親から電話が来て、

母親と一緒に面会に行くものの、そこで自分たちは捨てられたのだとはっきり知ったのだと…。

 

 

葬儀への参列も、今は考えられない。

 

 

でも、

教えてくれて、ありがとう…。

 

 

微笑むケリーに少し報われた気がするジョン。

 

 

ケリーから父親の友人だったジャンボのことを教えられ、

彼を訪ねるジョン。

 

 

ジャンボはビリーの軍隊時代の同僚だった。

フォークランド戦争の時、パラシュート部隊にいたジャンボはビリーにより命を救われたという。

 

 

そして「戦争で人を殺した人間は、多かれ少なかれ心に負債を背負う。罪の意識を背負う。その業から逃れるために酒に救いを求めるものも多い」ことを教えられる。

 

 

ビリーが心に負った深い傷。

 

 

ビリーの知り合いだというアルコール中毒症の男たちにもジョンは会う。

不器用な生き方しかできないビリーを、彼らは決して嫌ってはいなかった。

 

 

 

 

彼らと酒を酌み交わしながら、

ジョンは何を思っていたのだろう。

 

 

ジョンは自分が手に入れた墓地をビリーに譲ることにする。

墓石も立派なものを作り、

棺桶も設(しつら)えた。

 

 

ジョンはいつのまにか、ビリーに親近感を抱いていた。

最後の案件として、上司に逆らってまでもビリーの生前の軌跡を追い求め、

シンパシーを感じ。

 

 

ビリーがいよいよ解雇される事になり、荷物の整理をしていると、

ケリーから連絡が来る。

 

 

彼女に会い、ビリーの墓が出来ること。

墓石も立派なものを作れること。

葬式にぜひ参列してほしいこと…。

彼は嬉々としてケリーに伝える。

 

 

別れ際ケリーは、葬儀が終わったらお茶でもしないかと問うてくる。

「もし時間があれば…でいいんだけど」

「時間ならたっぷりあるさ」

 

 

ジョンはビリーの人生をたどることで、感情を得ていく。

真面目で几帳面で、神経質すぎるきらいのあるジョンが、

どんどん人間らしくなり、上司にそっと仕返しをしたりもして…。

 

 

ジョンはケリーと幸せになるのかな。

家族になるのかな。

 

 

 

だけど。

 

 

 

 

ジョンは買い物の帰りに交通事故に会う。

ジョンの魂は天国に召される。

ホッとしたような…開放されたような…

人間らしい表情で、逝ってしまうジョン。

 

 

 

彼の葬儀には誰も来ない。

孤独死をした人に寄り添っていたジョンなのに、

彼が死んだ時には、

参列者は一人もいない。

 

 

入るべき墓を譲ったジョンは、共同墓地に葬られる。

 

 

ジョンが入るはずだった墓にはビリーが入り。

ビリーの墓の周りには、ジョンが結びつけた様々な人が参列している。

 

家族が…

友人が…

知人が…。

 

 

ビリーを悼んでいる。

 

 

 

ジョンは誰からも顧みられず、

たった一人孤独に葬られる。

 

 

ケリーは知らない。

ジョンが直ぐ側で埋葬されていることを。

 

 

ビリーに縁(ゆかり)のある者は、

ビリーを通じて知り合った人たちと交流を持つのだろう。

 

 

ジョンが、ただひたすら繋ぎ構築し再生したその絆を切ること無く。

途絶えさせること無く。

 

 

ジョンは一人で眠る。

独りで。

 

 

ジョンの眠る墓地に、

ビリーの魂がやってくる。

 

 

ジョンの眠る墓地に、

ジョンが見送った人の魂がやってくる。

 

 

何人も。

何人も。

何人も…。

 

 

20年余りの時間をかけて、

ジョンが見送った人たちが、

ジョンを見送る。

 

 

静謐な時間が流れていく。

誰もいなくなった墓地に。

 

 

ジョンがいなくなったこの世界に。

 

 

それでも確かに

ジョンが生きていた証を残した

この世界に…。

 

 

     おしまい

 

 

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ティッシュを用意して御覧ください。

 

 

切り株映画を観てギャッハッハと笑うマダムでも、

泣けるのです。

 

 

まぁ泣きポイントは人それぞれなので、

絶対泣けるとは言い切れませんが。

 

 

マダムなんかは孤独死がすごく身近なわけです。

親戚づきあいもしてないし。

それは自分が選んだことなので全く後悔はしていないけれど、

孤独死した後のことも考えて

身奇麗にしとかなあかん!

(金の問題も含めて)

と、思った次第。

 

 

まぁどんなに家族がいても看取られても、

死ぬときは結局一人で

誰も変わってくれはらへんのやけど。

 

 

もう「死」は、遠い遠いものではなく、

目を凝らせば見える距離にまで来てはる。

そんな自称38歳マダム(この期に及んでまだ言うか)にとって、

この作品はとても重く、とてもうつくしいものでした。

 

 

ジョンは家族もいないし、

生真面目すぎて付き合うのしんどそうやから友人もいない。

 

 

 

そんな修道士のような生活を日々繰り返していたジョンが、

ビリーという人の生き方をなぞることで、

人間らしさを手に入れていく。

 

 

人に嫌われながらも好かれ、

波乱に満ちた規格外のビリー。

 

 

彼に感化され、ジョンはケリーとも親しくなれそうになる。

 

 

そのジョンが、あんな形で亡くなってしまうのはゆるせないというご意見もあるでしょう。

マダムだってびっくりしましたよ。

 

 

でも、まっさきにビリーが来てくれて。

ネコおばちゃんも来てくれて。

いろんな人が集まってきて…。

 

 

彼ら彼女らは、本当にジョンに感謝してはったんや…。

ジョンがしたことは、無駄やなかったんや。

報われたんや…。

 

 

そう思うと、

もう泣けて泣けて…。

 

 

「死」んだら、それで終いやとマダムは思う。

死後は「無」やと思う。

 

 

そう思ってても、

人の心というものは、魂というものは、

決して想いを無碍にはしないのだと…。

 

そういう気持ちになる

素晴らしい映画だったと思います。

 

 

お盆だからこそ、

観てほしい。

そういう映画。

 

お子様には難しいかもですが、

家族で見て泣いて下さい。

「親が死んだら遺産どうなるねんやろ?なんぼ手に入る?」

そんなこと言い出したら…知らんわ!

もう長くないBBAにポチを…恵んで…くださ…れ…

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